with Kageyama



「まだ?」


私と飛雄は百貨店でマフラーを見ていた。
もう20分もこのフロアを行ったり来たりして、彼がクリスマスプレゼントに買ってくれるというマフラーの種類を悩んでいるのだ。


「…決まらない」
「早く。腹減った」
「大事な事だからちゃんと決めたいの!テキトーに決められたら嫌でしょ?」
「はあ…そりゃどうも」


飛雄はあまり気にしていないらしく、そんな事より練習が終わってすでに1時間経過しているので空腹が限界の様子だ。
でも、明日も朝から練習なんだし二人でクリスマスを楽しめるのは今しかない。しかもせっかくプレゼントをあげると言われているのに!


「何色が似合うかなあ?」
「好きなのにしろよ」
「でも飛雄が似合うって思ってくれるやつがいい」
「んー……これ」


彼が手に取ったのはエンジ色のタータンチェックだった。意外と正統派なデザインを選ぶんだな。


「これ?これ似合う?」
「少なくともこれが似合わないヤツは少ないと思う」
「そっちかい」
「それに」
「それに?」


飛雄はそのマフラーを私の首元に当てて、実際に着用した際のイメージを膨らませた。
そして数秒眺めてから、何かに納得したようにうんと頷いた。


「制服に合う。すみれがいつも着てるコートにもぴったり。だから毎日着けられる。だろ」


飛雄はいたって真面目、気取ってもいないしふざけてもいない。だから今の言葉が彼女である私のハートを鋭く射抜く一言だったとは気付いていない。
よって、きゅんとなって顔を赤くする私を見て不思議がる。


「なんで変顔してんだ」
「飛雄のせいです。」
「変顔しようなんて言ってないけど…?」
「ちがーう!いいもん私が分かってれば良いんだから」
「?」


今の胸キュンワードは私が心のしおりに挟んでおいて、いつか喧嘩した時とかに思い出して気持ちを鎮めるために取っておく事にする。

さて、私のプレゼントはこれで決まったわけだけど、私から彼へのプレゼントも何か探さなければならないので聞いてみた。


「飛雄は何か欲しいのある?」
「…コタツ。」
「それは家族に頼んでください。」
「…じゃあ、」


と言いながら飛雄は再び視線を上げて、目の前にならぶマフラーたちを眺めた。自分もマフラーにするつもりのようだ。
なるほど値段も同じくらいだけら後から色々揉めたりしないし、気を遣わないから良いかも知れない。


「あー…と、あった」


そして一本のマフラーを手に取った。
それはネイビーのタータンチェック、紛れもなく私に選んだエンジ色のマフラーとの色違いだ。


「これ。」
「…色違い…?」
「あ?嫌なのか」
「いや嬉しいよ!私は嬉しいけど」
「けど?」
「男の子ってそういうの…彼女と色違いとかお揃いとか…嫌じゃない?」


照れくささとか、誰かにからかわれないだろうかとか、男の子って気にするもんじゃないのだろうか。
飛雄は私の言わんとする事を理解したようだが、首を傾げた。


「彼女とだから色違いがいいんだろ」
「!?」
「さっさと買うぞ。マジ腹減った」


結局、飛雄は私が持ったエンジ色のほうもまとめて一人で会計を済ませてしまったのだった。

店員さんにタグを切り取ってもらい、すぐに使える状態にしてもらったので早速袋から中身を取り出す。


「…ありがとう。」
「ん」
「バレンタイン、何かいいお返しするね」
「んー…いや」


たった今買ったマフラーを巻きながら飛雄が唸って言った。


「その前に、全国制覇のご褒美くれ」
「!!」


そうなのだ、バレンタインだなんだという前に控えている大きなイベントがあるではないか。
彼はそれに向けて、日々練習に明け暮れているではないか。


互いに色違いのマフラーを巻き、私のマフラーから少し糸が出ているのを飛雄が取り払ってくれて、この素敵な恋人が優勝した暁にはどんな願いも叶えようと誓った。


「…わかった!なんでも言って!」
「……部屋にコタツが欲しい。」
「家族に頼んでください!」


…まあ、できるだけ、どんな願いも叶えようと誓った。


影山飛雄と、プレゼントを見に行くクリスマス