この頃、繰り返すように夢を見る。


「ん…いわちゃん、ひもちい…?」
 仰向けに寝転んで、真っ裸になっている俺の上で、べ、と大きく舌を見せながら俺の陰茎にゆっくりと舌を這わせる女。それは以前見たAVに似ていて、しかしそれよりも何倍、何百倍にもエロかわいい顔をして、そこらへんのモデルより比較にできないほど綺麗な体をした女だ。

「は…あ」

 女の問いかけには応えず、たまらず腰をくんっと突くように動かす。舐められているそれは当然女の舌から離れ、女は慌てて揺れた陰茎を咥えた。ちゅるちゅると音を出しながら溢れ出る先走りを吸う姿は痴女そのものだ。

「ふふ、おいしいよ。岩ちゃん」

 そういって、茶色の長い髪を耳にかけながら妖艶に笑う女を俺はよく知っていた。俺の幼馴染であり、老若男女問わず振り返ってしまうぐらいの美貌を持つ及川だ。何でそんなやつが恋人でもない俺の上にいて、かつ俺のちんこをしゃぶっているのか。そんな疑問はバカらしい。考えなくてもわかる。だって、これは夢だ。
 俺が知っている及川はこんなことしない。バレーが好きで、バレーしか見てなくて、いろんな男に愛想振りまいて挑発するくせに変なところで初心な及川がこんな淫らなマネなんかしない。これは俺の欲望で、純真な及川を信じてるくせに痴女の真似事をする及川に夢見てる。

「いわちゃん、見て?私のここ、岩ちゃんの舐めただけでトロトロになってるの。ね、いれていいよね?岩ちゃんのおちんぽほしいよぉ」

 恥ずかしげに、だが大胆に及川自身の指で指で広げられたピンク色のそこは、ひくひくと脈打っている。及川のいう通り、触った覚えもないのにトロトロになっているそこは今すぐにでも突き立てていいようになっていた。思わず喉を鳴らすと、及川は熱い息をもらす。

「岩ちゃん、ほしい?」

「…ほしい」

「うれしい。俺も岩ちゃんの精子ほしいよぉ」

 俺が頷くと、AV女優だって真っ青な淫靡な笑みを浮かべた及川はゆっくりと俺のちんこにそのとろとろしたものを挿れてくる。ああ、やべぇ。俺のが及川の中に…と見ているだけで、自然と俺のブツが苦しくなるのはしょうがないことだ。

「あ…あん!ん、あっ、あっ、あっ!」

 及川が啼く。体をくねらせて、全身で快感を受け止めながらも激しく上下に動かし始める。こんなやつが処女ではない。初心ではあるが生娘ではないのだ。年頃の思春期彼氏をなんだかんだ数か月のペースで変えてきたやつだ。何人の男に喰われてきたんだろう。何人の男がこんな及川を見てきたんだろう。俺の知らない及川を何人の男が知っているのだろう。わかっているのに、改めて考えさせられるとぐるぐるしたドス黒いものが自分の胸を支配する。

「あ!い、わちゃ…きもち…いいよぉ…あっ、んあっ、ひっ」

 がつがつと下から突き上げると、及川は嬉しそうに笑う。なんだかさっきから見たことがあるような光景だな、と思えば納得。先日見た、及川に似ていた女優が出演していたAVと似ているのだ。セリフ回しも腰の動きも表情も。それがただ及川に代わっただけだ。あのときは抜く用として見ていたはずなのに、結局女の喘ぎ声に萎えてやめた。それなのに、今はこんなに大きく及川を見ても興奮しているんだから俺って単純だ。

「だしてぇ!いわちゃんのせーえきびゅくびゅく、わたしのなかにだしてぇ」

「う、あ…でる…」

 及川の言葉そのままに俺は射精する。もちろん、生だ。現実でありえないことだからこそ、興奮する。及川に俺の精子を与えている快感。

「は、あ…」

 充足感を感じながら、及川の頬に触ろうとする。しかし、ぐっとまるで何かに拘束されてるように腕が持ち上がらない。あれ?と首をかしげると、目の前にいた及川はにこりと笑った。その顔はさきほどまであんあん善がっていた女とは信じられないぐらいの綺麗な笑みで、それは底意地の悪さが滲み出ていた。いつもの及川だ。

