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「何を考えているエルヴィン!住民を避難させず街にとどめるだと?」


エルヴィンの胸倉をつかむのが見え、エミリーはリヴァイの横から移動しエルヴィンとカルステンの腕をつかむ。


「冷静な対応をお願いします。」

「夜明けどきには もうあの巨人はここに到着するのだぞ!」

「あの巨人は奇行種です。」

「それがなんだというんだ!」


淡々と説明するエミリーに、腕をふりはらい怯えた顔で言い放ちハンジが答える。


「目標の巨人は、より大勢の人間が密集するほうへと吸い寄せられる。いわゆる奇行種。それも小さな村ぐらいじゃ目もくれずに、この城壁都市に反応するほど極端な子です。 なので今から急にウォール・シーナ何に避難させれば、目標はそれに引き寄せられ壁を破壊し突き進むでしょう」

「それか、最も人の多い王都ミットラスにあの巨人が”こんにち”はしにくるでしょうね。人類はもう破滅的な被害になると思われますが」


エミリーが笑顔で話すことにその場に居た駐屯兵に恐怖を覚える、まるで脅しのように聞こえ何も言い返せなかった。


「エレン・イェーガーの中にある巨人を操る力を試しましたが、ロッド・レイス巨人には通じませんでした。」




























「エレン奪還作戦のとき、エレンが巨人を操るような事してたけど試してみる?」

「できるかい?エレン」

「やってみます。」


エレンは立ち上がりロッド・レイス巨人の方に向かって拳を振り回しながら叫ぶ「止まれ!巨人!」「おい!止まれ!てめえに言ってんだ!」


なんだろ、言っちゃいけないんだろうけど。かわいく思える。あの時は必死だったから姿を見る余裕なかったけど。

ぶんぶんと振り回しながら叫ぶエレンはなんだか、かわいらしい。


「ロッド・レイス!お前だこのチビオヤジ! あっ」


こらこら「あっ」はだめでしょ。


エミリーは笑いを堪えていたが、堪えることができず吹き出す。


「エレンっ、もういいよ。」

「奇行種には効かないんだろうね」



































「つまり あの巨人はこのオルブド区に壁外で仕留めるしかありません。そのためには囮となる大勢の住民が必要なのです。」

「ですが、住民の命を守ることこそが我々兵士の存在意義です。目標を仕留めそこなったとしても、誰ひとりとして死傷者を出さない様尽くします。」

「オルブド区と周辺の住民には緊急避難訓練と称し、状況によってオルブド区外へ移動させやすい体勢を整えます」


「君は出来るというのか」


エミリーを見定めるように見る。エミリーは心臓の前に拳を作り真剣な表情で見つめ返す


「私だけでは、到底無理でしょう。ですが我々は調査兵団ですので。どうかお力添えを」

「はあ やるしかないようだな」


エルヴィンを見上げ覚悟を決める。


「目標はかつてないほど巨大な体ですが、それゆえに のろまで的がでかい。壁上固定砲は大変有効なはずですが もしそれでも倒せない場合は 調査兵団 最大の兵力を駆使するしかありません。」


エレンの方を見て伝える。


そうはさせない。その前に絶対に仕留める。エミリーは話しを変えるように



「時間がありません、固定砲と人員の派兵、住民の誘導をお願いします。」



準備は夜明けまでかかり、夜中からの住民の移動に時間がかかったが移動は完了した。なぜこんな時間に訓練をするのかという住民の声もあったが、駐屯兵は今回の作戦命令を全うするため説明を続ける。










早朝から壁上固定砲が火を続け、エミリーのストレスは計り知れなかった。耳を塞ぎながら目標の巨人をまじまじと見つめる彼女へエレンが気にかける。


「エミリー、大丈夫か?」

「んー?」

「でけー音嫌いだろ」

「賑やかでいいんじゃない?」


エミリーの返しから彼女の機嫌の悪さが見て取れた。


無数の弾をうけ、目標がどのような形で現れるかを探る

「さあ どうだ?」

「地上の大砲はさらに効果が薄いようだ」

「そりゃそうでしょ」
「当たり前だ」

「壁上からの射角にしたって 対してうなじに当たってねえじゃねえか どうなってる?」

「そんなの、端から期待してなかったじゃない。まさか兵長さんは、固定砲でやれんじゃね?とか考えてらしたんですかー?」

「あ?」


エミリーさん、すごく機嫌悪いですね。
今までに見たことがないくらいキレてねえかエミリーさん

サシャとコニーがアイコンタクトで会話をする。


「寄せ集めの兵士 かき集めた大砲付け焼刃の組織 加えてここは北側の内地だ。最前線の兵団のように実践と踏んでいるわけじゃない。だが今ある最高の戦力である事には違いない」

