帝光紫赤



 帝光時代、赤司は紫原と付き合うことになりました。しかし、いくら優秀な成績を修めていても、帝王学を学んでいた赤司だとしても、男同士の付き合い方までは知りませんでした。性教育の授業はもちろんありましたが、密な男女関係なんてものは温室育ち上にテレビを普段見ない赤司にとって未知の領域でした。
 他の情報収集源としたら、赤司の年代の男子ならば下ネタトークでしょうが、そこはさすがの赤司です。眉目秀麗、成績優秀、部活では1年から副主将を務めていた人物。そんな相手に下ネタを振れるような猛者は過去現在、いやこの先も現れないでしょう。
 赤司もその事実に薄々勘付いているので、人並みに興味はあるのですが気軽にその輪に入ることに躊躇を覚えてしまいます。その上、最も中学で共に過ごしている緑間は真面目な人物で、(赤司はそこが気に入っているのですが、)話す内容としたら、部活の話が中心です。下ネタのしの字も出たことがありません。仮に赤司がそんな話題を振ったとしたら、緑間はきっと驚きで固まるか、くだらないと一蹴するでしょう。
 その結果、性に関しては無知のままで育ってきてしまった赤司は、なんとか情報を得ようと思い、自宅のパソコンで勉強しようと考えました。書物に頼ろうとしましたが、どの分類からとればいいのかがわからなかったからです。

 さっそく調べ始めた赤司ですが、情報は膨大にあり、かつ下半身事情まで及んでいました。初めは少し読むことを躊躇いましたが、いずれ紫原とそういう関係になるのだろうと思えば、進んでそれを読み始めていました。
 まず、最初に男同士の情事は女性と違い受け入れる生殖器がないため、肛門を使って性行為をすると知り、驚愕します。その上、排泄器官を使うため、いろいろと準備をしなければ大惨事になるとも書かれていました。
 それらを一通り読み終えて、赤司は一度脳内でシミュレーションしました。

 結果、大惨事になるものしか考えられませんでした。

 紫原ののことです。きっと暴走します。さすがの紫原も最初は言うことも聞き、懸命にしてくれるでしょう。赤司がつらそうにしていたら、もしかしたら優しい言葉や甘い言葉を囁いてくれるかもしれません。しかし、紫原の理性がぷちんと切れてしまえば、途中で投げ出されてしまい、好き勝手に身体を蹂躙されるのがオチです。

 2人は付き合ってまだ一週間しか経っていませんが、もうディープキスまで進んでいます。念願の両思いなのです。欲望のままに、求められるままに赤司は紫原を受け入れてきました。
 そのときの紫原の暴走は凄まじいものです。何回か赤司の腰が砕けてしまったぐらいです。キスでこの様子なら、性行為となったらもっとひどいことになるでしょう。

 性行為で死にそうになるのは絶対にイヤだ!

 まだ性行為を行いたいと直接的なアプローチを紫原から受けてませんが、いつ紫原が赤司を誘うかはわかりません。断るという選択肢もあるのですが、紫原を骨の髄まで愛してしまっている赤司にとっては、断るのは心苦しく、それならばせめて何か暴走を止める対策を立てねばと考えているのです。
 そんな赤司に、情報を与えたのもインターネットです。そこには、毎日少しずつ肛門を拡張していけば、性行為を比較的にスムーズに行うことができ、多少無茶な挿入をしたとしても血をみることもないらしいのです。自分一人だけで解決でき、かつお互い満足できる情報に、さっそく赤司は通販でローションや拡張器などを購入しました。