「バカだなあ、岩ちゃんは」

 バカとはなんだ、バカとは。いつものようにそいつの頭を叩こうとするが、やはり腕が動かない。夢なのに体の自由が利かない。どういうことだ?と疑問に思い、目を開けた。









「は?」

「岩ちゃん、やあっと起きたぁ」

 甘えた猫なで声のような声を出すそいつは、さきほどまで俺の上で踊っていたそいつだが、全然違う。

「おい、かわ…?」

 ご本人様である。

「岩ちゃん、及川さんは心配だよ?こんなんじゃそこらへんの肉食女子のお姉さんにすぐ食べられちゃうよ?」

 私みたいな、ね。と、ふざけてガオーと間抜けな鳴き声をあげるそいつに俺の頭はついていけていない。俺の部屋で、俺の目の前で青城のブレザーを着たまま、俺の腹に乗っかり、かつ顔はなにやら白濁のもので汚れているそいつは紛れもなく俺の幼馴染だ。どうしてこうなった。



 いやいや、思い出せ。そうだ、今日は週に一度の休みで、こいつが漫画雑誌を読みたいと俺の部屋までついてきた。最近、彼氏と別れて暇だとかなんとか嘆いていたから、少しの慰めも込めてココアを用意してやって、家から持ってきたというクッキーを摘みながらダラダラしていたらいつのまにか眠くなって…眠くなって?

「おい、これ、どういうことだ?」

「岩ちゃんはおバカさんですか?」

「こっっの、クソやろ…!」

 こいつ、俺のことおちょくってやがる。腕を振り上げようとしたらまたしても拘束感。その上、上にまとめられている気がすると、視線を頭の方へとあげる。俺の腕が一つにまとめられてタオルを挟みながら縄でぐるぐる巻きにされていた。さらにそれが、ベッドヘッドの柵に縄でつなげられ、固定されている。

「は?…は?」

「これもそれも、少し考えればわかるじゃん。岩ちゃんは今から童貞卒業するんだよー?」

「は?」

 どうていそつぎょう?
 咄嗟に漢字変換ができなく、意味がわからなかったが、すぐにそれも変換されてしまい、頭が真っ白になった。何一つ意味が分からない。誰かわかりやすく俺に簡潔に教えてくれ。いや、簡潔じゃなくてもいい。とりあえず、なんでこいつが俺の上にのって、(多分、いや絶対俺の)精液を顔につけて、童貞卒業させるとか言い出すのか教えてほしい。

「こんな美人とスル機会なんて滅多にない上に、初めての相手がみんなのあこがれの及川さんだなんて岩ちゃんは幸せ者だよー?」

「意味わかんねぇよ!!んなアホなこと言ってねぇで、早くほどきやがれ!!」

「意味はわかるでしょう?及川さんのここに岩ちゃんのを挿れるのでーす」

 及川と話せば話すほど疑問が増える一方だというのに、あいつはとどめを刺すように、ぺろりとスカートをめくる。その中には、少し毛が生え、どのAV女優よりも綺麗な女の性器。完ぺきに意味が分からない。
 パンツどこにやったんだよ、クソ川!!女の恥じらいを持てよ!ってか、本当にこれ奪われちまうのか!?及川に?及川に!?
 ぎしぎしとベッドのスプリング音と縄の音がうるさい。それだけ俺が必死ということだ。しかし、現状は変わらない。

「岩ちゃん、そんな暴れないで。大丈夫。岩ちゃんはじっとしてるだけで、気持ちよくなれるんだよ?」

「うるっせえ!気持ちよくなるとかならないとかじゃねぇだろ!」

「そう言っときながら、岩ちゃんのここは準備万端だよ?」

「っ!」

 ゆるりと俺の息子を撫でられると、反論ができない。どれだけ混乱していても好きな女の痴態を見せられて、反応しない男はいない。いや、でもしかし、それとこれとは話が別だ。どうなったら先日彼氏と別れたばかりらしい幼馴染に俺が童貞を奪われることになるんだ。意味わからん!こいつ、宇宙人か!

