ついったでちろっと言ったやつ
駄文だけど忘れないうちに書いておくよ・・・・












酷い頭の痛みで目が覚めた。頭の中身と外がひっかきまわされているように痛い。「うう」と唸り声をあげて頭にふれるとごわごわとした物が触った。どうやら包帯が巻いてあるようだと、痛みが無くなったわけでもないのに少し安心して上半身を起こす。

「、ここは・・・」

ぴちょんと水滴が落ちる音が聞こえた。真っ暗闇とは言わなくても薄暗い洞窟の中で、呟いた声はやけに辺りに響いた。閉鎖的な空間だからかもしれない。

「起きたか?」
「・・・・・あ」

額に手をあてつつ、体の上にかけられていた布をしげしげと眺めているとどこからか足音が聞こえた。じゃり、じゃり、とこちらに近づいてくるのに少し身構えると、恐らく出口がある方向(そちらが少し明るい)から一人の男が姿を現した。手に何かを持っている。・・・息絶えた兎だろうか。

「怪我の具合は」
「・・・・・うん?」
「なんだ、はっきりしないな」

頭を酷く打っていたからかな。そういって男は隣に腰を下ろした。バリバリと何か音が聞こえて、それから一瞬遅れて血の生臭い匂いが広がった。どうやらここで処理をするらしい。すこし眉をひそめると男はちらりとこちらをみて、すぐに終わるからと言った。

「大丈夫だ。火は起こせるようになったし、もう怖くない」
「・・・・あの」
「なんだよ、薪はもう外に集めてあるから平気だ。火は燃やすものがないと燃えないんだろう」
「いや、そうじゃなくて」

子供でも知っていそうな初歩的な事を言う男に「・・・・君は誰?」申し訳ないと思いながらもそう尋ねると、彼はばっと効果音が付きそうなぐらい早くこちらを見て、口をぽかんとあけた。

「誰?今何て言った」
「・・・・君と僕は知り合いなんだろ?ごめん、思いだせないんだ」
「思いだせない・・・・」
「ああ、僕が誰で、何故こんなところにいるのかも。それからどうして頭を打ったのかもわからない」

ずきずきと頭が痛む。目の前の男を見ていると特にそうだ。何かを思い出せそうで思いだせないこの不思議な感覚。記憶を痛みに邪魔されている。

男は口をあけたまましげしげとこちらを見て、それから「そうか」と少し悲しげに言った。

「・・・ごめん」
「謝らなくていい。頭ってのはすごいやわらしいから、仕方がないんじゃないか」

しかしそうか、記憶か。男はそう呟いて、それから立ちあがった。「少しまっていろ」と言われて頷く。

「人間ってのは不便だなぁ」

まるで自分が人間ではないような口ぶりだった。手に兎をぶら下げたまま洞窟から出て行く彼の後姿を見送る。じゃり、じゃり、とだんだん足音が遠ざかっていって、それから静寂が訪れる。

「・・・・・僕は」

酷く頭が痛む。僕は誰なんだ、呟いた声がわんと響いて自分に向かってくる。深く息を吸い込むと兎のか自分のか分からぬ濃い血の匂いが鼻の奥に広がって、思わず顔をしかめた。


prev next

bkm
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -