ごちゃごちゃごちゃ | ナノ
「…ここはどこ?私は……名前!名字名前!良かったー。覚えてて…って良くない!!本当にここはどこー?」
夜明け前のシーラカンスは酸漿の灯る夢を見るか[第一話]交通事故遭遇
なんでもない普通の平日、強いて言うならレポートの提出日。あたしは一人暮らしのアパートを出て、信号を渡ろうとした時だった。
レポート作成のため、連日徹夜続きだったのがいけない。正常な判断能力を失っていたから。
あたしは、信号無視のトラックに気付かずに信号を渡ろうとした。
それに気付いたのは、不運にも、急ブレーキをかけたが間に合わなかったトラックに撥ね飛ばされた瞬間だった。
意外にも頭は冷静で、空を見る余裕まであった。青かった。雲までは気が回らなかったけど。
走馬灯を期待したけど、レポートのことしか考えられなかった。
暗転。
ここで冒頭のセリフ。ふと、気が付いたら、見覚えのない風景。ドラマとかだったら、病院の一室なんだろうけど、違う。なんか…外だ。空は薄暗い。夕方になっただけとかそんなんじゃなくて。だって、都会の住宅街に、川原のある川とかある?…待てよ…これって、かの有名な、
「三途の川…?」
よくよく見渡すと、他にも人がいる。しかし、みんな生気がない。顔をつねる。思いっきり。痛い。夢じゃ、ない。
つまり、あたしは死んでしまったらしい。
「まじかー…」
とりあえず、わけわかんないけど、他の人たちに習って、川にかかる橋を渡った。
しばらく歩くと、でかい建物が見えた。建物が近づくのに比例して見覚えのない動植物が目にはいる。空は相変わらず、暗い。
胸の中に嫌な感じが渦巻くが、死んだ後ってそういうもんなんだろうか。
建物のすぐ目の前まで来たら、建物の回りにいた人たちが近付いてきた。あ、人じゃない。角生えてる。多分、鬼だ。なんかちまっこいな。イメージと違う。
近付いてきた2人の鬼は、あたしの顔を見るなり絶句した。なんなんだよ失礼な。
「…唐瓜、どうしよう」
「俺に聞くなよ!とりあえず、鬼灯様に報告しないと」
そう言って、カラウリと呼ばれた方の鬼が先に走って建物の中に入っていった。残された方の鬼に
「ちょっと、ついて来て」
と、言われるままに、建物内に入る。
そこが、閻魔殿と知るまで、あと数分。
続く。