「かーわいい。岩ちゃん。やっぱり誰にもとられたくないなぁ」

 焦っている俺に及川はうっとりと俺の頬を撫でてくる。それを睨みつけようとするが、それすらできなくなってしまう。及川の声の調子は笑っていて、顔も笑っているはずなのに、その顔はどこか泣いてるような顔だった。

「お願い、岩ちゃん。岩ちゃんの初めて、私にちょうだい?」

 泣きそうな顔をしながらも、やることはやるしい。くちゅりと水音が聞こえる。温かい粘膜が先端から包み込み始めた。これはさきほどまで見てた夢じゃない。現実だ。リアルだ。起きたら、濡れてた下着がお出迎えとかでもない。
 こいつがなんでここまで必死に俺を求めるのかわからない。この起きてからの間、混乱しながら考えても答えにはたどり着かなかった。
 俺の初めてとかべつにいらないだろ。ここまで幼馴染に執着してるとか周りがきいたらひくぞ。でも、ここまで必死なこいつを見たら、もうほどけとかやめろとか言えない。求められれば捧げるだけだ。及川のワガママなんて今更慣れっこで、これもワガママの一つだと思えばいい。一つ文句を言うのなら、俺だって男なので主導権は俺が握りたかった。

「ありがとう、岩ちゃん」

 抵抗をあきらめたのがわかったのだろう。及川は嬉しそうに顔を緩めて、俺の頬に唇を落とす。それが気に食わなく、俺から顔を離そうとする及川に首を伸ばして唇を奪ってやった。

「初めてを奪うならこんぐらいしろ」

「うへへ…岩ちゃんは相変わらず男前だね」

 お前にしたら何回もしたことがあるものかもしれないが、彼女がいたことがない俺にとっては初めてだ。もってけドロボーのような気分である。しかし、あまりにも嬉しそうに及川が笑うものだから、それを口にするのは憚れた。及川はもう一回俺に(今度は唇に)キスをして、中途半端に埋めて止めていたそれを再開する。



「ん…ぐ…」

 絶景だ。夢みたいだ。本当にこいつの中に俺のが入ってる。もしかしたら、これも夢の続きかもしれない。そう思って、及川の顔を見上げると、

「…え?」

 瞬きをすればこぼれそうなほど潤んだ目。何かを耐えるように噛みしめている唇。寄せられた眉は、どこからどうとっても快楽からじゃない。

「おいかわ?」

 何かがおかしい。何か間違ってないか。何か見落としてないか。こいつをまた傷つけているのではないか。そう思って、声をかけるが、及川は挿入することに必死で何も聞いてない。もう一度声をかけようとしたとき、接合部分から何かが垂れるのを感じて、そこに視線を移す。それは夢で見た及川が感じている証拠ではない。





 痛みの象徴の赤だ。





「お、まえ…」

 お前こそ初めてだったのか。彼氏がいたからてっきりもう経験済みなんかと。いや、なんでそんなやつが俺の初めてを奪うとかいってるんだ。おかしいだろ。なんだそれ。ってか、いてぇんだろ。なに、我慢してんだ。なんで我慢してんだ。




 違う。







 こんなこと女にやらせて男失格だろう!!?





 ブチィッ












 好き。好きよ、岩ちゃん。



 私が好きになるのは過去にも未来にもきっと岩ちゃんだけだ。いい人はいるかもしれないけれど、これほど私をわかってくれて、これほど私の心を動かす人はきっともういない。こんな死ぬほど愛している人は岩ちゃんだけだよ。
 だから、ねぇ、岩ちゃんも私だけを見て。他の女の子なんか見ないでよ。ほらほら、私ほかの男の子といるんだから、もっと怒ってよ。昔みたいにとおるは俺のもんだとか言ってよ。

