08


トロスト区


「あいつら生きてっかなー」


残りの調査兵団兵士と共にジャンがつぶやく。ジャンの心配とは裏腹にのんびり構える憲兵たちが立ち話をはじめ、緊急事態なのに巨人1匹遭遇することなく内地でぬくぬく過ごしている。


「なあリヴァイ、俺らの獲物はどこだ?」

「何だお前ら随分と残念そうじゃないか。 悪いなお目当ての巨人と会わせられなくて。今回のところはまあ残念だったかもしれんが壁外調査の機会はいくらでもある、これからは力を合わせて巨人と立ち向かおうじゃないか」


リヴァイの言葉に動揺し自分たちには内地の仕事があると怯えながら答え逃げる。




「先遣隊が帰ってきたぞ!ピクシス司令に伝えろ」と兵士が慌て叫びながらかけこんでくる



調査兵団、憲兵団が集まりピクシスと先遣隊を囲むように彼らの言葉を待つ、息を荒げ飲み物を流し込み駐屯兵団兵士がピクシスへ伝える。壁に穴や異常はなかったと。もう一度飲み物を流し込み動揺した大変な事態を目の当たりにしたと伝え、声を震わせながら自分が目にしたものと伝える



「トロスト区への帰路でアメリア団長補佐官含むハンジ分隊長率いる調査兵団と遭遇しました、その中に装備を身に着けていな104期の新兵が数名いたのですが。その中の3名の正体は…巨人でした!!!!」



恐怖におびえた顔で訴える。



その発言にジャンが動揺し何を言ってるんだと口を開く、その後一緒にきたサシャへほかの3人が誰なのか詰め寄りそれをエルヴィンが止めに入り先遣隊の話の続きを聞く


「その後、調査兵団は超大型巨人、鎧の巨人と交戦…我々がその戦に加わったあと…すぐに…決着が…」


と力なく話す先遣隊兵士の話を聞きエルヴィンの顔が曇っていく。リヴァイは何か言いたげにずっとエルヴィンを見つめて静かに瞼を閉じ



「おい、お前あいつらはどうした。」

サシャは呼ばれたことに驚き動揺したままリヴァイの方を向く

「ほ、ほとんどの兵士が。重症で動ける状態ではありま、せん。かろうじて壁上にいた兵士のみが無事、でした。」

「そうか。」


エミリーは、十中八九重症の部類に入ってるだろう。あいつが大人しく壁上でのんびり構えてるわけがねえ。

























優しく風が吹いているのがわかる、思ったより体は痛くないただ重たい誰かに上へ乗られているように息苦しい。誰かが私の頭に触ろうとする気配



息をひそめ一気に目を開き顔の前にあった手を掴み重い体を動かし視界が定かでないまま手の主の腕をひねりうつ伏せにさせ肩の関節を外そうとすると



「い"…!エミリーっ…!僕、だよ!!」


そのかわいい声に握っていた腕と押さえていた肩を勢いよく離して痛がるアルミンと視線の高さを合わせ謝る。


「ごめんなさい!!!つい、地下g…ごめんなさい…」


地下街ではない、ここは今壁上で巨人が現れて…戦ってた。超大型巨人の頭がおちてきて…その後…。ア…ア…エレン…。


身体を震わせエレンが居ないことに絶望し、ユミルを失ったことでヒストリアへの申し訳ない気持ちで心に刃を向けられたような気持ちになる。



「め、目が覚めてよかった…ミカサとエミリーは近かったから…エミリー…」


彼女の暗く悲しく光のない瞳に動揺した。エミリーはエレンが巨人化できるとわかって以降さらに何かに囚われたようにエレンを固執する様になった気がする。そしてそれが僕にとってとてもうらやましく思えた。

エミリーは静かに立ちゆっくりと歩いて自分が寝ていた場所に行き、隣に寝ていたミカサの横に座る。優しい顔で彼女の顔をなで「ミカサ…ごめんね…頼りない私なんかをいつも信じてくれて…ごめんね…」と泣いているのではないかと思うくらい弱弱しい彼女の声に胸は張り裂けそうだった。



「エミリー…僕は…「起きたか…!」」



弱っている彼女に声を掛けようとしたときだった。足音と共に目指めたエミリーに声をかけたのはハンネスさんだった。



「すいません、今起きました…。」


重い体を折りたたみぬっと立ち上がってハンネスの方を向いて壁の上に寝る皆の姿を瞳に入れる。


「…ひどいものですね…。」

「ああ…。お前は大丈夫か?」

「ええ、何度も頭うったおかげか石頭になったかもしれません」

「…お前の冗談は笑えねえな。」

「歳はとりたくないものですね」

「その減らず口が叩けるなら大丈夫だな」

「無事なのは運よく上に居た俺達だけだ。下にいた奴らは熱と風圧で一時再起不能ときた。お前は…どうして…」





その言葉を聞いたあと返事することなく一番手前に寝るハンジの元へ足をすすめ、ハンジの元に行こうとした。そのエミリーが目を覚ましたことによりほかの兵士が彼女を囲みどうすればいいのか聞き始める。


ヒストリアとコニーが彼女に縋りつくような目で手を震わせてるのがわかり2人の手を片方ずつとり黙って見つめる。何かを言うわけでもなく優しく握る。2人はそのエミリーの温かい手を一度見つめ彼女の目を合わせ小さく頷く


「落ち着きなさい。今はサシャをエルヴィンの所へ向かわせてその後の判断は団長に任せ私たちはそれまで…この場で待機よ。」

「…はい。」


彼らをかき分け跪いてハンジの胸へ手のひらをあてて鼓動音を確認して目をつむる。その様子を見た兵士たちはほかの兵の手当てに戻る。




エミリーはゆっくり立ち上がり、壁の下を見るために壁のふちへ立ち頭を下に向け巨人と目が合う。



は…はは…本当にどうなってんのよ。この状況に軽くめまいと頭痛がする。私はどうして大丈夫だったんだろう。ああ…熱風耐えるために体を丸めてフードを被ってたからか。



エミリーはミカサが目覚めるまで彼女の頭を自身の膝の上に置いて髪を撫でる。隣に座っていたアルミンが膝を抱えその様子をずっと見守る。


「アルミン…こっちおいで」


膝を抱え眠りそうなアルミンに自分の隣をトントンと叩きこっち来るように促す。アルミンは少し目を見開き照れた様子でエミリーの横にちょこんと腰をかける。


座ったアルミンの頭に手を伸ばし自分の方に引き寄せ「ありがとね、私が目を覚ますまで側に居てくれて」と優しく声をかけ頭においた手をポンポンと撫でる。


「どうして…エミリーは…いつも……」


僕たちの心にすっと入ってきて心を包んでいくんだ。僕たちはその優しさに触れるたび自分達の弱さを直面して甘えたくなる。それでも彼女はその行為を許し僕たちの意思を優先してくれて…自分の大事なものを捨ててでも守ってくれるだろう。そんな彼女は僕たちよりもつらいはずなのに笑顔で、自分を殺すのに。


「…ッ…」泣きそうになった顔を膝の上に伏せごまかす。きっとエミリーは気付いてるそして見て見ぬふりをしてくれる…。ほんとに彼女はどこまでもどこまでも…。優しすぎる。


「おやすみ」優しく言って頭を撫でてくれるエミリーの声を聞いてゆっくり目を閉じた。

























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