「ああ そりゃあ 重々承知している。なんせ今回も俺ら調査兵団の作戦は博打しかねえからな」

「博打でもなんでもいいわよ。それがエルヴィンの案なのであればそれに従うまで」

「お前のおもいつくものはすべてそれだ」

「エルヴィンー!持ってきたよおお!ありったけの火薬とロープとネット!まだ組み立てなきゃいけない、ああ〜あとこれ 向こう側にも同じものがもう一つ。 1回打てば引き金が固定され立体起動装置と同様に巻き取り続ける。」

「ハンジ〜〜、さすがハンジだよ〜〜〜持つべきものはハンジだね〜〜〜」


エミリーはハンジに抱き着きながらこのむさくるしい状況に嫌気がさしケガをしてない方の腕にぐりぐりと頭を擦る。


「え?!え?!どうしたの?!」

「問題ない。」


エミリーをハンジからはがし引っ張る。


「そう?で 砲撃はどうなの?」

「セミの小便よりかは効いてる様だ」
「鳥の糞程度かなぁ」

「じゃあ本当にこれ使うの?」

















「では リヴァイ ジャン サシャ コニー あちら側は任せた」

「「了解!」」


エルヴィンに呼ばれリヴァイが3人と一緒に向かう

「いってらっしゃーい、気を付けて」

「ああ、お前もいつもみてえなボロ雑巾はも「はいはい、わかったわかった。」

「じゃあな」



「作り方は…そうだな…大事な人への贈り物を包装するイメージだ」

「誰も聞いてないよハンジ。」


エルヴィンがヒストリアの方へ歩み寄るのが見えエミリーがピリつく。


「リヴァイから聞いたと思うがヒストリア。」


小声で話すことにさらに癪に障り作業を辞めエルヴィンの方へ向かう。


「ここをしのいだ暁には君にはこの壁の世界を治める女王となってもらう 当然こんな前線にいてもらっても困る。」

「はい、私からいいですか。名ばかりの王を素直に受け入れるほど盲目ですか?きっと納得しないかと思います。物語があれば話が変わると思います」

「何か考えがあると?」

「そう思って私をヒストリアの近く置いたんでしょエルヴィン。」


エミリーが話した後ヒストリアがエルヴィンへ話始める。視線を感じたエミリーが振り返り視線がする方を見るとエレンと目が合った。


エミリーは、エレンをみてジェスチャーで手を動かせという。エレンは言われた通り虚ろな表情で作業をつつける。





「私にとってはあなたは十分特別だよ。」


さっきまでヒストリアと一緒に居たエミリーが後ろからひょこっと現れたことに驚いた。


「え…。」


声に出てたか…?心の中を見透かされた…?


「礼拝堂から、ずーーとそんな感じだからさすがに気付くよ。」


少し落ち着いたのかいつも通りのエミリーだ。


「まぁ、詳しいことはわからないけど。私にとって104期生は特別で大事で大切な子達。その中のひとりだよエレンも」


―――エミリーが導いてくれる

あ…親父は何でエミリーのことを言っていたんだ。この力になにか関係しているのか…エミリーに言うべきか?俺の記憶違いかもしれないのに…


「いつも壁の上にあがると、思い出すよね。この街並みをみて…」


壁の中の街並みを見渡して大きく深呼吸をしエレンの方をみる。そのすぐ後ろに作業していたアルミンと目が合いアルミンも街並みを見る。


「ついてねえな…俺なんかが切り札でよ…」

本当についてないのは、人類の皆さんか。


「この街の子供たちは まるであの日の俺たちみたいだな。」

「ああ まさか今日 あの壁よりでかい巨人が襲ってくるとは思ってないだろうから。」

「あの日 私達と同じ光景を見ることになるかもね。でもあの日と違うのは…!壁の上に巨人を迎え撃つ兵士が居て、それが君たちだってこと」


アルミンとエレンの方を指差した時風が吹き、エミリーのフードが取れ黒髪が舞いあがりストンと肩に落ちる。


あの日以降、ハンネスさんはエミリーの事を聞くとはぐらかされたっけか。きっと死んだんだとおもった。もう会えないと思った、エミリーでも巨人に勝てない、それでも俺は調査兵団を選んだ母さんを殺しエミリーを奪った世界を許せなかった。