 でも、どれだけ岩ちゃんにアプローチしても見ないなら、しょうがないよね。無理やりにでも私を視界に入れさせてあげよう。
 と思って、睡眠薬を盛ったクッキーを岩ちゃんに食べさせて、動けないようにして、その間に童貞を奪ってあげようとした(その間にちょっと味見と岩ちゃんのも可愛がってあげた)のに…責任感がある岩ちゃんは生で挿入したら絶対私のモノにできると思っていたのに…

「い、わちゃ…」

「うるせぇ、黙れ。俺は怒ってんだよ、クソ川」

 岩ちゃんの下にはちぎれたロープ。ねぇ、それ安物だけど、そんな簡単には千切れないはずだよ?どんだけバカ力なの?本当にゴリラじゃん。ゴリラ。ゴリラ泉。だから、女の子にモテないんだ。……嘘、本当はモテるけど私が牽制してるからモテないように見えるだけ。最悪。最悪。岩ちゃんの魅力なんて私だけが知ってればいいのに。

 違う。そうじゃない。…そうじゃない。岩ちゃんが自由になってしまった。

 腹筋の力で起き上がった岩ちゃんは私の手を握る。その勢いのまま、頭突きをされると目をつむる。しかし、衝撃は何もない。その代り、ちょんと唇に触れられる柔らかい感触。


「え…?」

「仕切り直しだ、このボケぇ」

 目を開けると真っ赤になった、だけど真剣な目をした男前。仕切り直し?縛られてないのに?あまりうまく頭が動いてくれない。頭突きをされてないのに、頭突きをされた気分だ。だって、さっき岩ちゃん私にキスした。

「岩ちゃん、私を抱いてくれるの?」

「惚れた女にここまでやらせて、しない男なんているかよ」


「ほ…!」


 さっきは頭が回らないって感じてたくせに、この都合のいい脳みそは岩ちゃんの言葉を急激に吸収してしまって、一気に赤くなってしまう。

「岩ちゃん、私のこと好きなの!?」

「あ?」

「なんで今そんな凶悪な顔するの!?」

「んな当たり前のこと聞くからだよ。クソ川」

「あ、当たり前なんだ…」

「おう」

 そうなんだ。知らなかった。岩ちゃん、私のこと大好きなんだ。それも当たり前なんだ。…ダメ、死にそう。心臓が破裂して死にそう。もちろん死因は岩ちゃんによる悶え死だ。

「わ、私も岩ちゃんのこと…」

「もう黙れ」

 沸騰した頭の中、私も言おうとしたのにこの鈍感王は何も気づかず、さっさと行為の続きをしようと私を押し倒してくる。さきほどと真逆の光景は夢の中の光景と一緒で、ああ、今目が覚めたら、私は自分を殺すかもしれない。

「い、言わせてよぉ」

「んだよ、もう限界なんだよ」

「限界でも言わせて」

 岩ちゃんが私に欲情してる。うれしい。興奮しちゃう。鼻血でそう。でも、この溢れそうな胸のうちも言ってしまいたい。少しでも言葉にして吐き出しとかないと、本当に心臓がこわれそうなのだ。

「なんだよ」

「好き」

「あん?」

「私も岩ちゃんのこと好き。大好き。襲っちゃうくらい好き。…知ってるかもしれないけど」

「ははっ、それは知らなかった」

 ちょっとビックリした顔をした岩ちゃんは、にっかりと綺麗な笑みを浮かべてとびっきり甘い口づけを落としてくれた。









「ん、ん…いわちゃ…も、いいから」

「だめにきまってんだろ、さっき血なんかながしやがって」

「で、でも…ひんっ!」

 告白大会が終わって、てっきりそのまま挿入かと思えば、岩ちゃんはそうじゃなかったみたいだ。押し倒されて、足を広げさせられて、抵抗する私に(見せるのは抵抗ない…というか捨て身の覚悟だったから恥も何もなかったけれど、改めて自分の秘めたる部分を見られると死にそうになった)、岩ちゃんはだまれの一言を吐いて、ずっと私の股の間に顔を埋めている。舐めて、吸って、指を入れて、ぐちゃぐちゃにき回して、(岩ちゃんには珍しいぐらい)ねっちこい動きでずっと弄られている。

