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はじめまして1年生

「おーし、片付け入るかー」


宮城県立烏野高校第二体育館。普段授業で使っている第一体育館より小さく、ちょうどバレーコート一面分の広さのその場所で、明日に練習試合を控えた男子バレー部が今日の練習を終えようとしていた。

先日、やっと正式に入部することが出来た日向は、主将澤村の指示で部員全員が一斉に片付けに取り掛かることですら、新鮮で楽しくて仕方なかった。中学時代、部員が少なく先輩もいなかったという状況だったからだろう。


「田中さ、田中先輩!得点板、オレが運びます!」
「せ、先輩…!いい響きだ…!…日向!ここは先輩にどーんと任せなさい!」


初めての“先輩のいる部活”に張り切る日向に対して、“先輩と呼ばれること”に憧れていた田中がよくわからない先輩風を吹かせていると、突然日向の後ろにあったグラウンド側の入り口がバーンと大きな音を立てて開いた。


「す、すみません!遅くなりましたーっ!」


その音に思わず振り返った日向の目に飛び込んで来たのは、見覚えのない女子生徒が駆け込んでくる姿だった。
しかし、突然現れたその生徒に、田中や澤村、菅原の上級生たちは特に驚きもせず親しげに話しける。


「おー、やっと来たかー」
「おい!なまえ!もう部活終わったぞ」
「え!まじか」
「連日の欠席に加えて、遅刻とはいい度胸だなー」
「いや、えー、ちょっとですねー」
「ちょっとじゃなくて、お前、春休みの宿題一つも提出しなかったせいで、ずっと補習だったんだろ?」
「田中にきいたぞー」
「ちょ、田中!」
「いや、お前が悪いだろ!」
「宿題くらいちゃんとしなさいよー」


よくわからない状況で、日向は思わず、近くでボールの入ったカゴを運んでいた影山に尋ねるが、


「…だれ?」
「さあ?」


同じく初めて見た影山が知るはずもなく。


「あ、日向たち1年は会うの初めてか」


それに気付いた菅原が「1年、集合!」と、声をかけた。日向、影山と、モップをかけていた月島、山口がそこに集合する。


「あ、1年生?…そっか、後輩かぁ」
「にやにやするなよ。その後輩たちが引いてるぞー」
「じゃあ清水妹、自己紹介しとくべ」
「…清水、妹?」
「なまえはなぁ、何を隠そう潔子さんの妹なんだぜ!」


何故か自分のことのように自慢げな田中のその言葉に、1年の視線は清水…潔子の方と、目の前の女子生徒を見比べるように往復した。


「に、似てないですね…、あ!」
「あー、いいよいいよ。よく言われるから」


日向が思ったことを思わずそのまま口にすると、気にしないで、と笑顔を見せる。


「では、改めて。烏野高校男子バレー部2年マネージャーの清水なまえです。これからよろしくね」


「よろしくお願いします!」日向と影山が競い合うように大声で、続いて月島がボソッと、そして山口の少し緊張した声でした挨拶が、放課後の体育館に響いた。

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