19


「お前を半殺しにとどめる方法を思いついた」


エレンが調査兵団預かりになって間もない時期リヴァイ班とハンジ含むとある日の事だ。エレンの巨人化が彼の意思なく暴走した際のリヴァイ班としての対処の説明しているときだった。暴走した際エレンを取り出すには殺すしかないと選択肢がなかったと思っていたが。手足を切り取ってしまえば重傷ですむという結論に至った。エミリーは反対することなくハンジの隣で一緒に座りながらただそのやり取りを黙って見つめエレンの表情をうかがう。



「どうせまたトカゲみてえに生えてくんだろ?気持ち悪い」

「待ってください。どうやったら生えてくるとかわからないです、何かほかに方法は…」


ぴょんと机から飛び降りエレンの元へ近寄って


「何の危険も侵さず、何の犠牲も払いたくありませんと?」


リヴァイが凄みエレンが強張りながら「いえ…」と答えリヴァイが言い続けようとした言葉を遮りエレンを見上げる


「エレン、審議所であった通り。私はエレンに拳を振り下ろされたあの時は死なずに済んだ。けどね、次はないと思ってる私もあなたも、それに彼らもエレンに殺される危険があるのには変わりない。わかるよね?どちらもその覚悟で今ここにいる。」


大きな目で彼女を見下ろし、消えかかった傷を見つめて眉間にしわを寄せぎゅっとこぶしを握る。



「わかりました…。」

「ありがとう、ごめんねこの方法しか…今の私には出せなくて」


悲しく微笑みエレンの隣にちょこんと立つエミリー。

不本意ながら今はこの方法でしか救える手立てがない、そうならないよう最善は尽くすつもりでも何もわからないまま保護しておくだけではエレンの力を借りて壁外調査に出る事なんてほぼ不可能に近い。まずか検証してのどういうものなのかを知らなければ何の意味をなさない。



「じ…じゃあ実験していいよね?」


眼鏡を光らせながらリヴァイの方を見るハンジ。


「自分らの命を懸ける価値は…十分ある。ね?エミリー」

「ええ。どちらにせよ調べる必要があると思う。」


馬を走らせ日が傾き始めたころに目的の場所に到着し、深く狭い井戸にエレンのみ入ってもらい私たちは離れた場所から馬にまたがり待機する。私が信煙弾を撃ち井戸の様子をうかがうが…巨人化をする様子がない。


「合図が伝わらなかったのかな?」

「いや。そんな確実性の高い代物でもねえだろ。」


エミリーは冷や汗をかきながらエレンに体調が悪くなり倒れたなど何かあったのではないかと不安になりながら馬を走らせ井戸に近づく。


「おい!エミリー!」

「エレン…っ!!」

「くそ…いったん中止だ!!」


エレンに聞こえる声で叫びエミリーもそれをきいて馬から飛び降り馬を待機するよう声をかけ井戸を覗き込む…


「エ…エレン……っ」


噛み跡だらけで血まみれになった両手を見せながらエレンが跪いていた。


「エミリー…巨人に…なれない…。」


痛々しいエレンの姿に眉をひそめ手当箱を急いで取りに行く。引き上げられたエレンに近寄り両手首を掴み。




「エレンにも…信煙弾を渡していればよかったね…こんな…ごめんなさい。」


不確定要素が多いことは十分わかっていたが、自傷行為は生半可な覚悟でできることじゃないどれだけ跡が残らないといっても痛みが無いわけではない、それをわかって何度も噛んだ傷を見る。


エレン真ん中の椅子に座らせその両端にエミリーとオルオが腰掛け向かい側にはリヴァイ以外の3人が座って飲み物を飲んでいる。リヴァイは少し離れたところで立ながらコップを握りしめていた。


エレンの傷の手当を済ませ手当箱を救護班に返し行く。


エレンの傷全然治ってなかった、原因がわからな過ぎて…頭が混乱する。ハンジと2人で話したがわからなすぎて情報が無さ過ぎて検討が全くつかない、前に実験した巨人とは勝手が違う同じようにとらえることはできない。