「ひっ、あ、だめ…いわちゃ…あ!んんん…!」

 敏感な部分を勢いよく吸われ、腰が跳ねる。さきほどからこればかりだ。鼻が陰核を押し潰すぐらい奥まで舌を差し入れられ、じゅるじゅると音がなるほどすすられたと思えば、忘れていたかのように陰核へと刺激を与えられる。手は絶えず、広げるようにぐちぐちと弄られて、一方的な快楽に頭がおかしくなりそうだ。どうにか離れさせようと、岩ちゃんの頭を掴むけれど、力が入らなくて、どうしても撫でてしまうようになってしまう。そうして、岩ちゃんの頭を抱え込むように足を丸めてしまうと、岩ちゃんは太ももの力を緩めろというように太ももの付け根に吸い付いた。

「あ、ん…」

「はあ……及川、及川」

 たまらないというように、切羽詰った岩ちゃんの声にきゅんきゅんきてしまう。岩ちゃんが私を求めてる。早く挿れたいのに我慢して、獣のように私のを舐めて解そうとしてる。それだけでぞくぞくして、興奮が最高潮になってしまう。岩ちゃん、だめ。そんなギラギラした目で見ないで。あ、あ、あ…そんな目で見られたら

「や、いく…ま、た…いっちゃ…やっ、あ、あ、あああああっ!」

 ガクガクと体がいうことをきいてくれない。気持ちいい。自慰とは全然違う。岩ちゃんが触られてるだけで、何回でも達してしまう。気持ちよくなってしまう。際限なく彼を感じてしまう。彼が触れるだけで電流が流れて、絶頂に達して、こぷりこぷりと愛液を垂れ流してしまう。ああ、なんてはしたない女だ。けれど、岩ちゃんはそんな私に興奮してくれてるのか、まるでもっと出せと言うようにじゅううって音が出るぐらい陰核を吸われた。絶頂を達したばかりの私にとってはかなりつらい。

「いっ、あ…ひぃっ!い、いわちゃ…やぁあああっ、だめ、だめぇ…」

「だめじゃねぇだろ…はっ、まだまだ出てきやがる」

「いいの…いいからぁ…だめなのぉ…!ぁ、あー、あっ!いわちゃ…わかってぇ…」

「きもちいーんだったらいいだろ」

「は…そ、そういうことじゃ…」

 岩ちゃんは顔を上げて、私を見つめる。ああ、ダメ。挿れたままの岩ちゃんの指を締め付けてしまう。

「じゃあ、なんだよ」

「いわ、ちゃんの…ほしい、よ…」

 たしかに痛いよりかは気持ちいいほうがいいけど。でも、気持ちよすぎるのもいけない。ずっと奥が疼いてる。心も体も早く奪ってほしいと強請っている。

「だから、血が出るところとか見たくねぇって言ってんだろ」

「も、だいじょーぶだよ…だって、ほら…も、岩ちゃんの唾なのか、私のなのかわかんないくらいドロドロだよ?」

 岩ちゃん、指挿れてるからわかるでしょう?と首をかしげて、誘ってみる。もう羞恥心とか関係ない。だって、焦らされすぎて、私の腰は勝手にゆれてしまう。

「お前は…本当に…」

 岩ちゃんは一瞬目を開いたが、すぐにやれやれとため息を吐く。我慢のきかない子供を対応しているみたいで、なんだかいやだ。ここにいるのは子供じゃないんだよ。子供かもしれないけど、今から岩ちゃんに大人にしてもらう子供なんだよ?

「いわちゃん…早く」

「痛いって言っても知らねーぞ」

「痛くてもいい…岩ちゃんからもらうものならなんだって嬉しいもん」

 それに好きな人が私の初めてを奪ってもらうんだよ。これ以上の女の幸福はないんじゃないかなぁ?

