みじかいはりが3、ながいはりが12をさしたら、オレのだいすきなじかんのはじまり。そう、おやつのじかんだ!
あかちんとあそんでるとちゅうでも、おやつのじかんになったら、いすにすわっていいこでまっていたら、おやつをもってきてくれるってかあさんはいっていた。だから、あかちんのてをひっぱって、いそいですわったのに、つくえのうえにおやつはなし。
オレ、いいこですわったのに、なんでないの?オレいいこだし!
そうぞうしていたこととちがうことにむかむかして、おもわずあしをばたばたさせる。すると、となりにすわってたあかちんがすぐにオレのあしをぺしりっとたたいた。
「おぎょうぎがわるいぞ、あつし」
「だってー」
オレちゃんといいこにしてたもん。なのに、かあさんがなかなかもってこないんだもん。
オレのせいじゃないのにあかちんにおこられちゃって、くやしくてほっぺたをふくらます。そんなオレにあかちんはしょうがないなってかおをしながら、オレをいいこいいこってするようにあたまをなでてくれた。ほかのひとにやられたら、こどもあつかいしないでっていいたいところだけど、あかちんにあたまをなでられるのはすごいすきだから、ついついゆるしちゃう。それにさっきまでしんぞうらへんがむかむかしてたのに、あかちんにあたまをなでられただけで、そのむかむかもきえていった。
あかちんってまほうつかいみたい。
「あつしはほんとうにおやつのじかんがすきだね」
「うん!だって、あまくておいしいじゃん!」
たべたらしあわせになれるし、ずっとたべててもあきないし、いいことばっかり。
あかちんもすぐににっこりわらって、そうだねっていってくれた。あかちんもおれとおんなじきもちなんだってわかって、さらにうれしくなる。つぎはうれしくてあしをばたばたさせたかったけど、あかちんにさっきおこられちゃったからひっしにがまん。
「お待たせー。切っていたら遅くなっちゃったわ」
ぱたぱたとスリッパのおとをたてて、かあさんはふたつのおさらをもってきた。いそいできたみたいだけど、もうとっくにながいはりは12をすぎている。
「おそーい!」
「ごめんねー」
おれがおこっているというのに、かあさんはきげんがいいようにニコニコしながら、オレとあかちんのまえにおさらをおく。たっぷりとクリームがつまっているロールケーキだ。それもこのふわふわしているロールケーキはオレがだいすきなおみせのロールケーキだった。
「わーい!」
そのロールケーキにテンションがぐんぐんあがっていくのがわかる。となりのあかちんをみると、あかちんはそんなオレをみてニコニコしていた。
あかちんもうれしいのかな?うれしいよね!だって、こんなおいしそうなロールケーキがあるんだもん!
オレもあかちんにわらいかえしたら、あかちんがちょっとだけまゆをへにょんってさげた。このかおはしっている。
あかちん、ちょっとだけてれてる。
なんでかはわかんないけど、あかちんはそれをかくすようにおれからめをそらして、てをあわせた。
「ほら、あつし。はやくてをあわせて」
「うん!」
あかちんがなんでてれてるのかは、けっきょくわからなかったけど、きっとおいしいケーキをみてよろこんでいるのがばれたからてれてるだけだろう。って、かってになっとくして、パンッとおもいっきりてをあわせる。かあさんがくすくすわらってる。
もう、なんでわらうのー?
