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清志は本当にバスケバカだ。



いつも話はバスケのことで、たまに違う話かと思っても、結局はバスケと関係してる。せっかくあんなにモテるのに、彼女を作ろうとしない。むしろ、そんな風に"女の子"として近寄ってくる女の子をめんどくさがって、毛嫌いしてる感じもあった。


「その点、なまえは普通にしてくれるから楽でいい」


本当は違うんだよ、幼なじみだから、ずっと一緒にいたから、いつ好きになったのかとか自分でもわからなくて、言うタイミングを逃しちゃっただけだよ、なんて言えるはずもなくて。


「まーね」


そんな曖昧な返事で濁す。でもあたしは清志がそれで満足するなら、一緒にいてくれるのなら、いつだって嘘をつく。

恋愛感情を持たない幼なじみだから、そういう条件だからこそ、隣を許されて、名前で呼びあえて、清志の笑顔が見れるのなら、あたしは自分の気持ちに蓋をする。



昼休み、学食でお昼を食べてから教室に戻ると、妙に女の子たちが窓の外を見て騒いでるな、と思って、窓際の自分の机から中庭を覗いたら、清志たちが制服のままバスケをしてた。たしか、お昼食べてるとき、バスケするって言ってたなぁ。


「そう言えばみょうじさんて、宮地くんと仲良いよね」


突然女の子の1人に話しかけられてびっくりする。この子、いつも清志のこと見てる子だ。


「んー幼なじみだからかな?」

「好きになったりとか、ないの?」


ギクッとするが、隠すのは、慣れてる。


「あー、ないない。ずっと一緒に居すぎてそういうのは、ねえ?」


ちょっとめんどくさそうに答える。すると、上手く誤魔化せたみたいで、


「なるほどー、そっか。でも、いいなー!」

「ねー!幼なじみでいいから一緒にいたーい」


と、一緒に話を聞いていた子と騒ぎだした。

"幼なじみでいいから"、か。


「あ、宮地くんシュート決まった!」

「宮地くん!かっこいー!」


その声に、だるそうに手を軽く上げて答える清志。それにまで女の子たちは「きゃー!」と歓声をあげる。

あたしは、そんな風に素直に気持ちを表せるのが羨ましかったけど、自分から甘んじた立場だし、何も言えない。


あたしと清志は別の所にいるんだなぁと、教室の窓から中庭を見ながら思う。


こうしてあたしが見てること、清志はきっと知らないんだ。


「なんかさ、宮地くんってバスケしてるときが1番輝いてるよね」

「わかるー!超かっこいーよね!」


女の子たちの言う通り、清志はバスケが全てで、それが清志で、それ以上でもそれ以下でもない。
だからあんなに真剣で、かっこいい。


太陽の光が反射して、袖を捲ったワイシャツが、眩しい。それが目に染みて涙が出そうだ。

机に伏せて顔を隠してみたけど、どっちにしろ誰も見ていない。少女漫画じゃ幼なじみは恋愛対象だけど、現実はそんなに甘くて、清志からも、清志を好きな女の子たちからも、なんとも思われてないんだから。


清志がまたシュートを決めたらしく、歓声が上がっていた。


目を閉じても白い残像が残ってる。それが、目をそらしても清志のことばっかり考えているあたしを表しているみたいで。

結局、あたしの全ては清志なのかなぁと思うと、泣きたくなった。
でも、泣けないから苦しい。



予礼のチャイムがなって、バスケをしていた男子たちがぞろぞろと帰ってきた。


「あっつー。制服のままバスケするもんじゃねぇな」


そう言って清志が隣に座った。次の授業のために準備したあたしのノートを指差して、扇いで、とか言う。


「自分の席座んなよ」

「授業まで時間あんじゃん」


あたしの気持ちも知らないで、「木村がさー、ディフェンスで」とかまたバスケの話。

バスケをする清志が好きだけど、バスケの話ばっかりする清志は、自然と距離を置かれてるみたいで、あんまり好きじゃなかった。


それでも楽しそうに話す清志を見て、あたしはほだされながら、虚しさを抱く。



清志は本当にバスケバカだった。






白いワイシャツが眩しいよ


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