清志に、叩かれた頭を抑えていると、大坪くんはさらに恐ろしいことを言い出した。
「しかも、今日1年は教科書受け取りとか、体操着発注とかだけで半日だろ?」
「まさか、な」
「そのまさかだ。2、3年が授業でいない広々した体育館で半日走らされる」
想像しただけで、まさに地獄絵図。
春休みの間ずーっと憧れの秀徳バスケ部でバスケすることを楽しみにしていた新入生の、心を折るには十分過ぎる効果だ。目の前に誰も使っていないバスケのコートがあるのにバスケが出来ない。ふるい落とすという表現が、言葉の綾ではないと理解出来る。さすが、東の王者。この程度で嫌気が差す様な、生半可な気持ちの部員はいらない、ということか。
「つーか、なんで大坪はこんなこと知ってんだよ」
「あぁ、俺はスポ選だから春休みから来てた」
「あー…」
この話が噂でないことを確認した清志は「まぁ、」と、真剣な顔になる。
「受けて立とーじゃねーの」
「ああ」「おう」
それに応える、大坪くんと木村。いいねぇ、青春って感じ。
わくわくしながら、3人を見てると、大坪くんが突然、こちらを見る。
「それと、マネージャー志望のみょうじにも悲報なんだが…」
「まさか、まじでマネージャーも走るとか?」と、言うとまた清志が引っ叩く。ムカついたから、足を踏んでやった。
「いや、走りはしないんだけどな、マネージャーに先輩はいない」
「…え?」
思わず反応が遅れる。な、なんですと?
「マネージャーは去年3年だった、つまり、こないだ卒業した先輩が1人いただけだ。そのさらに前の代はいたらしいけどな」
「えぇー!!」
前途多難!!
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