流星群 | ナノ




宮地に話しかけても意味ないし、帰らせてもくれないみたいなので、しばらくの間、じっと座って川を眺めたり、空を見上げたりしていた。すると、なんだか不思議と落ち着いてきて、宮地がここに連れてきた意味が少しだけわかった気がして、少しムカついた。慰めよーとしてんのかなって。わかりにくくて、ずるい。あたしの勘違いかもしれないから。本当に意味の無い行動かもしれないから。ムカつきついでに、どーせ反応無いんだしって思って、モヤモヤを言葉にして吐き出した。


「あたしから、気持ちが離れているのは、本当はずっと気付いてたんだ。でも、あたしはそれでも好きだったから。好きだったから、気付かない振りしてたんだよ。それでさ、好きだったからこそ、最後くらい嫌な奴にならないように、潔く引いたつもりだったんだけどね。彼はそうは思ってくれなかったみたい。きっと、悲しいことなんだよね、好きな人と恋人じゃなくなって、自分のこと、わかってくれなくて。でも、それは今まで言葉にしなかったあたしにも責任があるし。それに、宮地も見てたから知ってると思うけど、あたしは…、」
「……」
「あたしは、あの時、泣けなかった」


あたしが自分の膝を抱きながら、ボソボソと呟いている間、宮地は聞いているのかいないのかわからないけど、ひたすら正面の川を眺めながら、近くに落ちてる小石を川に投げたり、足元の草を引っこ抜いたりしていた。

もう辺りは薄暗くなって、ここに来たばかりの時はまだオレンジだった空の端が深い藍色になりかけていた。風も少し冷たい。


「そろそろ帰ろうよ」


何も言わない宮地にそう言いながら、あたしは立ち上がって、制服のスカートについた砂を払った。そしたら、今までずっと生返事だった宮地が、座ったままこちらも見ずに口を開く。


「泣けなかったんじゃなくて、泣かなかったんだろ」
「…え?」
「お前は優しいから、泣かないでやったんだろ。アイツが悪者になんねーように」
「……」
「お前くらいわかりやすい奴もなかなかいないのになー、アイツもバカなことしたよな」
「何それ」
「いや、そのまんまの意味」


宮地も立ち上がって、そして、やっとこっちを見た。真っ直ぐあたしの目を見る。宮地は身長の割に童顔で、男のくせに睫毛が長い。少し長い前髪が、風にサラサラ揺れている。割と整った顔してるのも、なんだかムカつくなぁ。そんな今更な感想を持ちながら、あたしも負けじと宮地の目を見た。それなのに、宮地が何を考えているのかはよくわからなかった。あたしがどんな表情をしているのかもわからなかった。


「…ま、いいや。帰ろうぜ」


有耶無耶にしたのは、宮地の優しさだったんだろうか。

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