プロローグ
※この作品は、ブログで公開していた捏造セコプリシリーズになります。
サイトに掲載するにあたり、一部修正・加筆など行っております。
ブログにおいて「赤」表記だったU世の瞳の色を「翡翠」に統一、怒った時だけ赤に変わる仕様です。説明が足りない所も多々ありますが少しでもお楽しみいただけたら幸いに思います。また、サブタイトルの()内は視点となっております。
アニリボで初代組登場前の作品ですので、口調や一人称に違いがありますがご容赦ください。
共に、生きるのだと。
何があっても二人、離れることはないのだと。
誓ったのは、そう遠くはない、過去。今でも鮮明に思い出せる程。
誰の前でも「初代」であったお前が、俺の前でだけ「笑う」のが、嬉しくて。お前の笑顔のためならどんなことだってしてやると、心に決めて。たとえ、自分の手がどれだけ汚れて行こうとも、お前が望むことならば、全て叶えてやると―――そうして、俺は強くなった。強いお前と、共に歩いていくために。お前を、支えて生きるために。
そう話した時、お前は、確かに。あの時確かに、「笑った」はずだった。
それなのに、―――それなのに、お前は。
滅びるも栄えるも、好きにせよ。
ボンゴレU世――――――。
誰にでも見せる、「初代」の顔で、俺に告げた。霧深い、あの日。幾度も二人で歩いた海岸で、感情の見えない瞳をして、・・・お前は俺に、別れを告げた。
「ジョット、何故・・・」
泣く寸前の子供みたいに、声が震えた。お前の表情はそれでも変わらず、ただ静かに、俺を見ている。何時ものような、笑顔は無い。穏やかに煌いていた瞳も、無い。
そこにいる男は、「初代ボンゴレ」だった。
「ボンゴレは、・・・余りに、大きくなりすぎた。」
「・・・このままでは、ボンゴレは・・・。私は家族を、路頭に迷わせたくは無い。」
「だから、・・・U世。ボンゴレの未来を、お前に・・・託す。」
一瞬。ほんの一瞬だけ、瞳が揺らいだ。すぐにその瞳は伏せられ、刹那、
周囲にヘリの騒音が轟く。見上げたヘリの中には、良く見知った男。・・・初代ボンゴレの、「霧の守護者」となった男の姿が、あった。それからすぐに、悟った。・・・ジョットは、逃げる気なのだと。
大した言葉も告げず、ただ後を任せたとだけ伝え、俺の意思も聞かずに、お前は逃げると言うのか。―――この俺から。
何故だ、ジョット。
共に生きると、誓っただろう。俺の言葉に、お前は笑っただろう。
「・・・俺を、・・・ボンゴレを、捨てるのか・・・お前は・・・!」
俺の声は、ヘリの音に幾度も遮られる。だが、お前には伝わっている筈だ。何故、何も言わない。俺には、心を開いてくれていたんじゃなかったのか? あの笑顔さえ、演技だったというのか?
俺に全てを、背負わせる為の?
「何故、・・・何故、何故だ、ジョット!!」
縄梯子が下ろされる。ジョットがあれを掴んだら最後だ。行ってしまう。俺を置いて、行ってしまう!
「ふざける、な、てめぇ、こんな、こんなことが・・・!!」
俺の脚は、動かなかった。まるでそこに縫い付けられたように、微動だにしなかった。ただ拳を握り、目の前の男を見る。・・・表情は、変わらない。俺の髪を何度も撫でた指先が、縄梯子を掴む。
心臓が止まるかと思う程、鼓動が強く鳴った。
冷や汗が一気に浮かんで、呼吸も上手く出来ない。
何だ、何が、起きた? 今すぐに、飛び出さなければならないのに。あの手を払って、この場所に止めなければならないのに。
おぼろげに、ジョットが空を見上げ、合図を送ったのが見えた。それから、・・・再び俺に、向き直り。唇を、動かして。
「・・・さよな、ら。」
俺に解らない言葉を紡ぎ、空へと昇って行った。鼓動は煩く鳴っている。ようやく脚が動いた頃には、もう。伸ばした手すら、届かなかった。
「ふざ、けるな、ジョット・・・! 俺は、お前を」
拳を握り込み、歯を食いしばって空を見る。
こんなことが、あっていいはずが無い。お前が俺を、裏切るなどと・・・俺を、捨てるなんて、そんなことが!!
「俺は、・・・俺は、お前を!!」
「お前を、」
「お前を、死んでも許さねぇぞ、ジョット!!」
いつの間にか霧は晴れ、雲ひとつない、澄み切った大空。そこに、俺の声は響いていた。
お前が、消えていった場所、
高く高く――――――大空へ。