「うん。黄瀬がすごいらしいことはわかった。…で、どれくらいすごいの?」
「…え」
どこかで途中まで食べてきたらしい弁当の残りを食べながら、一通りみょうじはオレの説明を聞いてくれたが、なんだかイマイチわかってくれてない。
「…みょうじって何が好きなんスか?」
「ん?高校野球とバスケットボールベアーっていうアーティスト」
「じゃあ、例えるならオレと話してるってことは、甲子園三連覇したチームのスタメンが実はバスケットボールベアーの一員で、そいつと話してるってこと…」
「は?甲子園なめんな」
いやいやなんでオレ怒られてるんスか?!
だいたい…
「そんなに甲子園好きならなんで野球部に入んなかったんスか?」
その言葉にみょうじはあからさまに動揺した。
「…黄瀬だから言うけど、……先輩に絶対言わない?」
「?、いいッスけど…」
「実は…」
「えー!本当にバスケ部に入るつもりなかったの?!」
「そーだよ」
「でも、別に先輩にバレても大丈夫なんじゃないッスか?」
「ダメダメ!」
みょうじは思いっきり首を横にふる。
「真剣じゃないって思われちゃう」
「え」
「あたしは、確かに成り行きだけど、でもバスケ部に入ってバスケ部のメンバーになったんだから、途中で投げ出したりしたくないの」
「……」
その態度を見たら、先輩たちだってわかると思うんスけどね。
「じゃあこれで、オレはみょうじの秘密を1コ知った、と」
「…え?あ、」
「わざわざ自分からありがとうッス」
「えーウザー」
「ちょ、自分から話しておいてそれはひどいッスよ」
「だって、」
みょうじがさらに文句を言おうとしたところで昼休み終了のチャイムが鳴った。
「次移動なんで早く準備しないと遅刻ッスよ」
「そーだった!」
そう言ってみょうじは慌てて自分の席へ戻っていった。
わざわざ自分から、そんな話をしてくれるなんて、少しはオレのこと信用してくれた、って自惚れても良いッスかね?
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