檸檬空 | ナノ


「は?マネージャー辞める?」
「ちょ由孝、声大きいよ」


朝の廊下に似つかわしくない声で話す由孝に周りの人たちが何事かとこちらを見る。


「しかも、辞めるってか、ならない?だってまだ仮入部じゃん。前、由孝に入部したらなかなか辞められないって聞いたけど、あれ、本入部からでしょ?だから今日ならギリギリ間に合うかなって」
「それはそーだけど、なんで……って黄瀬か…」


やっぱりいきなり会話しなくなれば、周りも気付くのは当たり前か。こないだ由孝に誘われて3年の教室でお弁当食べたときに小堀先輩にもきかれた。その時はごまかしたけど、この状況ではそれも無理か。


「別に"黄瀬の"せいじゃない。でも、黄瀬と気まずくなったのは事実。黄瀬と、これから3年間一緒にやってくのが、…怖い、だけ」


慎重に言葉を選ぶけど、上手く言えない。本当のところ、話したくない。

でも、由孝は気付いたみたいだった。


「"何か言われた?"」
「……」


あたしだって、出来れば辞めたくない。少しだけどバスケ部のマネージャーをして、楽しかった。先輩たちもいい人ばっかだし。

鼻の奥がツンとする。泣きたい。


「…せっかく、向き合おうとしたんじゃなかったのか?黄瀬とはクラスも一緒だろ?逃げてどうすんだよ」


言葉は責めてるみたいだけど、由孝はあたしを心配してくれてるんだ。わかるけど、


「だって、黄瀬も"あいつ"みたいだったら、あたしは、立ち直れないかも知れない」


そのセリフに由孝は一瞬詰まった。


本当は思い出したくもない、あの日がフラッシュバックする。





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