シリーズ | ナノ
あの日、あたしを家の前まで送って「じゃあね」と言ってから、白澤からの連絡は、ない。
あたしが何も言わなかったのを肯定と捉えたんだろうか。間違っちゃいないけど。でも、あたしは何と答えたらよかったんだろう。
わざわざ高校を変えたのは、女の子なら誰とでも遊んでるくせに、あたしの気持ちにだけ応えてくれない白澤が嫌になったから。
大学で再会したとき、喜んでしまった自分がくやしくて仕方ない。おはようコールも、代返も、あたしだけの特権だなんて、喜んで断れなくて、勝手に空しくなって。白澤が、あたしを"女の子"として見てないのは、昔から知っていたのに。
まだ好きでいるなんて信じたくなかったから。
自分にだって気持ちの整理がついてないのに、何と答えたらよかったんだろう。
代返がいらなくなった分、学校もちゃんと来ているみたいで、学校では白澤をよく見かけるようになった。
白澤は相変わらず女の子を侍らせては、ヘラヘラしている。
―きっと、住む世界が違うんだ
そう自分を納得させて、過ごした。
この痛みだって、いつか忘れられる。
そう、信じて。
一兎しか追ってなくても捕まえられない。