またほっぺたをふくらましたかったけど、それよりさきにケーキだ。オレはめのまえのケーキをみて、おおきくいきをすう。
「いっただきまああす!!」
「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
かあさんのことばにオレはそくざにおさらのうえにおいてあるフォークをもって、ふわふわのロールケーキをきる。ちょっとだけおおきくきっちゃったけど、くちにいれればおなじで、あまいクリームがオレのくちぜんぶにひろがる。
「おいしー!!」
「もう、敦。ついているわよ」
そういって、かあさんのてがオレのほっぺたをさわる。くちのはしをちょっとだけぬぐって、そのてについたクリームをペロリッとなめた。
「うん、おいしい」
「あー!オレのー!」
「つけていた敦が悪いのー」
かあさんがそういってクスクスとわらう。くちについてたなら、あとでくちのまわりなめてたのにー。とほっぺたをふくらませると、となりからもクスクスとわらっているこえがきこえる。となりをみると、やっぱりあかちんがわらっていて、そのかおがかわいいものだから、わらってたあかちんをおこりたかったのに、おこれなくなってしまった。
「むー…」
「すまないな、あつし。これでゆるしてくれ」
うなるオレにあかちんはきげんをわるくしてしまったのかとおもったのか、じぶんのおさらにあるロールケーキをひとくちサイズにきって、フォークのうえにのったケーキをオレにさしだす。オレとおなじケーキのはずなのに、あかちんのはすごくおいしそうにみえた。
「ほら、あーん」
「あーん!」
パクリッとケーキをくちにふくむ。さっきよりもずっとあまくかんじて、おれはすごくしあわせなきぶんになる。ニコニコしているオレにあかちんもうれしそうなかおで、オレはもっともっとしあわせなきもちになる。やっぱりあかちんはまほうつかいだ。おなじはずのケーキはさらにおいしくなるし、おやつをただたべているより、さらにしあわせなきぶんになる。
ピンポーン
しあわせなきぶんにひたっていると、いきなりインターフォンがなった。かあさんはくびをかしげながら、げんかんにいき、オレとあかちんはふたりっきりになった。
「あかちん、あかちん。もういっかいあーんってして」
くちをあけて、あかちんにたのむと、あかちんはちょっとだけこまったようにわらって、オレのケーキをひとくちサイズにきって、あーんとしてくれた。やっぱり、じぶんでたべてたときよりも、ずっとおいしくて、これからはあかちんにたべさせてもらいたいなっておもった。でも、かあさんにまたわらわれそうなきがしたから、するとしてもふたりっきりのときだけにしようっておもいなおした。
オレばっかりじゃわるいから、オレもあかちんのケーキをあーんってしたら、あかちんはちょっとだけほっぺたをあかくした。でも、すぐにくちをあけてくれて、ぱくりっとたべてくれた。あかちんはちょっとだけはずかしがりやさんで、ひとにするのはすきだけど、じぶんにされるのははずかしがる。そんなあかちんをしっているのはオレだけで、これからもオレだけがしっていたいなぁってもぐもぐとたべているあかちんをみながらおもった。
ふと、あかちんのくちのはしにクリームがついているのがみえた。たぶん、さっきあーんってしたときに、ついたのかもしれない。あかちんはたべるのがじょうずだから、めったにくちのまわりをよごさない。そんなあかちんがめずらしくよごしているのだから、たぶんオレがげんいんだろう。あかちんにおしえてあげようとおもったけど、さっきのかあさんのこうどうをおもいだす。
「あかちん、あかちん」
「なんだ?あつ、うむっ」
あかちんのくちのはしをぺろりっとなめる。あかちんはびっくりしたのか、めをひらいていて、でも、オレはあかちんのくちのあまさにびっくりする。なんていったらいいかわからないけど、とりあえずもっとなめたくなるようなあまさだった。オレはもっとなめたくなって、もうクリームはとれていたけど、オレはあかちんのくちをペロペロとなめる。
「ん…む、あつ…ん」
「ん、ん、あかちん…」
あかちんのほっぺたをりょうてでつかんで、うえのくちびるとかしたのくちびるをなめたり、すったりする。クリームのあじがしなくなっても、あかちんのくちびるはあまくて、もっともっとほしくなってしまう。しばらくそうしていると、あかちんのほっぺたはまっかになっていて、めがとろんっとねむそうなめになっていることにきづいた。
「ふはぁ…」
「ん…あかちん、ねむたいの?」
くちびるをはなして、あかちんをみると、あかちんはひっしにいきをしていた。あらら、くるしかったのかな?そういえば、ひっしにくちとじてたもんね。
「あつ、し、なんで…」
「だって、クリームとろうっておもってなめたんだけど、あかちんのおくち、あまかったんだもん」
そういうと、あかちんはちょっとだけあかくなって、ふいっとかおをそらした。あれ?もしかして、てれてる?
「…それ、ほかのひとにするなよ」
「しないよー、あかちんだけー」
君を食べる、15時
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