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「宮地、一緒に帰る?」
「は?なんで?」
「え、だって付き合ってるんだよね、あたしたち」
「いや、そうだけどさ、」


放課後、部活が終わった時間を見計らってバスケ部の部室に寄った。理由は宮地と一緒に帰るためだ。部室の外から声をかけて、出てきた部員に宮地を呼び出してもらうと、宮地はめんどくそうな顔をしながら出てきた。この時点で、既に心は折れかかっていたが、一応準備して来たセリフで誘う。こちらをチラ見しだけでそっぽを向く宮地はだるそうに言葉を吐き出して、あたしの誘いを断った。


「お前だって彼氏がいないとヤバイから俺と付き合ってるだけだろ」
「…うん、まぁそんな感じ」
「だから、別に帰るとか恋人らしいことをさ、わざわざする必要はねぇと思うわけ」
「はぁ…」
「付き合ってる事実があれば、付き合ってるふりはいらないだろ?」
「そういうもんかな?」
「そういうもんだろ。じゃ、また明日な」


そのまま宮地は部室の奥に引っ込み、あたしは目の前で閉じられたドアを前に少しだけ立ちすくむ。
だいたい、付き合うとかなんとかは、宮地から言い出したことなのに。



「俺は女運最悪なんだ」

付き合うことになるとき、宮地はそう嘆いた
が、あたしは、宮地と付き合った女の子たちの方が男運最悪って思ってるとしか思えなかった。

宮地は、優しい笑顔で毒吐くし、バスケにストイックだから練習ばっかりしてるし、頭良いけど教えるの下手だし、すぐ人を馬鹿にするし、チャラそうに見えて一途…は良いギャップだけど、その相手は今をときめくアイドル様だし。

「まずみゆみゆのおっかけやめろって言う女は最悪」
「はぁ」
「マジで酷ぇ奴なんで、今まで集めたグッズ全部捨てろとか言うんだぜ?ありえねぇだろ」
「そっすか」

宮地にとったら、女の子たちの可愛い嫉妬は悪魔の所業なのだ。

「それに比べてみょうじはそんなこと言わないし」
「まぁね」
「俺に興味無い奴と付き合うってのが楽で良いな」
「彼女作らなきゃ良いじゃん」
「この年で彼女いないとか最悪じゃん」

あーもうこいつの語彙は最悪しかないのか。全か無かしかなのか。

「良かったね、都合のいいやつがいてさ」
「おう」

最悪なのはあたしの方だ。なんで素直に宮地が好きだから付き合ってるって言わないのか。まぁそりゃ言えば、この付かず離れずの関係が崩れるからだけど。

わかってるけど、自分が自分で情けなくなる。


別の日。


「ねぇ、やっぱりたまには一緒に帰ろうよ」
「え?」
「いくら付き合ってる事実があったって、行動見せないと怪しいじゃん。現に、あたし友達に本当に宮地と付き合ってるのかきかれるし」
「あー…、まぁ、たまにはいいか」


考え抜いた自然な誘い方、理由、上手くいけばいくほど、宮地にとってあたしなんてどうでもいい存在だと実感する。

それでも、あたしは一緒に帰れる嬉しさに、宮地にバレないようガッツポーズを決めるのだ。


裏 腹 に 世 界 は ま わ る
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