04
入団式同様綺麗に整列された訓練兵の前にキースが立ち。今から適性試験が行われる。
適性試験入団の合否が決まり、不合格となった者は開拓地送りにされる。
この試験で、立体機動を使いこなす素質を見る。立体機動での初期段階。どのように体を使うのかを感覚的に捉えバランスを保ちながらその場で滞空する。
今回104期は素質の持った訓練兵が数多く見られた。
ただ、1つ気になった。エレンの時だ。エレンの時だけ今までに見たことない傾き方をした。こんなに、傾くのかと思うくらい変な動き方だった。
私は疑問に思いながらキースをチラッとみてエレンの動き方を再度確認した。
何度やっても、その場で浮くことはなく。バランスを崩しひっくり返る。
どこか破損してるのかな?
でも、ベルトのチェックは入念に行われてた。
適性試験が終わり、皆が解散した後。エレンはひたすら練習し続けていた。
「エミリー……教えてくれ……俺は……どうしたら……」
エミリーに助けを求めるほど切羽詰まった状態だった。エミリーは見かねてアドバイスをする。体の使い方どこをどのように気にするのかなど。まずバランスをとることを優先すればさほど難しいことでは無いと伝える。
だが結果は何度やっても変わらず、練習中に頭を強くうちエミリーとミカサが小脇に抱え医務室に連れていく。
医務室では怪我人以外は立ち入りを控える事になっている為、アルミンとミカサには自室に帰ってもらい。エレンと2人で医務室に入る。
医務室の先生が居たが、大した事ない怪我だったので私が手当てをしていると、珍しく弱音を吐くエレン。エミリーはその様子を見かね両頬をつねる。
「出来ないから調査兵団を諦めるの?出来るようになるまで調査兵団を諦めないんじゃないの?私は同じ調査兵団でエレンと共に巨人と戦うのを夢見てる。まだ時間はあるから、私はエレンを信じてる。」
泣き言を言うエレンを鼓舞する。エレンはエミリーの方をしっかり見て「ありがとう……。エミリー……」と言って医務室を出ていった。
私は医務室を出た後キース教官の部屋へ向かう。本日の日報と訓練兵の記録を整理している時
「エレン・イエーガーの様な傾き方をする訓練兵、今まで見たことありますか?」
書類を書きながらキースに問う
「いいや、私が知る限りでは見たことない。」
「そうですか。」
何度考えても、故障出ない限りあんな風にはならない。でも整備項目全て見た。どの項目にも当てはまらなかった。適性試験に使われてた機具がダメなのかと思いエレンが帰ったあと私も試して見たが不具合はなかった。
「なんだ、あの訓練兵に思い入れでもあるのか。」
「シガンシナ区に居たんですよ私」
「ああ。やつもシガンシナ区出身だったな」
「キース教官、何かご存知ですね」
エミリーは書類をトントンと揃え机に置き、キースの方をジロリと見る。なんとなく勘が察してる「この人は今なにか隠そうとしてる」
「なんの事だ」
「私の独り言だと思ってください。エレンは調査兵団に入るため巨人を駆逐するため今ここにいます。きっと彼ならどのような障害があっても気合と根性で調査兵団に入るでしょう、どのような事があっても。それが人災でも」
エミリーは立ち上がりながら話し始め、自身の紅茶を作りながら聞こえる声で大きい独り言を言う。キースも静かに彼女の独り言を聞く。エミリーはなんとなくのキースからの違和感を察して話だし回りくどい言い方で、何かしたか知らないけどエレンは負けないとキースへと伝えた。
キースの分の紅茶を添えて
「……ありがとう。エミリー、今日はやけに饒舌だな」
「女の子ってそんな日もあるんですよ、気をつけてくださいね教官」
エミリーは自席に戻り紅茶を1口飲み本日入団合否の書類に手をつけながら紅茶を楽しむ。
エミリーは紅茶ひとつで機嫌が良くなりキースは心底この女は何を考えているのか分からん。と思っていた。
翌日、最終適正試験が行われた。エレンはみんなの前に立ちキースはエレンの前で腰の後ろで腕を組み見下ろす、エミリーは少し離れた場所からその様子をしっかり見る。エレンの様子は緊張した面持ちで立体起動模擬器具の真ん中に立ちベルトへとつながれワイヤーが上へと引っ張られ、バランスを保ち少しその場で滞空したが、やはりひっくり返ってしまい。エレンは絶望した顔でキースを見上げる。
「教官…」
エミリーはキースの隣に立ちベルトの交換を申し出る。
キースはその意思を汲み取り近くに居た兵士のベルトの交換をさせ、エレンがつけていたベルトをキースが見る。
その間にエレンはしっかりその場に滞空させ無事合格が言い渡された。
「装備の欠陥だ、この部分が破損とは聞いたことがない、整備項目に加えておく」
エミリーはキースが持っていたベルトを受け取り再度確認する。
教官もいい趣味されてるわ。エレンに何の思い入れがあるかはわからないけど…。
エレンは嬉しそうにガッツポーズを向けてくる、私は手のひらを合わせたまま指先のみの拍手をして「おめでとう」と言葉を発することなく伝えた。
立体起動を身に着けエミリーは馬を走らせる、訓練兵たちは縦横無尽に立体起動で飛び回る。落下しない様念のため立体起動を装備。
「本日はここまでとする。」
訓練兵に終了を呼びかけ、全員が同じ場所でそろうのを待つ。終わったら各自立体起動装置を外し
「エミリー、俺の立体起動使い方どうだ?」
終了後エレンは立体起動をつけたままエミリーにかけより聞いてくる。
「私よりミカサに聞いた方がいいんじゃない?」
エミリーは後から飛んでくる訓練兵を見守り、指示を出しながらエレンにこたえる。
「俺はエミリーみたいになりたいんだ。」
「私と体格とか違うし、参考にならないと思うよ。立体起動って最初は一緒だけどあとはほとんどその人によって違うから。
そこの訓練兵君ガスの使い方に注意して、テキトーにしないで、ケガにつながるわよ。
それでも納得いかないなら、自分なりに練習しなさい。」
エミリーは馬を連れ訓練兵舎に、エレン