老人リンク、知らないダーク 派生
ついったーで言ってた奴です 老人っていうよりは壮年リンク








自分が最後に世界を巻き込むような冒険をしたのはいつだったかな、とふとリンクは思いました。ハイラルを救ったのは?タルミナで落ちる月を食い止めたのは?一体いつの事だったでしょう。それを鮮明に思い出すには一苦労するほどにずいぶん長い年月、リンクは生きてきました。

「なぁ、ダーク、」

ハイラルを救った時、水の神殿を攻略してからずっといっしょに旅をしていた魔物の名前をリンクは呼びました。目の前で剣の手入れをしていた魔物がふ、と顔を上げてリンクを見ました。

「なんだ?」
「………、」

タルミナで月を止めたのは今から何年前だっけ、と聞くことも忘れてリンクはダークの顔をまじまじと眺めました。急に呼びかけられて不思議そうな顔をしている魔物の姿形はあの時と全く変わりません。リンクの顔には皺が出来ているというのにーー、なんせ最近は親子と間違えられるときだってあるのですから。

「俺が何だ?」
「いや、……あらためて、ダーク、若いなぁと思って」
「わかい?」

ダークはますます不思議そうな顔をしました。魔物だからでしょうか、人語を理解しそれを喋ることができてもダークにはたくさん知らない言葉がありました。そういえば出会った当初はほとんど喋らなかったな、とリンクは思いました。出会ったばかりのダークリンクはまるで言葉を知らない幼子のようで、リンクと旅を初めて暫くしてからようやく言葉を話し始めたのでした。

「ダークの姿、何歳の俺だっけ」
「出会った時だろう」
「そりゃそうだけど、何年前の事だったかな。覚えてるか?」

ダークは首を傾げて考えこみました。少しして、彼は12の月が32回通り過ぎた、と答えました。リンクはその答えに深い溜息をつきました。

「そうか、そんなに前か」
「それがどうかしたのか?」
「いいや、…………そうだな、あの時の俺はこんなに幼かったんだなと思っただけさ」
「おさない」

妙なイントネーションで、ダークが言葉を繰り返しました。わかい、おさない。2度繰り返してから、ダークはリンクにその言葉の意味を尋ねました。

「どういう意味だ?」
「あんまりうまく言えないけど……俺がコッコ、お前はヒヨコ、って言えばいいのかな」
「お前がコッコ?」
「そう、んでもって、ダークはちっちゃなヒヨコ」

黄色いふかふかの生き物だ。真面目腐った顔をしてリンクが言うとダークは口角をあげて笑いました。人間のように、口を開けて笑わないのが彼の笑い方でした。

「おさなくてちっちゃい、がヒヨコなら、コッコはなんて例えればいい?」
「…大人?」
「大人?……なんだ、知ってる言葉だ」

じゃあリンクは大人なわけだな、と返された言葉にリンクは笑おうとして、ふと自分の手に目をやりました。慣れ親しんだ自分の手は、この世に生を受けてから46年の歳月がたって随分と老いていました。オカリナを使って時間を巻き戻した回数を考えると、リンクの肉体はもう少し歳を重ねているかもしれません。右手で左手の甲をさすって、リンクはダークの目を見ました。

「……いや、老けた、っていうのかな」
「ふけた」
「そう、何年も生きたコッコが卵を産まなくなるようなもんだ」
「そうか。じゃあ、ふけたんだな、リンク」

目の前の、色以外は若いころの自分と同じ顔をした魔物がしたり顔でそう言うのに、リンクは今度こそ大声をあげて笑いました。


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bkm
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