がちゃん、がらがらと頑丈な鉄の鎖が重々しい音を立てる。ぐるぐるとレバーを回せば重みを増した鎖がゆっくりと巻き上がってきて、どうやらあの地図は嘘ではなかったようだとリンクの口元に笑みが浮かんだ。

「一応これで2つ目だっけ」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、残りのかけらはあと6つかぁ…」

先は長いなぁ、と溜息をつきながらリンクがレバーを回す。がらがらと音を立てて巻かれる鎖は海面に近くなるにつれだんだんと軽くなっていく。浮力という力のせいだ、とリンクはつい最近赤獅子の王から学んでいた。

「あ、だんだん見えてきたよ」

レバーを回しながら海面を覗きこむと、水中で光を反射してきらりと何かが光った。それを確認してリンクが声をあげる。サルベージは中々の重労働だが、やはりこうして海の底に沈んでいる「お宝」を引き上げるのはとてもわくわくする作業だった。深海にハイラルの大地が沈んでいる事実を知ったのも、それに拍車をかけたかもしれない。早くその姿を確認したくてレバーを回す手をはやめると、先ほどの倍のスピードで「お宝」が海面に向かって引き上げられる。

「わっ…!」
「む……」

気が急いだせいか、回し過ぎたレバーによって勢いよく引き上げられた「お宝」が水しぶきをあげて宙を舞う。顔面に多量の海水がかかり、思わず目をつぶったリンクには見えなかった「お宝」の正体に赤獅子の王が唸り声をあげた。あまり良い反応をしなかった赤獅子の王に、袖で顔をぬぐいながらリンクが一体どうしたのかと疑問の声をあげる。

「王様、トライフォースじゃなかったの?」
「うむ……これは、なんだ?…………魔物、か?」
「まも……?海の底に魔物!?」

僕は何を引き上げちゃったの!?と目をしばたたかせながらリンクが頭上を見上げる。そしてぽた、ぽた、と船の上に海水を滴らせている大きめの岩ほどの黒い物体を目視し、ひきつった顔をしながらもレバーを少し回してそれを船内に下ろした。物体から外れたかぎづめフックが役目を終え、所在なさげにぶらぶらと空中で揺れる。

「何、コレ」
「剣でついてみたらどうだ。中にトライフォースの欠片が入っているかもしれぬぞ」
「ええー……いやだなあ。王様、せめてもう少し乾いてからにしようよ」
「………構わぬが」

これの濡れた表面が乾いてから、と妙な主張をするリンクに赤獅子の王が少々不満げに返事をする。引き上げたもの一つぶん、重量を増した船の舳先に一羽のかもめが降り立ち、黒い物体を睨みつける二人を不思議そうに眺めていた。


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