 それから数日後。赤司のもとにそれらが届いた時、赤司は何でこんなことをしているのだろうと、なんだか泣きたい気分になりました。
 赤司だって男なのです。好きな人のあんな顔やこんな顔を見たいし、可愛がってやりたいのです。欲をいえば、自分が挿入する立場に回ってもいいのです。紫原が快楽でとろとろになっている顔を上から眺めるのも楽しい気がします。
 しかし、紫原は決してネコになることはないでしょう。付き合ってからというもの、紫原は赤司によく”かわいい”と言いますし、キスをしてくる紫原の顔はまだ少年と呼ばれる年のくせに、少年からかけ離れたオスの顔をしているのです。それを間近に見聞きし続けた赤司は、すっかりその色気にやられてしまい、インターネットで調べた際も自分がネコ側として想像していたぐらいです。
 仮にもし、それでも紫原にネコをやってほしいと思ったとしても、赤司が紫原のおねだりに弱いと知っていますので、それを行使してくるでしょう。(ディープキスのときもそうでした。)おねだりをされてしまえば、赤司もきっと渋い顔をしながらも首を縦に振ってしまいます。そんな結果がわかっっているのに、わざわざ紫原にネコをやってほしいなどと言えるわけがありません。
 しかし、たとえ紫原が言うことを聞いたとしても未経験者との情事で、紫原の身体(主に肛門)を傷つけるわけにはいきません。バスケに影響を与えるわけにはいかないのです。惚れた弱み9割、主将としての部員の身体の労り1割で赤司は、ローションを片手に自分がネコになることを再度決心しました。

 それからというもの、説明書やネットを何度も読み、紫原を受け入れるための練習と称した自慰行為が始まりました。しかし、数ヶ月ほど前に精通を終え、やっと自慰が慣れてきた赤司にとって後ろの刺激、つまり前立腺の快感はつらいものです。どんなことでも冷静に対処をする頭も、その快楽の前では無力でどろどろに溶かされてしまうのです。
 約1週間、赤司は夜な夜な努力を重ねました。拡張の結果だけをいえば上々です。最初は指一本挿れるだけでも鈍い痛みがあったのですが、今はローションを絡ませればすんなりと指一本を挿れることができます。

 しかし、新たなる問題が出来ました。

 赤司はいつしか前立腺の刺激にハマってしまい、気がつけば拡張行為というより、後ろで自慰を行っている状態になってしまったのです。もっとと知らずうちに、指を増やしていたことに気づいたときは死にたくなったほどです。
 快楽に勝てず、むしろ数を重ねるほどさらに悪化してしまい、赤司は快楽に支配されてしまう恐怖に恐れ、とうとう挫折してしまいました。
 何にでも勝利をしてきた赤司にとっては屈辱以外なんでもありません。しかし、仕方のないことです。こればかりは優秀な頭がどう考えても真っ白にされてしまうのですから。


「……え?赤ちん今なんて言ったの?」

 その次の日、赤司は紫原を呼び出しました。これは2人の間に関わる重要な問題です。愛は性だけで成り立っているわけではありませんが、それでも性について興味がある年代の2人にとっては由々しき事態なのです。

「だから、お前との今後を考え、練習をしてみたが、お前との性行為は出来そうにないんだ」

 何度も言わせるなと赤司が羞恥を隠すために睨みあげようとすると、息が止まりました。赤司よりも何十倍も怒気を放っている紫原が赤司を睨んでいるのです。

「それって他のやつとセックスしたってこと?」

「は?」

「なにそれ。練習相手と相性でも良かったの?その人以外とは無理とか?それとも死ぬほど痛い思いした?ってーか、なに?堂々と浮気発言?」

 紫原の言葉は詰問のように鋭く、赤司を圧倒します。最初は呆然としていた赤司でしたが、思いも寄らない”浮気”という単語に我に返ります。

「違うに決まっているだろ!あんなこと紫原以外にできない!」

 紫原の勘違いに、赤司はいつもの冷静さも忘れ、大きな声で否定しました。それもそうです。そもそも赤司がこれらを行おうとしたのは、紫原との今後を考えた結果です。赤司も言い方は少し悪かったと思いますが、紫原の言い分はまるで赤司がただの男好きだと言われているような気分です。
 赤司は遠回しにネットで調べ、下準備をしたのだが、挫折した経緯を話しました。最初は赤司を疑うように見ていた紫原も、仄かに赤に染まる赤司の頬や赤司にしては珍しく恥ずかしげに逸らされる視線に、猜疑心を解いていきます。そして、どんどんと口角を上げていくのです。
 全てを話し終えて、だから…と続けようとした赤司に、いきなり紫原が手を握りました。

