むだい
無題です






今から七年も先のあのときは、すがるしかなかった。殺せと言う命令以外何も知らない自分をあの部屋からひっぱりだして連れて行ったのは時の勇者だった。常識を子供のころのように一からおしえてもらって、どうにかこうにか人の形をした魔物は人のような存在になれた。いまだにコッコからめだまやきが産まれるのがよく分からないけれど、そんなことは大したことじゃない。そんなことは大したことではなく、寧ろ至極どうでもよいことだった。

「リンク、」

七年の月日は人を大きく成長させる。七年「前」に戻ってきた時にダークリンクと手をつないでいたのは小さな子供だった。少々膨れた顔をして、ふっくらとした幼い指でダークのごつごつとした手をつないで、ナビィがどこかへ行ってしまうのを黙って眺めていた。
何も文句を言わずに眺めていた、引き留める事もせずに。あれから、彼は少し変わってしまったのだと思う。

「行こう」

俯いている子供の手を握る。その手に七年後の面影はない。何もかもなかったことにされてしまった肉体の中で大きく変わった精神が息づいている。子供の姿をした歪な大人がそこにいる。きっとこれも彼のプライドを酷く傷つけるだろうなと思いながらそっと握りしめられた手を引く。なんせ七年後では逆の関係だったのだ。

「・・・・・・うん」

しぶしぶ、と言ったようにリンクが返事をした。城でぼんやりと外を眺めていたリンクにナビィを探しに行こう、とダークが提案して、それから話はとんとん拍子に進んだ。聖地が開かれないようにとオカリナを預けられて、今からリンクとダークはハイラルを出て行く。悪しきものに奪われないように、もうこの時代では無かったことになってしまった、七年後を二度と繰り返さないように。

エポナに乗ったリンクに寄り添うようにして、森の中を歩く。俯いて気を落としたようなその様子に、この旅で少しでも気が晴れるといいとダークは思った。二人を見る3つの視線には気がつかないまま。


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bkm
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