「そう気を落とすな」

「ただいまー」


エレンの隣に腰掛けエレンに微笑むエミリー。机の上に置かれる手をみてまだ痛む?と聞きながらコーヒーを飲んで眉をひそめる


まっずー…


「はい…。」

「まあ思ったよりお前は人間だったってことだ」

「焦って命を落とすよりはずっとよかった。これも無駄ではないさ」

「無駄ねぇ…。そうねー…。」


意外と冷静なリヴァイ班に驚いた。彼らはまだエレンが巨人化した姿を見ていないのだろう、もし先ほどの実験が成功し巨人化したエレンを目の当たりにしても同じことを言えるのだろうか…


飲み物を飲もうとしたエレンが「うぅ…」と痛がる声が聞こえティースプーンを落としてしまう


「大丈夫?」


エミリーは考え事をやめエレンの手を掴み心配しエレンの表情を確かめる。大丈夫だと返され握られていた手を離し机の下におとしたスプーンを拾う動作が見えたので少し、エレンから離れ取りやすいよう移動する


ビリビリと小さく音が聞こえ、咄嗟に受け身を取ったが間に合わず爆発音共に座っていた椅子から吹き飛ばされその衝撃音で耳鳴りのように耳がキーンと響き熱風を吸った喉が少しヒリっと傷むのが分かってすぐに息を止め飛ばされ倒れた体を急いで起こしエレンの元へ足を向かわせる



「…ぃったぁ……エ…エレン!」


煙が消えはじめエレンの姿が微かにとらえることができ冷静になりながら辺りを見渡すとリヴァイ班が立体起動を抜きエレンめがけて切りかかろうとしていた。


「エレン!!!」


「なんで今頃?!」


「落ち着け」


リヴァイの静かで低い声が響く。


「リヴァイ兵長これは…」


「…あなた達…落ち着きなさい」


エレンとリヴァイ班の間にリヴァイがたってその場を収めようとしていた。リヴァイの横にエミリーがゆっくり歩み寄り彼らを刺激しないように静かに声をかけるが聞く耳を持たずエレンを仕留める気満々の顔でエミリーたちとは目が合わない。


はぁ…。わかってたことだけど…心に来るなぁ…これは。


1列に整列されていたリヴァイ班がエレンを取り囲むように移動しその間も私たちの声は聞き入れようとせずひたすらエレンを責め続ける。エレンに意思を問い答えを聞こうとする。


この光景は以前に体験した、駐屯兵団に囲まれた時と類似していた。人類に敵意がない…自分は人間だと証明しろ…とせかす。


「いいから、落ち着きなさい。」


エミリーは淡々と彼らの行動を注視しながらこれ以上悪化しないしようとするが彼らにはそれは通じない、オルオはエレンの首をはねると言い出しその言葉が聞こえエミリーの逆鱗に触れた


「オルオ…今なんて言ったの?なに…?だれの許可で何をするって?」


反対側にいたオルオに冷たく言いながらオルオに1歩1歩ゆっくり歩み寄る


「オルオ!落ち着けといっている!」

「兵長!エミリー!!エレンから離れてください!!」

「いいや、離れるべきはお前らの方だ下がれ」

「何故です!!」


エミリーが片耳を抑えながらエレンの様子を横目にリヴァイ班を睨む。

各自喚き騒ぎ叫びそろそろ私も限界だなー…我慢できる方ではないのは自覚してる。それとは別にこんなにも複数が感情を爆発させエレンに当たり散らしてる声は正直聞き苦しい頭が痛くなってきた。


「いい加減叫ぶのやめてくれない?」

「ちょっと黙っててくださいよ!!」


ハンジが目を輝かせながらエレンにすごい勢いで寄ってくる。グンタを押しのけ一部巨人化したエレンに触ってもいいかと問いかけ応えを待つ前に触り一人嬉しそうにはしゃいでいた。


「エレン、動ける?大丈夫?」


エレンを気にかけ腕を抜く素振りを見せ転げ落ちない様エミリーは背後に回って支える。その場に崩れ両手を地面につけまともに立っていられないのかハァハァと息遣いが荒い同じようにしゃがみながらエレンの背中を撫でながら落ち着かせる。