「え?」

「疑ってごめんねー、赤ちん。まさか赤ちんがそこまで考えてくれてるなんて思ってなかったし〜!超嬉しい」

 顔をあげれば、紫原の満面の笑顔。その笑顔に赤司は心拍数が急激に上がるのがわかります。じわじわと顔全体に熱が帯び、赤司はたまらず紫原から視線を外しました。
 だから、気づかなかったのです。紫原の瞳の奥の熱に、今にも溢れ出してしまいそうなほどの情欲の色で赤司の全身を舐めるように見ていたことを。

「じゃあさー、一緒に練習しようよ」

「は?」

 紫原の突然の提案に赤司は間抜けな声を出すしかありません。しかし、紫原はとくに気にした様子もなく、のんのんと続けて提案します。

「1人でやるからダメなんだし。協力しあって気持ちよくなろーよ。オレも赤ちんも気持ちいいし、オレが気持ちよくなってるところ見たら、赤ちんも慣れてくるって」

「いや、紫原…オレは…」

 快楽に流されて無様な姿を見せるのがイヤなんだ。慣れる、慣れないではなくプライドの問題だと言おうとしたのですが、それを封じ込めるように握られていた手が恋人つなぎのように緩く指先を絡め取られます。そして、キスができそうなほどの距離まで紫原が顔を近づけてきました。

「ね、赤ちん。お願い」

「う…」

 おねだりです。捨てられた子犬のように瞳を潤ませ、赤司をまっすぐに見つめてきます。息を詰める赤司に紫原は最大の呪文を唱えます。

「…ダメ?どうしても?」

 極め付けには、あざとく首を傾げる紫原に赤司の答えはひとつしか残されていません。



 赤司の拡張作業第2ラウンド開始です。





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帝光紫赤
※赤ちんが淫乱すぎてひどい
※「」は紫原。地の文は赤司。ゆえに会話文。





 紫原…オレはおかしくなったんだ…


 紫原に告白をされたとき、本当は好きというものがわからなかったんだ。でも、紫原のことが人間として好きだとは理解していたし、紫原に触れられるのは本当に心地よい。だから、あのときは紫原に応えたんだ。
 けれど、紫原の優しさに触れて、温かさが分け与えられて行くうちに、ただの人間としてじゃなくて、紫原のことをそういう意味で好きなんだと理解出来た。だから、本当に抱きしめられたいのもキスされたいのも紫原だけだ。
 しかし、紫原が好きだと理解できたその日からオレの身体は変わってしまったんだ。紫原に触れられると、心臓が苦しくなって、身体の内側から全体が熱くなってきて…



 せ…生殖器が反応してしまうんだ…



 時間場所なんて問わない。部活中でも、昼休みでも、帰り道でさえも…

 手をつないだだけで、もっと先を求めてしまう。そのまま腕、肩、胸に触れて、キスしたい、と思う。そのネクタイを外して、首筋に舌を這わせたくなってくる。
 まるで、発情期になってしまった動物のように、紫原と性行為をしたいと考えてしまうんだ。

 初めは、男に発情する変態になってしまったんだと思った。そういう性癖なんだと。でも、ある時気づいたんだ。他のやつには反応しない。触れられても何も思わない。何も感じない。紫原だけだって。
 さきほど緑間に抱きしめられていたのは、実験だったんだ。紫原は他より接触が多かったからな。だから、緑間には申し訳ないが協力してもらったんだ。他の男にもそういう反応が出るのかと。けれど、やはり何も反応しなくて…

 でも、紫原に抱き締めたらダメなんだ。身体全身がぞくぞくして、息が乱れてくる…!触りたいと、触られたいと身体が求め始める!今だって、紫原に触れたい!触れて欲しくてたまらない…!!