「2人とも手止まってるよ!」


エミリーが会いに来たとき、俺はおばけだと思った。けど抱きしめられた時エミリーの匂いと温かい体温にホッとした。いつか自分も調査兵団に入ってエミリーのように強くなりたいと思ったんだ。なのに…今のおれはなんだ…


「ミカサこれそこに積みたいから手伝ってもらえる?」


エミリーが火薬の入った樽を持ち上げると、急いでミカサがエミリーに駆け寄り樽を奪う


「これぐらい運べるよ?」

「脱臼するかもしれない」

「心配しすぎ」


そんなやり取りをしているとエレンが自分の顔を思い切り殴っていた。


「エレン!」

「ちょちょちょちょ!何してるの!」

「ちょ…ちょっと!どうしたの?!傷を作ったの? まだ早いよ!」


両頬を思い切り殴るエレンの腕をミカサが掴み、あざを作り鼻血を流す。エミリーはエレンの鼻をつまみ鼻血をとめる。それを振り払うエレン。


「いや どうしようもねえクソガキをぶん殴っただけなんだけど…死んでたらいいな」


エミリーはその言葉を聞いて。思い切り左頬をひっぱたく。


「「エミリー!!」」

「え…」


エミリーにひっぱたかれると思ってなかったエレンは目を大きく見開く。


「どう?気が済んだ?あのね…私からしたら今も昔もエレンはクソガキだし、なーーに焦って大人ぶってるの。一人でいつも突っ走しって振り回されるアルミンやミカサの心配もよそに勝手にに自暴自棄になって…2人の身にもなりなさいよ。


それでも、2人はエレンを追いかけるんだから。」


黒髪をなびかせながら両手を広げエレンを抱きしめ耳元で囁く。


「あんまり、ミカサとアルミンに心配させないでっ」

「エミリー…。」


安心した様子で抱きしめ返そうとするエレンを阻止する様にアルミンが「エミリー、ここは僕たちに任せて。そろそろ行かなきゃいけないんじゃないの。」と冷たく言う。


エミリーは「確かに。」といってミカサを抱きしめ、アルミンを抱きしめ走り去っていく。


「アルミン…お前…。」

「何?」


その後何も言うことなく見つめ合う二人にミカサは不思議そうに二人の顔を見る。




エルヴィンの元に戻り巨人の様子を共に見るエミリー。

ロッド・レイス巨人が壁の下まで到着し、うなじを固定砲で狙うが突風が吹き蒸気と共に熱風が拭き上げ、固定砲を撃っていた駐屯兵士達を襲う。

それでも火をふき続ける固定砲。だがロッド・レイス巨人は致命傷を与えることができず。


壁に到達し、壁上が崩れる。礼拝堂が這いずってきたせいで前側は地上で削げ内臓が飛び出し大きな臓物がなだれ壁上にぶら下がる。


「エミリー。」

「はい。」


エミリーは準備を始めるため壁上をはしり叫ぶ


「リヴァイ班!準備を!」


エレンの元へ行きエミリー自身も頭から水を浴び準備する。彼女の声を聞いた兵士たちが続々と準備をはじめ辺りを見渡す。


「エレン、出番だよ。」

「ああ。」


伝えた後元の場所に戻る。


「いける。」

エミリーの姿をみたエルヴィンが信煙弾を空に向け構える


「攻撃…開始!」


赤の信煙弾が放たれ。それと同時にハンジの準備した巻き取れる武器をサシャとアルミンが放ち、壁上にもたれる手に刺さる。そして荷台に積まれた火薬が勢いよく走っていく。


大きな爆発音と共に体勢を崩すロッド・レイス巨人



エミリーは信煙弾を装填し片方の耳を塞ぎ空へ向け「エレン!!」と叫び信煙弾を放つ。巨人化したエレンが先ほど包んでいた送りもを背負いながらエミリーとエルヴィンをまたぎロッド・レイス巨人へ走出す。



