03
前に比べて泣くことが増えた。些細な事でも涙が溢れ出る、以前は涙腺に蓋がされていたかのように流れることはなっかた。なのに今となってはぽたぽたと伝う。
「職権乱用ですか」
「お前に上も下もないだろう。」
「…リヴァイ班では、あなたがルールなのはご存知ですか。」
「知らねえ。」
「でしょうね」
手が離され、リヴァイの部屋になる部屋へ連れられパタンと扉がしめられ、その扉にもたれ足と腕を組み中に連れ入れたエミリーの背中を黙ってみつめる。
口数が少ないときのリヴァイは何か考えてるだろう。今エレンはなにしてるんだろう、掃除終えたのかな。私の部屋掃除途中でエレンの様子見に行ったから中途半端なままだったなー。
「掃除サボらせるために、ここに連れてきてくれたんですか?」
まだ敷布の敷かれていないベッドの枠に腰を掛け辺りを見渡し首を傾げ下からリヴァイを見上げる。窓からさしこむ光でひかった綺麗な目がこちらを見ていた。
少しその様子を見て歩き始め隣に腰を掛け膝に肘をおいて前かがみになりながらエミリーの方をみると彼女は足を組み頬杖をして無表情だった。
顔を近づけるがエミリーは避けることなく、頬杖をやめ目をつむり向こうから顔を近づけてきた。その行動にリヴァイは驚いた様子でかたまり優しく唇が触れ小さくチュっと音がした。
「見てたんでしょ、ペトラとのやり取り。」
顔が離れエミリーのまつ毛がゆっくり上へ動き光の少ない大きな瞳がリヴァイをじっと見つめられ心臓がドキリと跳ねる。
「…お前、気付いていたのか」
彼女の透き通るような眼に飲み込まれそうになりながら声を絞り出した。
「ううん、勘」
先ほどの様子とは変わったエミリーは微笑みながら頬杖をして答える
「この話はまたあとで、早く掃除終わらせよ!」
立ち上がりパンパンと太もも裏を払い扉へ歩き内側に開いて体を外に出したところ、ボフっと誰かとぶつかり見上げる扉の前にはエレンが立ちエミリーを支えていた
「うお、エミリー…!」
「ッ…びっくりしたー…」
咄嗟に支えた相手がエミリーで、さっきの行為を思い出し一気に顔が赤くなりバッと離れる
「ご、ごめん!リヴァイ兵長探して…たんだ…」
視線を感じ部屋の奥に顔を向けると、座っているリヴァイが視界に入り焦る。その様子を見かねて、エミリーは扉を出て階段を一段上りその場に残る
「なんだ。」
「俺は、どこで寝るのかと思いまして…」
「お前の部屋は地下室だ」
少し残念そうな顔をするエレン
「また、地下室ですか…。」
「当然だお前は自分自身を掌握できていない。寝ぼけて巨人になったとしてもそこが地下ならその場で拘束できる」
「エレンを調査兵団に委ねられたときに課せられた約束で…。」
「守るべきルールだ。」
「え…」
「俺は一度、各部屋を見てくる。あいつらと合流して待っていろ。」
立ち上がり2人の前を抜け上の階を確認しに行った。
入れ違いでペトラがリヴァイを探しに部屋へ覗きに来た。
「兵長みなかった?…なにかあったのエレン」
「え!?」
「俺今どんな顔してました?」
「綺麗で純粋な顔してるよ」
エミリーは壁にもたれ手足を組みながら遠くを見つめ真顔で答える。
「は?!」
「エミリーそうやって誑かさない。…失望した?兵長のこと」
「そんな顔してましたか…」
自分の頬をかきながらペトラを横目でみて隣立っているエミリーに視線を戻すとパチっと目があいスッと目をそらす。
「思いのほか小柄で英雄って感じもしないでしょ?神経質で粗暴で近寄りがたい」
「そうだねー」
「あ…いえ、俺が意外だと思ったのは上の取り決めに対する従順な姿勢です」
ああ見えてリヴァイって思っている以上に従順だよね。思いやりもなさそうに見えるし口も悪いから上層部に対して反抗的な行動もとりそうだけどそういうことは全くない。
「序列や型にははまらない人ようだと思った?」
「はい…誰の指図も意に介さない人だと」
「まぁ、そうみえるよねー…」
隣でうなずくエミリーをチラッと見るペトラの視線に気づき「ん?」と首を首をかしげる
「私も詳しくは知らないんだけど、以前はそのイメージに近い人だったみたいだよ。ね?エミリー」
リヴァイの過去の話の事かと納得し、ペトラに向けた視線を理解した。でも過去の事他の人に話すというのはあまり好まない、エミリー自身から話そうとはせず。
「まあ、若かったからじゃないかなー。そーゆー年頃だったんだよきっと」
そういって、エミリーは階段を降りて行った。
その後もペトラは続ける
「リヴァイ兵長、都の地下街の有名なゴロツキだったって」
「そんな人がなぜ?」
「さあね、何があったのか知らないけど。エルヴィン団長の元に下る形で調査兵団に連れてこられて世話役がエミリーだったって聞いたわ。」
「え!?エミリーが…?!」
「おい、お前ら」
上の階を確認し終えたリヴァイがまだここに居た2人に声をかけ、その声を聞いた2人がビクリと肩を揺らし慌てる。そこへバタバタとエミリーが階段を駆け上がり
「あ、いた!リヴァイごめん、私一度本部に戻る。エルヴィンと今後の話したいから」
「ああ」
「必要な物あったら一緒に持ってくるけど、何かある?」
「いや、ない」
「今日中には、戻ってこれると思うけど。最悪、明日には戻るね!」
「そうか、わかった。」
「じゃあ、行ってくるね」
皆へ手を振り笑顔で走っていくエミリーをエレンとペトラは手を振り見送り、リヴァイはその姿を静かに見つめ見えなくなるとエレンに目を向けていた。