Identity | ナノ
曜日の噂話

「なぁなぁ黒子」
「なんですか?」


年も明けて新しく、1月に入って何度目かの日曜の部活後、部室で着替えている黒子に話しかけたのは、同じく着替え途中の降旗だった。ロッカーが隣なこともあって、部活後のこの着替えたりする時間、よく雑談をする。今日も、いつものどうでもいいーー明日の数学の課題が終わらないとか、今日のメニューキツかっただとかーーそんな話だと思っていた。


「黒子、誠凛の七不思議知ってる?」


しかし、降旗から出た話題は今までの話とは少しだけ毛色が違っていた。


「いえ、聞いたことありません」
「俺も全部は知らないんだけどさー…。で、黒子、明日から図書当番だろ?」
「はい、そうですけど…」


誠凛は図書委員が放課後の図書室の貸し出し等の仕事をする。あまり楽しい仕事ではなかったので、出来るだけ当番に当たる確率を減らそうと一週間交代になっている。また、始めのころは仕事に慣れていない1年は3年とペアで当番だったが、もう9ヶ月近く仕事をしてきた今では、当番は1人で行うことになっていた。その辺の事情を知っているのは黒子とともに図書委員をしている降旗ならではであったが、黒子には今の話題と図書当番の関係性がわからなかった。…なんとなく、予想は出来ていたが。


「それと七不思議になんの関係が?」
「七不思議の一つにさあるんだけど、図書室に、出るんだって。幽霊」
「はぁ…」
「ちょ、黒子、わかってるの?放課後の!図書室!一人きり!幽霊!」


よくある話だ。図書室や音楽室といった普段あまり利用しない教室は特にこの手の話題に尽きない。降旗は黒子を心配して話してくれたのだろうが、信憑性に欠ける話だった。まず、新設校の誠凛で幽霊なんて似合わなすぎる。


「なんの話だ?」
「あ、火神!きいてよ!」


ほぼ無反応の黒子に降旗が驚いていると、近くにいた火神が反応した。


「図書室の幽霊?」
「そう!でも、黒子、全然怖がらないからさー」
「…肝試しんときも、あんまり怖がってなかったよな、こいつ」
「あぁー、そうだっけ?」
「こいつなら、影が薄い同士、幽霊とも仲良く出来るんじゃねーの」
「流石に黒子でもそれは…」


「俺は幽霊とか駄目だ」と零す火神の冗談に降旗があきれていると、


「降旗くん、火神くん」
「ん?なんだ?」
「早く着替えないとカントクに怒られちゃいますよ」
「あ?って、なんでお前は一人でちゃっかり着替え終わってんだよ?!」
「ちゃっかりじゃないです。しっかりです」
「てめぇ…!」
「まぁまぁ火神!ホントに早く着替えないと!」


火神と降旗が慌てて着替えるのをぼんやり待ちながら、黒子は思わず小さな声で呟いた。



「…幽霊と、本当に友達になれますかね?」


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