「……グズ、クソ、ボケ」

「な、なんでいきなり暴言…!」

「かわいい」

「え?」

 き、聞きなれない単語が…

 思わず岩ちゃんを見つめるが、岩ちゃんは私の中から指を抜いて早々と自分の学習机に向かう。なんだなんだと力の入らない体をなんとか起き上がらすと、岩ちゃんは引き出しの中から何かを取り出した。

「い、いわちゃん、ゴム持ってたの?」

 童貞だから持ってないと思ってたのに。嗜みで持つような人でもないと思ってたのに。
 そんな私の視線に気づいたのか、岩ちゃんは見んなと私に背を向けながら、びっと包装を破いた。

「…もらった」

「い、いつ!?」

 誰に!?男友だちだったらギリセーフだけど、綺麗なお姉さんにもらったとかいったらそのゴム、すぐ取っ払ってやる。

「中学校の時。保健体育で男子はみんな持っておけって…だから、この一個しかない」

「生でもいいんだよ?」

 良かったと思った瞬間、岩ちゃんに暗に一回しかしないと言われて、とっさに二回目は生でもいいと言う。今日はする前にピルを飲んできた。わざわざ産婦人科に行ってまで、だ。岩ちゃんは一瞬止まったが、渋い顔をして振り返った。

「いや、ダメだろ」

「いいよ、岩ちゃんなら」

 他の男なら絶対嫌だけど。いや、ゴムをつけたって御免だ。私の中も外も岩ちゃん専用だ。しかし、昭和のガンコ親父のような岩ちゃんは厳しい顔をしたまま頭を縦に振らない。

「ダメだ。そういうのは結婚してからだ」

「け…!!?」

 話が飛躍してない!?してないか!そうだよね!責任取るってことは結婚するってことだもんね!それが私の当初の目的でもあったんだし!
 頬がばばばっと熱くなる。それを訝しげにみながら、ゴムの装着を終えた岩ちゃんが近づいてきた。全裸で勃起しながら近づいてくるのはなかなかにシュールだ。でも、岩ちゃんだからか、ドキドキする。変態か、こんちくしょう。

「んだよ。結婚するだろ」

「し、します…」

「ん」

 満足げにうなずく岩ちゃんに、やっぱり岩ちゃんには敵わないと改めて思う。告白した日に初セックス、そしてプロポーズまでされた。一日が濃すぎる。でも、うれしい。


 岩ちゃんはとんっと私の肩を押す。それだけで私の体は布団の上だ。

「もう、いいか」

「うん…」

 目を合わせて、一回キス。ちょっとだけ離して、今度は大人のキス。

「ん、ん…」

 初めてのキスで舌技とか全然だけど、気持ちいい。こういうのは気持ちなのかもと思っていると、すりっと恥丘に硬くて熱いものが擦り付けられる。岩ちゃんのものだ。さきほどの痛みを思い出し、体が強張りそうだ。それに気づいたのか、岩ちゃんはこっちに集中しろとばかりにキスを激しくしてきた。

 岩ちゃん、優しすぎて涙が出そうだよ。

 そのあいだにそれがゆっくりと侵入してくる。

「ん…ん、くぅ…は…」

「いてぇか?」

「ん…でも、さっきよりだいぶマシ」

 さきほどの破瓜で引き攣るような痛みはある。けれど、それよりも幸福感やら充足感がたまらない。今、私と岩ちゃんは一つになっている。

「当たり前だ、ボケ。さっき無理やり挿れようとしやがって」

「…だって、とられたくなかったんだもん」

「はあ?」

 幸せな気持ちになっていたのに、岩ちゃんはいとも簡単に私をドン底に落とす。あのときのことを思い出して、私はついつい岩ちゃんをにらんでしまう。

「岩ちゃん…一年生の子に告白されてたじゃん」

 それも可愛いで有名という注釈つきだ。

「はあ?あれは告白っつーか…」

「告白だよ!岩泉さんって彼女いないんですか?とかめちゃくちゃ狙われてるじゃん!」

「狙われてねーよ」

「及川さんとは付き合ってないんですよね?って言われてたくせに?」

「盗み聞きかよ…」

「岩ちゃんがダメなんじゃないか!にっこり微笑みかけられてフラフラついていってさ、女の子が一人で男を呼び止めたらふつうは気づくよ!?」

 それに加え、私をその場に留めといて行くのだからなおさら性質が悪い。そんなの見に行くに決まってるじゃないか!

