好きなものを色々
何をいいたいかわからなくなってきた
とりあえずリンクの袋には実用的なものが入っていて、ダークの袋には趣味嗜好的なものがはいっているんですよ。そのうちリンクの袋より重くなる





ロンロン牛乳、とガラスに薄く彫られた空っぽの瓶。小さなルピー袋、茶葉入れ、それからコハク色の液体がたっぷり詰まった密封式の、ミルク瓶よりも少し大きめの瓶。それらが宿屋のテーブルの上に放りっぱなしになっているのをみてリンクは首をかしげた。そのささやかな物の数々は、二降りの剣を除けばダークのちっぽけな全所有物だったはずだ。

「ダーク、何やってるの?」
「荷物の整理」
「整理?これを?」
「そうだ」

おかしいか?とベッドの上でシーツを睨みつけているダークがこちらを見ずに言った。いいや、と返して少し攻撃的な口ぶりに肩をすくめて、嫌なことでもあったのだろうかとダークの視線の先を追う。なにか小さな物体が、シーツの上にぽつんと鎮座していた。

「それ、何?」
「ジャム」
「ふーん、見せて」

ダークの傍に行って、了承の返事が返ってくる前に、シーツの上の物体をすくい取る。手のひらに収まるほどの小さな小瓶だった。中には赤い粘性の半固体の物質が縁まで入っている。蓋を開けて見ると甘い香りが広がった・・・苺のジャムのようだ。

「いい匂いだね」
「一番良いものを買ってきた」
「いくらだった?」
「50ルピー」
「わお」

奮発したね、と言うとダークは頷いた。よくみればテーブルの上に置かれたルピー入れは随分萎んでいる。何ルピー入るんだったかな、とその袋の容量を思いながらリンクはダークにジャムを返却した。受け取った瓶を、ダークは何故か不機嫌そうに睨みつけている。

「良いジャムを買ったんだろ。なんでそんなに機嫌が悪いんだ?」
「そう見えるか?」
「見える」
「そうか」

どうしようかなと思って、と言ってダークはため息をついた。一体何をジャムの小瓶一つでそんなに悩んでいるのかリンクは全く分からなかったが、それでも一応理由は聞いた。別に聞かなくたってダークは一人でうんうん悩んでいるだけだが、特に聞かない理由もない。

「そのジャムを?食べればいいじゃん。観賞用の小物じゃないんだ」
「いや、そのことじゃない」
「じゃあ何?」
「そこに置いてある、俺の持ち物のことで悩んでた」

そう言われて、リンクは再度テーブルの上を見た。たった4つの、主に3つの瓶が占めているだけの所有物。悩んでいる、と言われてもリンクにはその理由が分からなかった。量で言えばリンクの3分の1ほどしかないこれらの何に悩んでいるのだろう。もしかしてホットミルクにはちみつを入れるのを卒業するべきか否かで悩んでいるのか?そしたらあのはちみつの瓶は自分が貰って、バタと一緒にたっぷりパンにつけて食べてしまおう。

「このジャムの瓶を入れるなら、何かを減らそうと思う」
「えっ」
「だからずっと悩んでる」

あまりにも美味しくてつい、でも買うんじゃなかった、と続いた言葉にリンクは何度か瞬きをした。瓶が4つになったところで対して変わりはしない、と言ってもダークは妙に意固地なところがあるから中々納得はしないだろう。やれやれ、テーブルの隅にかけてあった布嚢を取って、リンクはダークの所有物を全部そこにつめた。

「ほら、これを持ってみな」
「・・・?ああ、」
「これが、ダークの元の持ち物の重さ」

貸して、といって手からジャムの瓶を取る。それをダークが片手で持つ袋の中に入れる。キン、とガラス同士がぶつかる音がして、袋はほんの少しだけ重みを増したようだ。

「ダークは物を増やしたくないの?」
「そうかもしれない」
「そう。袋は重い?」
「いいや」

首を振ったダークにリンクは少し笑って、それから自分の布嚢を持たせた。いろんなものが詰まったそれは、ダークの持つものより何倍も重い。両手に袋を持ったダークが困惑した目でリンクを見た。

「なんの意味が?」
「ん?俺の持ち物はそんだけある。これからも増えて行くとおもう。そろそろ捨てなきゃいけないものもある」
「穴のあきそうな鍋?」
「そう、それとか」

昨日ダークが破りそうになった古ぼけたタオルとか。そう言うとダークもちょっぴり笑った。機嫌もすこしなおってきたらしい。

「今じゃなくて、その袋がいっぱいになったら整理する、ってのはどう?」

前から思ってたけど、ダークはもう少し荷物が多くても良いな。その言葉を聞いてダークは自分の持ち物が入った布嚢をまじまじと見つめた。リンクのものと見比べて、そうだな、と納得したように頷いて、それで苺のジャム入り瓶はようやく素直に所有物の仲間入りを許されたのだった。


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