【キャラ化学IF】ノアール×紫ちゃん


深夜、闇の中を赤い色彩が走った。人だ。
窓の外遠く眺めていたノアールはそれを捉えたが、すぐに建物に遮られ見失う。
しかしその横顔はしっかりと目に焼き付けていた。

あれは、紫ではないか。

こんな深夜に何を…と思った所で今日がクリスマスだと思い出す。
学園が冬季休業に入り、それから会えずにいて、そのまま年末までゆくかと思っていたが。

何を企んでいるのかは知らないが好きにさせようと、領内に紫が侵入した事に感づいてはいたが何も知らぬふりをしてノアールはベットに身体を横たえ目を閉じる。

しばらくして、窓が開けられる音。
ひやりとした空気と、極限まで押し殺された気配が室内へ忍び込む。

「……」

その気配がそろりそろりと近づいきて、ベッドの際へ腰掛けた。
じっと見つめる視線を感じている。静かに目を閉じたまま動かないで居ると、慎重に伸ばされた手にさらり、と前髪を払われる。
額に微かに触れた指先が冷たく、僅かに眉を顰めた。
小さく名を呼ぶ、高い声。

「ノアくん、起きて」

その声に違和感を覚え、「何だ」と答えて目を開ければ、そこには赤と白の際どい衣を纏った紫が居た。
女体で。

上体を起こし、まじまじと見つめる。
サンタを摸しているのだろうか、非常に布面積が少ないその装いがあまりに女性らしい肢体を際立たせていた。
素直に、美しい、と思った。

「ノアくん、Merry Christmas!」

柔らかな唇が押し当てられる。
それに応え、嬉しそうに笑う紫を目を瞬かせ改めて見た。

「紫…」
「えへ、来ちゃった」

それは良い、会えた事はとても嬉しい。だが、

「………何故、女性体なのだ?」
「え、駄目?これも可能性の一つだよ」

…何の可能性を追求しようとしているのかはともかく、紫が納得してその姿でいるのならば、まぁ良いだろう。
どんな姿であろうと紫にはかわりないのだから、我も異論はない。

「どう、気に入ってくれたかな?」

ベットから立ち上がって照れたような仕草を見せながらくるりと回ってみせる。
紫は服装の事を尋ねているのだろう。

「……お前は女性体であっても、美しい。」

目を細めて、そう告げれば紫が頬を染めて俯いた。

「……」
「だが」

固い声色で続ける。

「そのような格好でこの夜更けに町内を一人走り来たのか、馬鹿者」

紫の一挙一動に、今にもこぼれそうな胸が揺れ、それを覆うジャケットは飾りでしかなく。
見事なくびれを晒した挙げ句に、身動きするだけで短すぎる裾がはためいて白い内股が見えている。

深夜とはいえ、いや、深夜であればこそ、何という。
掻き立てられる情欲と憤り。

「紫、こちらへ」

完全に起き上がってベッドサイドへ腰掛け、紫へ腕を伸ばしその手を取る。
いつもよりも低い掌の温度。素手は寒さで赤く色づいていた。

「体が冷えているではないか」
「大丈夫だよ、走ってたし」
「…そうではなく。」

手を引いて導き、いつもより小さな身体を腕の中へ閉じ込める。

「無闇に肌の露出をするな。その格好は、…些か男には刺激が強すぎる。分かってやっているのだろう?」

紫は強いが、万が一がある。道中襲われでもしたらどうする心算だ。気が気でない。

「あまり、人を煽ってくれるな」
「……ノアくん、大好き」

甘えたように身をすり寄せる紫は、女体であればこその危機を本当に分かっているのか。

「誤魔化されぬぞ、紫。」
「でも、ノアくん喜んでくれたし、心配もしてくれたし、この姿で来たの後悔してない。」

にこり、と微笑まれて溜息が出た。

これは…一度痛い目を見せる方が良いか、とノアールは思案する。いたずらに人の欲を煽ればどうなるのか口で言っても解らぬようなら、手法を変え教え込むまで。

「よかろう。そのような格好で男の寝所へ来たからには覚悟はしているのだろうな。手加減せぬぞ」

誘い文句を口にしながら、荒々しく紫をベッドへ引き倒す。

「もちろんだよ、ノアくん」

幸せそうに、紫は細い腕を首に絡ませてきた。

目眩のするほどの艶やかさを纏う紫を抱きしめ、ノアールは唇を奪った。














■不完全燃焼。


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