「わかんねーよ。お前じゃないんだから」

「私と一緒にいたらわかるでしょう!?」

 私がどれだけ岩ちゃんと一緒にいるときに呼び止められて、告白されているか見ているでしょう!?

「お前だってよく俺を呼び止めて、どっか連れてくじゃねーか」

「そこらへんの女の子と私を一緒にしないで!」

「一緒にしてねーよ」

「一緒にしてるじゃん!だから、不安になったんだよ!簡単に女の子について行って、私なんて眼中ないような顔して。そんな態度されたら、いつか私以上に大切な人が出来るかもって思って!それならいっそ初めて奪って既成事実の一つや二つ作って、岩ちゃんを縛ってやるって…!」

 その瞬間、中に違和感を覚えた。むくむくと何かが大きくなる。何か、ではない。岩ちゃんの中心だ。岩ちゃんの気持ちの代弁者だ。

「…はあ」

「い、いわちゃ…」

 ため息を吐いてる岩ちゃんにさきほどの怒りがどこかに行く。なんだこの人。態度と体あってない。

「お前がめんどくせーのはわかった」

「セリフと体が一致してないよ?」

「ああ?」

「だって、めんどくせーって言いながら…」

 大きくなってるよ?岩ちゃん、さっきの私の言葉で興奮したの?既成事実作ろうとした私にムラムラきちゃったの?

「一致してるだろうが」

「はへ?」

 何が?どれが?
 いまだ、岩ちゃんの息子は元気なままだ。それはもうギンギンに。萎える様子がまったくない。つまり、私のこんな部分も好きだってこと?

「いわちゃ…!」

「もう、いい。限界だ。動くぞ」

「あ、ちょ…まっ!!」

 岩ちゃんに聞こうと思えば、その前にガツンっと思いっきり腰を打ち付けられる。衝撃と少しの痛みで息が止まってしまう。そして、そのまま私を抱きしめて動き出す。
 一応、私処女なんだよ!さっきまでの献身、どこいった!

「は、いわちゃ…い、きなり…と、ばし、すぎ…んっ、ん…」

「すまん…お前ん中熱くて…とまんね…」

 視線を横にずらせば、真っ赤の耳で腰をふってる岩ちゃん。それでわかってしまう。きっとそれも本音なんだろうけど、さっきの発言できっと照れてる。さっきまで素面だったくせに、やさしさ見せてたくせに、照れたら乱暴になっちゃうとかかわいすぎ。好き、岩ちゃん、好き。自然と私の腕と足が岩ちゃんの体に絡みつく。


「んぐ、ん、ん、はっ…」

「いたいか?」

「だい、じょうぶ…」

 本音をいったら全然気持ちよくない。でも、女の子の初めてはこんなものだと聞くし、岩ちゃんが顔を真っ赤にして、必死に私を求めてくれてるだけで、心が満足する。痛いけれど、終わってほしくない。もっともっとほしいと思うのは、おかしいことなのかな?

「くそっ…」

 岩ちゃんは小さく舌打ちをすると、体を起き上がらす。腰の動きは止まってないから、違う体位をするのかと思ったら、岩ちゃんは自分の指を私の口の中に突っ込んだ。

「ふぐっ!?」

「いいから、なめろ」

 横暴な岩ちゃんの発言に目を白黒させる。けれど、岩ちゃんがいうならと必死に指に舌を這わした。岩ちゃん、そういう性癖だったっけ?と思っても、岩ちゃんの性癖なんかわかるはずもない。おっぱい小さい子より断然でっかいほうが好きってことは知ってるけど。

「んぐ、むぅ…は…」

 岩ちゃんの指をかむわけにはいかなくて必死に口を開けたままに舐めているが、自然と唾液があふれ出てしまう。はしたないと思って、喉だけを使って飲み込もうと試みるけれど、岩ちゃんが腰を突き上げてくるせいで、変な場所に唾液が入ってしまった。

