檸檬空 | ナノ

オレ、黄瀬涼太は、自分で言うのもなんだけど、昔から要領が良くて、大抵のことがそれなり以上に出来て、ほとんどのことが思い通りだった。

容姿、運動、恋愛、…普通悩むはずのところで悩まずに、その代わりいつもオレに付きまとっていたのは、何をしても遣り甲斐を感じられない、喪失感にも似た何かだった。


そんなオレも中2のとき、青峰っちに、バスケに出会ってから変わり始めた。

越えられない壁があることが、こんなにも辛くて苦しくて、でもそれを乗り越えようと努力することが楽しくて、嬉しくて仕方がなかった。


帝光中のバスケ部に入り、青峰っちや、黒子っち、赤司っち、紫っち、緑間っち、桃っちたちとバスケをするのが本当に幸せだった。探していたものが見付かった気がしていた。


でも、気が付いたらそんな幸せもいつの間にか崩れ始めた。

帝光中が強くなればなるほど、幸せとかそーゆーものから遠ざかって、中3の全中の頃には、バスケを始める前のあの"何か"が、また胸の奥で渦巻いていた。


帝光中は全中三連覇を決めて、オレたちも"キセキの世代"と呼ばれた始めたが、まだ、満たされない。


季節は流れ、オレは海常高校に入学し、バスケ部に入った。

また、青峰っちに会ったときのような感情が欲しくて。手に入れたはずのものをバスケで取り戻したくて。


オレは、いつになったら、満たされるんだろうか?


そんなとき、みょうじに会った。最初はしつこいファンかと思って牽制したが、オレの勘違いでキレられた。その反応が面白くて、みょうじには"絶対落として見せる"なんて、ゲームみたいなことを言った。

でも、本当のことを言うと、なんとなくみょうじにオレのこと好きになって欲しくなったからだ。
今まではどんな女の子でも、オレが好意を示せばそれなりにいい反応をくれたが、みょうじは違った。

別に普通の女の子なのに。それなのに、思い通りにならない。だから自棄になってたのかと思った。

バスケみたいに、難攻不落なゲームを楽しみたいだけだと思ってた。

だから、好意を示されたら飽きると思った。

でも、オレはみょうじに「黄瀬のこと知りたい」と言われたとき、無性に嬉しくなった。なんで嬉しかったのかは、まだわからない。

その答えが、オレが求めているものかも知れない。





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