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ビンの次にでてきたのは半分に折れた短剣だった。その次は真っ黒な長剣の柄。どこかで見たようなその意匠に眉をひそめながら、それを取ろうとリンクが手をのばすとそれは触る前に崩れて砂のようなものになってしまった。塊の解体作業は順調で、もうそろそろ中心部に届きそうになっている。求めるものが入ってればいいが、と赤獅子の王がそう考えた瞬間、リンクが驚いたような声をあげた。

「・・・・王様!」
「どうした?リンク」
「ひ、人の手が・・・」
「何!」

もしや水死体を引き上げてしまったのか、と赤獅子の王が船内をのぞきこむ。しかし予想に反して、怯えた声を出しながらリンクが指差していたのはただの人間の手だった。白骨化も腐敗もしておらず、しかし今まで海中にあったためだろうか。ほとんど生気が感じられない、珍しい褐色色をした人の手。

「まだ手しか見えてないけど、多分、もうちょっと上の方を切ったら顔がある、と思う・・・」
「・・・・リンク、脈はあるか?」
「脈?でも、」
「一応、確かめてみなさい。不思議なものに包まれていたのだ。万が一ということがある」
「・・・・・・・・・わかった」

少し躊躇し、覚悟を決めた顔をしてリンクが未だ黒い塊に埋もれている手に触れる。手はひんやりと冷たかった。まるで氷のようだとリンクは身震いしたが、その冷たさの中にとくとくと動く何かを感じた。

「生きてる!」

信じられない、といった顔をしてリンクが呟いた。急いで、恐らく顔があるあたりを慎重に斬っていくと耳が現れた。その次は瞼、その次は鼻。まずは顔をすべて出して、それから体の部分が埋もれているであろう箇所を解体していく。中に何が埋もれていて、それがどのような配置になっているのかが分かればあとは簡単だった。

「やっと終わった・・・」

塊に包みこまれていたのは特徴的な銀色の髪と褐色の肌をした青年だった。日が完全に沈む少し前にどうにかすべてを終わらせ、リンクが安堵の息をつく。カンテラに灯りを灯して、船内に横たわる青年の顔を二人はじろじろと眺めた。端正な顔をしているその男性は、不思議とどこかリンクに似ていた。


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bkm
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