「うっ、かはっ、はっ」

「わるい、ちょっと突っ込みすぎたか?」

 慌てて岩ちゃんの指が口から消える。飲み込もうとした唾液も出てしまって、台無しだ。

「む、りやり、ケホッ…唾のみこもうとしただけだから大丈夫…」

「ボケ」

 これほど甘ったるい暴言があるのかと思うぐらい、とろけるようなボケをもらった私は暴言を吐かれたくせに笑ってしまう。岩ちゃんは口端についたまるで盛りのついた犬のように垂れてしまった唾液を舐めてくれた。それだけではしたないとか思ってた心がどこかにいく。そのまま流れるように唇が重ね合わさった。

「ふ、ん……ん!?」

「は、どうだよ」

「や、そこは…あ、あ、あうっ」

 さきほどまでなめさせられた指はいつのまにか結合部に向かっていて、キスに夢中だった私はびっくりしてしまう。結合部の少し上。さきほどまで散々舐められて、肥大していたそこを今度は指で攻められる。

「きもちいーだろ?」

 にやりと岩ちゃんが雄臭い笑みで笑う。胸をぐっと鷲掴みされてしまう。そんな表情、どこに隠してたの。

「んあ、あっ――――はっ、ふ…あああっ!」

 乱暴と言えるほど捏ね繰り回すように刺激を与えられる。そのときも絶えず、腰を動かされるものだから、私はもうパニックになってしまう。

「や、やだぁ…!いわちゃ…やめ…ひんっ、んんん!」

「こら、逃げんなって」

 わけがわからなくなって、必死にそこから逃げようとするが、岩ちゃんの手が許してくれない。片手で腰をつかみながら、もう片方の手は絶えず陰核をすり潰してくる。

「だって…あっ、あ、あ…?」

「ど、した…?」

「ひっ、らめ…!いっしょ、だめぇ…」

 強すぎる快感にとうとう脳がバカになってしまった。中も気持ちよくなってる。岩ちゃんが奥にこつんっと赤ちゃんを育てる場所にキスをするたび、ぞくぞくしてしまう。はしたない女の欲があふれ出て、岩ちゃんの男根の形がありありとわかってしまうぐらい締め付けてしまう。

「く…しめすぎだ、ボケ」

「らって…ひんんん…!」

 気持ちいい。私、中で気持ちよくなっちゃってる。岩ちゃんが奥をつくたびきゅうんって苦しくなって、抜け出すたびぞくぞくと電流が流れちゃう。だめ、これクセになっちゃう。

「く、そ…」

「あああああっ!」

 腰を抱え上げられ、膝が肩までくっつきそうになるまで押し付けられる。抵抗も逃げも許さない体制でがつがつと突き上げられたら、我慢という我慢もできなくなってしまう。

「いく、いく、だめ…いっちゃ…」

「いけよ。ほら、いっちまえ」

 もう陰核は触れられてすらいない。ただのピストン運動だけだ。でも、気持ちいい。真っ白になる。イっちゃう。

「ふっ、ん、んあ、あっ―――――っ!―――――っぁ!」

「う、あ…」

 全身が言うことを聞かなくなり、がくがくと震える。もう何がなんだかわからない。そのくせ、私の中は敏感に岩ちゃんがびくびくと震えながら子種を吐いたのがわかった。

「い、わちゃ…」

「はぁ、及川…」

 疲れて一息つきたいはずなのに、岩ちゃんと目が合ったらキスをしてしまう。まだ出し終わってない岩ちゃんが腰をゆすって、まるで吐き出したものを擦り付けるように奥の奥を突きあげる。私の中も逃がさないというように締め付けている。
 顔を離すと、岩ちゃんが幸せそうに笑っいた。その瞳の中は涙と涎と汗でドロドロで、淫らな女がそこにいた。

 ああ、だめ…夢の中じゃこんな顔じゃなかったのに。こんな夢中になるとは思ってなかったのに。
 夢の中の彼だってもっと真っ赤な顔をしていたのに。こんな男らしい顔なんてしていなかったのに。


 これからの夢はもっと激しくなりそうで、私は少しだけ中の彼を締め付けてしまった。



END


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