地面に擦れ削げた口の中へ贈り物を投げ込むと巨人の熱で爆発が起き火薬の勢いと共に、体が肥大しはじけ、肉片が飛び散る。


「さーていきますか。」

「総員 立体起動でとどめを刺せ!」


それをきいたエミリーは足元に信煙弾を投げ捨て、キィンと立体起動を抜き肉片へ向けてアンカーを放つ。




これほどの巨体でも、本体は縦1メートル幅10センチの大きさしかない。本体を破壊しない限りまた体を再生させ、高熱の盾を生み出す。


自由な空を飛び回るように、エミリーは肉片を切り続ける。ヒストリアを見失わない様に。




「君の考えは理解したが、戦闘への参加は許可できない」

「団長 どうか…私は自分の果たすべき使命を自分で見つけました。そのために今ここにいます。」

「まあ もっとも私の子の体では君を止めることはできないだろうな。」







エミリーはヒストリアの横に通りすぎるほかの肉片に比べて一回り大きく形をとどめ落ちていく塊を見て叫ぶ


「ヒストリア!」


エミリーさん、私のわがままに付き合ってくれてありがとうございます。そして申し訳ございません。でも初めてなんです。親に逆らったの。

私が始めた親子喧嘩なんです。


ヒストリアが大きな塊を切った瞬間、大きな爆発が起きる。


「ヒストリアあああああ!」


エミリーはヒストリアの方へ飛び込み体勢変え、抱きかかえた状態で落ちる。


待って…っ!ヒストリア……!も、少しで…届くっ…




落ちた先には荷台があり、地面にぶつかることなかった。


「エミリーさん…どう…して…。」

「だい じょうぶ だった…? よかった…」

「エミリーさん…」

「んー…?」


エミリーの上から降り一緒に両手を広げ空を見上げる。




「この街は救われたんだな」

「お、おい!大丈夫か?」

「ケガはないか?」


住民と駐屯兵がヒストリアたちへ声かける


「君達があの巨人にとどめを刺したのか?」


エミリーはヒストリアの右肩を掴み状態を起こさせる。その行動に不安そうな表情で見下ろすヒストリア。


「大丈夫、あなたならできる。」


傷だらけの顔で優しく囁くエミリー。ヒストリアは覚悟を決めゆっくりその場に立ち上がり住民の前へ立つ。


「私は…私はヒストリア・レイス この壁の真の王です。」



















































「と、隣のお前…大丈夫か…?死んでないよな?」

なかなか起き上がらないエミリーに住民が心配しはじめ、ヒストリアがエミリーを見下ろし腕を引っ張る。

エミリーは急いで起き上がり膝をつき胸に手を当て頭を下げる。

「エミリーさん。」

「女王陛下、移動しましょう。」

「あ…あの女どこかで見たことあるぞ!」


ヒストリアが身に着けている立体起動を受け取り。駐屯兵に目配せをする。


華翼の天使かよくのてんしじゃねええか!」

「完全肉片の消滅には少し時間がかかるかと思います。」

華翼の天使あのこが真の王を守っていたのか」

「このままヒストリアがここに居ては危険です。」

「お嬢ちゃん大丈夫か…?フラフラじゃねえか」

「エミリーさんもご一緒に行かれた方が…」

心配する駐屯兵のいう事を遮り「私は、まだ行かなきゃいけない場所があるので」という。


だけどヒストリアが私の目の届かないところに行くのは不安。


「通してくれ!頼む!」

住民をかき分け馬に跨った兵士が人だかりのある方へ向かう。

「エミリーさん!エルヴィン団長の指示を受け、馬をお持ちしました!」


別の場所にいた駐屯兵がエミリーの元へ馬を連れてきた。


「調査兵団の皆さんは壁上へ集まっています。」

「ありがとう、助かりました。」


ヒストリアの立体起動を、馬を連れてきた彼に渡す。先にエミリーが馬に跨りヒストリアへ手を差し伸べ、前に乗ったのを確認し馬を蹴り上げ壁の方へ向かった。


「ありがとううううう!」

住民達の声を浴びながらマントと髪をなびかせ走らせる。



「お父さんを斬ったとき見たんです。」

「んー?」

「私ちゃんとできますかね。結局流されてこのまま女王になっても」

「まあね、どうだろうね。」

「…。」

「王の大変さとか苦悩とか私にはわからないからなあ。」


その言葉を聞いて俯くヒストリア


「でも私は誇らしく思うよ!この壁の中の女王様は、私の教え子だぞーって、訓練兵時代から守ってあげたかった存在だったし、すごい心配してた。けど、立派に兵士して安心した頼もしかった、泣きむしエレンなんかより!

ヒストリアがこれからどんなことをしてくれるのか楽しみにしてるよ」


壁の上に上がり、エルヴィン達と合流する。


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