 す、すまない…つい、声を荒げてしまった。


 …こんな馬鹿げた話、信じられないかもしれないな。信じられたとしても、気持ちが悪いと思う。けれど、これが真実なんだ。紫原には勘違いしてほしくないんだ。
 決して紫原を嫌いになったり、本当は緑間が好きとかではない…!それだけは本当だ!俺は紫原しか好きじゃない!




「じゃあ、見せてよ」

 え?

「オレにしか反応できないとこを見せてって言ってんの」

 まだゆるくしか勃起していないが…さ…触ってくれたら…わかると、思う。

「それより脱いだ方が良いんじゃない?そのズボンとパンツ」

 な…!?

 そ…そんな…部室ではしたないこと、は出来ない…

「はしたないって…こんな話したり、オレに触られただけで勃起する赤ちんの方がよっぽどはしたないと思うけど?」

 あ…う…

「ちゃっかりカギも閉めてさ、本当は赤ちんさー、このまま犯されたいと思ってたんじゃないの?秘密暴露して、興奮したチンコ、オレに握らせて、めちゃくちゃに擦られたかったんじゃないのー?」

 ちが…あっ!

「うわあ…マジで勃ってんじゃん。それもオレが触ったら大きくなったよね?こんなんじゃ早く脱がないと染みてくるよ?」

 あ…はっ…だめ…もまないで…あんっ…ぬが、して…よごれちゃ…

「脱がしてって…ああ、さっきオレが言っても脱がなかったのは赤ちんは脱がされる方が好きだったってことー?ごめんね、気がつかなくて」

 や…ちが…
 ひっ…!みみもとでしゃべらないで…

「んー…じゃあさ〜、脱がしてあげるから、そこの、ミドチンの座ってた席でさ、M字開脚して見せてよ。そうしたら、いっぱい触ってあげる」

 ん…あ、あ…ほん、と?

「うん、こんなズボンの上からじゃ焦れったいでしょー?言うこと聞いてくれたら、赤ちんの望む通りにやってあげる」

 ふ…あ…でも、恥ずかしい…
 紫原に、みられたら、オレの、もっと、興奮、して…

「ほんとーに変態みたいな身体なんだ、赤ちん」

 す、すまない…んっ…

「謝ってほしいわけじゃねーけど。どうすんの?ズボン汚して帰るの?」

 い、やだ…ぬぐ、からぁ…あんっ!

「最初からそういえばいいのにー」

 や、そんな…みるな…

「見てほしいんでしょー?…うわっ、パンツぐっしょぐしょじゃん、ズボンに染みなくてよかったねー」

 うっ…

「そんな泣きそうな顔しても赤ちんが漏らしちゃったのが悪いじゃん」

 む、紫原が…さわるか、ら…

「触らせたの赤ちんでしょー?ほら、早く座ってよ」

 ほ、本当に…足、ひろげなくちゃいけないか?

「いやなの?」

 だ、だって…そんな姿勢に、なったら…お、おしり…の…あ、……見えちゃ…

「なんて?どこが見えるって?」

 も、ゆるしてくれ…

「言い出したの赤ちんじゃん。ちゃんとハッキリ言いなよ」

 あ、アナル…が、すごいいま…ひくひくしていて…
 なにもしてないのに…女性みたいに…男の…ペニスを欲しがってる、みたいで…

「もしかして赤ちん、お尻も疼いちゃうの?」

 う……ネットで、しらべたら、男どうしでするには、おしりを、使うって……
 紫原のペニスがオレのなかに…って思ったら、興奮して…それから…興奮、したら…う…疼くようになって…

「じゃあ、赤ちんはチンコを痛いぐらい擦られるより、アナルにズコズコいられた方がいいってこと?」

 む、紫原が…触ってくれるなら…どっちでもいい…

「どっちでもいいはダメー。想像したんでしょう?オレのチンコ突っ込まれて、あんあん喘ぐ自分を妄想して1人で興奮してたんでしょう?」

 あ…ふっ…

「ねー、ちゃんと答えて。オレのに突っ込まれて、ガンガン掘られて、奥にオレの精子注いで欲しいんでしょう?」

 ん、う、うぅ…

「赤ちん?」

 そ、そそいで、ほしい…です…




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