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朝、教室に入るとなんだかあたしの席の周りが騒がしい。なんだなんだ?と近づくと、みんなはあたしの席に集まっていたわけじゃなくて、あたしの席の隣の菅原のところに集まっているらしい。
「おはよー、みんなどーしたの?」
「あ、なまえおはよー、菅原くん、今日が誕生日なんだって」
「えっ、」
な、なんだってー?!菅原、誕生日だと?
「そー、今日で18歳」
「お、おめでとー」
「ありがとな!」
爽やかに笑う菅原の机には、みんなから誕生日プレゼントとしてもらったお菓子やらパンやらが積んであった。今日は昼に購買行かなくていいなー、なんて菅原は本当に嬉しそうに笑ってる。
今日が誕生日だって知ってたらあたしもなんか買ってきたのに!
予鈴が鳴って、みんながぞろぞろと自分の席に戻る中、あたしは最後の望みをかけて自分の鞄をあさる。あ、昨日の放課後買ったグミ。食べかけだけどいいかなー…。
「菅原ぁ…」
「ん?」
「こんなので良かったら…誕生日おめでとう」
「え?気にしなくていいのにー。ありがとう」
そう言って菅原はグミの袋を開けて、一粒口の中に放り込んだ。
「あ、めっちゃ美味いね、コレ」
「でしょ?あたし、これすごい好きなんだよねー!甘さと酸っぱさが絶妙って感じで!」
「え、じゃあ、はい」
そう言うと菅原はあたしに今あげたグミを渡そうとしてきた。
「あ…やっぱ食べかけは嫌だよね…」
「いや、だって本当はみょうじが自分で食べたくて買ったやつだろ?それを貰うのも悪いかなーって」
「……」
「ん?どしたー?」
「菅原って、本当優しいよね…」
「ンなことないべー。あ、てかプレゼントとしてもらったもの返すってのもアレかー…」
「いや、食べかけ渡したあたしもあたしだし…」
「じゃあさ、一緒に食おうぜ」
「え?」
「俺と一緒にこのグミ食べてくれるのが誕生日プレゼントってことで」
ニカッと笑う菅原がグミの袋を開けながら差し出してくれたので、その中から一粒もらって口に入れた。甘くて酸っぱいこの味は、あたしにとって今日から今まで以上に特別な味になりそうです。
それはきっと、恋の味。