log | ナノ 「幸せになりたぁぁああい!」


不法侵入した屋上で、深く染み渡る青の下。フェンスに寄りかかりながら、グラウンドを見てたクラスメイトのみょうじがいきなり叫んだ。


「ばか、お前バレるだろ」


授業中のグラウンドがざわつくのを横目に、隣にいたなみょうじを無理矢理しゃがませて、グラウンドからの目を避ける。

と、同時に、心がサッと冷たい水がかかったように、冷える。

少なくとも俺は、ちょっと気になるみょうじと2人で、授業サボって屋上とか、青春真っ只中!って思って幸せ噛み締めてたのに。なんて。


「もっと刺激が欲しいんだよ」

「はぁ?」

「生温い人生なんて辛いだけじゃん。どうせ辛いなら、楽しみたいの」


青空を仰ぐみょうじはどこか寂しそうに言う。


世間は3年になった俺たちを受験生と認識していて。まだやりたりないこといっぱいあって。まだ将来の自分なんて描けなくて。もっともっと時間が欲しい。焦らせないで欲しい。まだ子供でいたい。好きなことだけしていたい。

やりたくないことから逃げて、滞る空気はどこか生ぬるい。でも、本当に本気になれない。

モヤモヤ溜まった何かを吐き捨てるように、みょうじは再び立ち上がり叫んだ。


「もりやまぁぁーっ!」

「おい、人の名前呼ぶなよ!バレる!」


口を塞ごうと立ち上がった俺を振り返りもせず、みょうじは続けた。


「好きだぁぁああっ!」

「はぁ?!」

「きゃー!言っちゃったー」


一人で騒ぐみょうじに置いてけぼりにされた気分だったが、問題はそこじゃない。今、なんて?


「もしかしたらさ、今の関係は崩れちゃうかも知れないけど、生温いのは好きじゃないの」


振り返って笑いながら、本当に楽しそうに笑いながら言うみょうじ。


「ダメになるとは思ってないし。あたし、こう見えて頑張り屋だから。今まで森山がトキめいたどんな女の子より、森山を夢中にさせるからね。覚悟してね」


そう、みょうじが言ってニヤッと笑った途端、グラウンドから体育教師の怒声が聞こえた。屋上にいるの誰だとか叫んでる。


「よし、森山!逃げるか!」


走り出したみょうじに置いていかれないように、俺も走り出した。にやけるのが止まらないのは、楽しいからか、嬉しいからか。

さっきまでのモヤモヤはなんだったのか、というくらい晴れやかな気持ちだった。きっと今ならなんだって出来る。

そう思って、みょうじに追いついたとき、みょうじの手を握ってみたら、面白いくらい顔が赤くなるので、思わずつられて俺まで恥ずかしくなってしまったのは、また別の話。

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