押しても駄目なら以下略!!前編



二世の策略?





ダンテは、悩んでいた。その強面を更に険しくして、悩んでいた。彼が、ボンゴレの創始者、ジョットに心を奪われてから暫く。幾度も告白を繰り返し、そして幾度もあしらわれてきた。近づけばしかめっ面で睨まれ、声をかければ嫌そうに顔を歪める。それなのに、ダンテの危機には誰よりも早くかけつけて、怪我をすればその傷が癒えるまで何度も確認してくる。

ジョットという男は、天邪鬼―――解り易く言うなら、ツンデレだった。

だからダンテは今まで、どれだけ罵られても、どれだけ殴られてもめげることは無かった。物凄いツンの後に、確かな愛を感じるデレがあったから。

だけれど、ふと。考えてしまうことがある。いくらなんでも、デレが少なすぎやしないかと。ジョットが自分を好いていることは確かだとわかっている。これは別に、彼が非常に前向きだからという訳では決して無く、ジョットにとってダンテは確かに、他の人間とは違う存在であった。その言動の端々には、ダンテに対する感情が見て取れる程。ただし、ジョット自身にその自覚は全く無いというから、ややこしい。

…まぁ、とにかく。
だからこそ、たまには目一杯甘えたり、デレデレしたりしてもいいんじゃないか。

つまり、早い話が。両想いなのだから、それらしいアレやコレやをしたい!!…という、とんでもなく、短絡的且つ自己中心的な考えに至ったのである。

この考えが後々、自分の命をも脅かすことになるであろうことを、ジョットのことになるとネジが弾け飛んでいってしまうこの男は、まだ気付かないでいた。



元より聡い彼…ジョットが異変に気付いたのは、ダンテが行動を起こし始めた翌日である。無論、超直感を使った訳ではない。それくらい、あからさまだったのだ。今まで無駄にべったりと付きまとっていたのに、それをしなくなった。声をかけられてもあくまで素っ気無く、事務的なことしか応えない。一日の間僅かしかない息抜きの時間などは、部下を連れ立ってどこかへ行ってしまう。最初は珍しいことがあるものだと思っていたジョットも、何度もそれが続くと彼が意図的にそうしているのだということに気がついた。


ツンデレという、属性は。非常に、非常――――に、厄介なもので。
構われると拒絶するくせに、構われなくなるとそれはそれで気に食わない。もしかして、自分に興味が無くなったのか? 他に良い人でも作ってしまったのか?などと、ネガティブな思考に走り途端にしおらしくなる。そして可愛らしく怒り、泣きながら、理由を詰め寄るのだ。

…とまぁ。ありがちなツンデレならば、そうなっていたのだろう。

ダンテという男は本当に、ジョットのことに関すると冷静さを失ってしまう。だから、作戦を練る過程で、あるひとつのことが抜け落ちてしまっていたのだ。ツンデレは、言葉を少し変えるだけで、いとも簡単に別の属性へと変ずる。



そう。
彼の属性は、時に、ツンデレではなく。




ツンギレにも、成り得るということを。




ダンテは、全くもって、計算に入れていなかったのだ。






「良い、度胸だ。」






そう呟いて笑った彼の彼はとても綺麗だったと、後に嵐の守護者は言う。額に橙の炎を灯し、瞳を金色に輝かせて、ジョットは窓から見えるダンテの背中をじっと見つめた。それはそれは、麗しい笑顔を浮かべたままで。







「一度、はっきりさせてやらねばなるまいな…」








その日。
実に、10枚以上の窓ガラスが、粉々に崩れ落ちたという。

ジョットは、見た者を全て虜にしてしまうような穏やかな笑顔を浮かべて、静かに静かに、炎を煌かせていた。









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