シリーズ | ナノ 代返をとるのが非常に厳しくて有名な先生の授業が終わったあと、予想してた通り、白澤が近付いてきた。

「じゃ、なまえちゃん。明日の朝も、電話よろしくね」

それだけ言ってあたしの返事も聞かずに、やたら化粧の濃い女の子と肩を組んで、教室から出ようとする人混みに紛れた。紛れる瞬間、隣にいた女の子が甘えた声で「あの子、友達ー?」とか、きいてたけど、そんなの、あたしが知りたい。


多分、一般的に言って、あたしたちの関係は幼なじみ。小学校、中学校と同じ学校だった。高校は違ったけど、大学でまさかの再会。その後、おはようコールやら、代返やら、何かとパシられてる。

きっと、あたしが選ばれたのは、毎日真面目に授業を受けそうだから、だと思う。実際、あたしは真面目にしか出来ない。だから白澤は、あれだけ女の子とデートしたり、サークルの飲み会行ったり、合コンしてみたりするくせに、出席率はあたしのおかげで守られているのだ。

非常に腹立たしい。

しかし、なんだかんだと頼まれたら、断れずにキチンと仕事をしてしまう自分が、何よりも腹立たしい。



別の日の昼休み。いつものお礼と称して、食堂に誘われた。なんでも、お昼を奢ってくれるとか。

「好きなの、何でも頼んでいいよ」
「じゃ、日替わりスペシャルランチで」


とは言っても食堂のメニューなんて、たかが知れてる。実際、スペシャルランチでも500円しか掛からない。

「なんか不満そーだね」
「食堂のランチなんて安いじゃん」
「僕と一緒にいられることが高いんだよ」

よくも、まぁそんなセリフが言えたもんだ。

「ま、なまえは、そんな言葉で喜ばないかー」

今度、ちゃんとご飯食べに行こうよ。

そう言ったけど、その約束を守るかどうか怪しいものだ。


あたしは、決して頭の悪い方ではないけれど、白澤のあたしに対する気持ちについては、何年勉強しても答えが出せない。それくらい、白澤は意味がわからない。


兎の衣を借る、男。
(つまりプレイボーイってこと)

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