広い大海原を一艘の小船が走っている。緑色の染料で模様が描かれた白い帆を目一杯膨らませて進むその船を動かしているのは特徴的な緑の服を身にまとった一人の少年だ。年頃は12,3歳ほどだろうか。背中には盾と、どこか神聖さを感じさせる意匠の剣を背負っている。

「……ねぇ王さま。この地図、本当にトライフォースのありかを示してると思う?」

船が風を受けて進むのに任せ、一枚の古ぼけた地図を難しい顔で睨みつけていた少年がふと独り言をつぶやいた。一拍の間を開けて、少年以外には誰もいないはずの船上に低い男性の声が響く。

「さぁな。しかし善意でもらったものだ。試さぬわけにはいかないだろう」
「うん……」

赤獅子を模した船端がぐるりと動き、言葉を発したのだ。しかし少年はそれに動じることなく言葉を返す。眉間に寄せた皺は変わらず、目線はまだ古びた地図の上。

「それにもう印の場所についてしまった。さぁリンク、引き上げるぞ」
「………はーい」

意思を持つ船である赤獅子の王の言葉に少年、リンクが不承不承といった様子で返事をする。いつの間にか船はその歩みをやめ、穏やかな大海原でゆったりと漂っていた。


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