「エミリー…」


その反対側にリヴァイが近寄ってエレンに気分を訪ねる。


「あまり…よくありません…。」


か細い声で出された声にエミリーはふぅとため息をついて立ち上がってリヴァイ班側に振り返る。彼らの顔を焼き付けておこうと…。
















地下でエレンを見張るリヴァイとエミリー。階段に座り消沈するエレン、松明たいまつ置きの下の壁にもたれ掛かりながらエレンの話を聞くリヴァイ。エミリーはエレンの隣に少し肩が触れ合う距離に腰掛ける。落ち込みながら声を絞り出すように話す、その話を静かに聞きリヴァイがその話の返答をする。


「エミリーさん、リヴァイ兵長。ハンジ分隊長がお呼びです」

「モブリットさん…痩せた?」

「え?!」

「冗談です」


ハンジの部下と話しながら彼女たちが居る部屋に向かい扉を開け長引いた理由を聞くと上への報告がとハンジが答える「一緒に行けばよかったね、ごめんなさい。」というとハンジはいいんだよと優しくわらって返しポケットから白い布を取り出し机に置く。

そしてハンジが仮説を話しはじめ一同耳を傾け理解しようとする。今回エレンが巨人化をしたのはなぜかそれは明確な目的がないと巨人化できないという結論に


「ハンジの言う仮説に裏付けが必要ならば、今回の巨人化は以前にエレンが砲弾を防いだ時と酷似していると思う、前回は砲弾。今回はスプーンを拾うため。目的の大小は関わらず発動条件があるかもしれないわね」

「そんな…ティースプーンを拾うだけで……何なんだ?これは…」


リヴァイ班も納得したようにエレンに聞くエレン自身が許可を破ったわけではなく巨人化は予期せぬ事態だったと。グンタが深いため息をつくと全員が顔を見合わせうなずき手を噛み出した。その様子にハンジは慌てるエミリーは無表情でその行為を見つめゆっくりと瞬きをしながら彼らの感想を待つ


「ちょっと!何やってんですか!」


彼らは自分たちの判断を誤りエレンに対して敵意を向け喚いたことを謝罪しはじめた。オルオはエレンを押さえるのが仕事だと言いだしたカツカツとエミリーが動き出しダァーンと左手をエレンとオルオの間の机にたたき


「オルオ…。あなたはもう一回よ。」

「え…」

「え?じゃないわよ…ほら、早く。聞こえない?そうよねあなたは聞こえないのよね、私が何度も声をかけたのに…」


冷たく見下ろされるエミリーの瞳にリヴァイ班は息をのむ。


「ちょっ!エミリー…っ?!」


エレンがエミリーの肩を掴み止めるが聞こえずオルオを見下ろす。


「エミリー。」


リヴァイが静かに怒るエミリーに視線を向け横目でエミリーはリヴァイの目を見て視線を真っ直ぐに戻しふうーっち深く息を吐いて壁にもたれ掛かり部屋の中がシーンと静まり、ペトラがその空気を破り怯えていたと謝罪しエレンに信じてほしいと願う。


空気を換えようとエミリーは考えること止め起きたことを責めることを諦めエレンに近づき後ろから抱きしめる「私は、いつでもエレンを信じてる。あなたは一人じゃない、私が一緒に戦うから。」と優しく言うとエレンは最初は穏やかな笑みを浮かべていたがリヴァイからの冷たい視線に気づき体が固まりはじめ。


「てめえ!調子のんじゃねえぞ、ちょっとエミリーさんが優しくしてくれるからって!!」

「エミリーさんっ…!あまり…あの…!」


背後から殺気を感じたペトラは


「エミリーっ…!」

「ん?」


心配そうな顔をして小さく首を左右に振る。エレンから離れポンと背中を叩き「これで、本格的にリヴァイ班の一員だね!エレン!」

呑気なエミリーはニコニコとしながらエレンを見るがその顔は引きつっていた。


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