自分を貫いた黒いものがするりと抜けた所が、とても熱かった。
全てを奪われた感覚。
少し前に殺されてしまった彼のすぐ横に崩れ落ちる。
胸は熱いのに、とても寒くて、どんどん暗くなって、怖くて、悲しくて、痛くて。
その全てが傷口から流れ出て、欠け、砕けて、薄くなっていくのだ。

暗い視界、教室の床、彼、滲んでいく赤。目に映る、薄闇の中でとても鮮やかで綺麗な赤色。
その中に女の子が佇んでいる。
ああ、そんな風にしてたら、服と靴が汚れちゃうよ。
声を出そうとしてもひくっと喉が上下しただけで声が出ない。
どっと疲れが襲ってきて諦める。どうして声をだそうと思ったのかも消える。
白い白衣が赤く染まっていた。白衣。猫市ちゃん。

( 猫市、ちゃん )

綺麗な赤色を彼女を取り巻く黒色が埋め尽くしていく。

何かが閃いた。思い出す。黒色。
黒色は、猫市ちゃんに潜んでた、こわいもの。
存在に気がついてから、よく見ていた。
彼女はそれをとっても大切にしていて、その黒いものも猫市ちゃんを好きだって。
一緒にいることに私は何も言わなかった、均衡を保って共存できるならそれはとっても幸せで。

でも、今、目の前で猫市ちゃんが黒色に覆いつくされようとしている。
それを止めたくて手を伸ばそうとしたのに、全く動かなかった。

( わたし、 )

瞬間、こうなる前の彼女とのやりとりが去来する。
遠くなっったり近くなったり。
言ってしまった言葉が耳鳴りのように嫌な音となってつかの間に消えた。

( ちがうの )

少し考えれば、周りを把握すれば、分かることだったかもしれない。
何もかもが信じられなくて、起こったことを受け入れられずに、守ろうとした彼も守りたかったこの子も私は突き放して、今とても苦しい。

( でも、もう )

視界が黒く埋め尽くされて今にも見えなくなるくらい暗くなって……もう何も見えない。
この苦しいのも、紗をかけたように霞んで薄くなっていくのだ。

ああ、彼女も私も黒に覆いつくされたのか。

( ごめんね )

何に対してなのか、届かない言葉。
後悔、それすらも解けて消えて、カルラは真っ暗闇に落ちた。




2012/02/20
IFで死にネタやってみたかった…。
猫市さん所の「少女の終わり 異形の始まり」の微・続き、補完でした。



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