そうして放課後になり、オレとみょうじは部活へ向かった。本来なら、1年の正式的な参加は来週からだが、バスケの推薦で入ったオレは入学する前から参加していたし、みょうじは仕事を早く覚えたいらしく、先輩に頼んで今日から参加するらしい。
「絶対に、誰にも言わないでよ」
更衣室の前で別れるとき、みょうじが念を入れてきた。やっぱり信頼された、って訳じゃないんスね。
「だいじょーぶっス!」
「ホントに?」
訝しげな目を見て、オレってそんなに信頼出来ないかなと、ショックを受ける。
「実際まだ誰にも言ってないじゃないスかー」
「だってまだ誰にも会ってないだけじゃん!」
と、更衣室の前で言い合いしていると、
「お、いつの間にお前らそんなに仲良くなったの?」
「森山サン!」「由孝!じゃなくて森山先輩」
後ろから森山サンがやってきた。
…てか今、みょうじ、森山サンのこと呼び捨てで呼んだよな?
「さっすが黄瀬、手が早いねー」
「そーゆーんじゃないっスよー。それより、」
「あ、森山先輩来たってことは先輩たち来るんじゃん!早く着替えなきゃ」
オレがそれについて聞こうとする前に、みょうじはそう言って女子更衣室へ入って行った。
「じゃ、オレたちも着替えるか」
「…はい」
「そー言えばさ、黄瀬ってなまえ、あ、みょうじの入部理由知ってる?」
「え、」
着替えながら森山サンが話しかけてくれた話題がちょうどタイムリーで焦る。
「いや、知らないっス」
「"全国制覇のサポートがしたい"」
「え?」
「ん、だからなまえの入部理由。まぁ、ほんとはオレが無理矢理入れたんだけどな」
「そーだったんすか?」
「まぁでも、なまえのことだから"どの部活でも"同じだろーな」
「え?」
「あ、いや、こっちの話。着替え終わったか?」
「あ、はい」
「じゃ、行くか」
結局、みょうじと森山サンの関係がなんなのかわからないうちに、聞くタイミングを逃してしまった。しかも、話し方的に事情も知ってるっぽい?
なんだか、モヤモヤしたまま部活が始まった。
ただ、みょうじの入部理由を聞いて、やりたいことが1つ見つかった。そのことは、森山サンに感謝したい。
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