※ファンタジー
※輪廻転生




今でも覚えてる。
「魔女に鉄槌を―――!!」
騒ぎたてる人々、焼ける匂い、愛してると動いた唇。全部全部覚えてる。すべてが赤に染まった日。オレの神様が殺された日。
赤ちんが消えてしまった日。

<中略>

誰を憎んで、誰を殺したいなんて、考えるだけ無駄だった。ただこの世界が憎い。神さまを殺した人間が憎かった。
あの日からはオレはただひたすら人を殺していた。銃の扱いは知っていたから、あとは盗んで、殺して、逃げて、盗んでの繰り返しだ。オレの身長はこんなに高くて目立つというのに、未だに警察には捕まらない。ただ一般市民を夜には出ないようにとと通達しているだけだ。
なんでこんな世界のために、赤ちんは殺されてしまったのだろう。赤ちんはただ人より頭が良くて、何でもできる人なだけなのに。どうして、それだけで、魔女だと烙印を押され、殺されてしまったのだろうか。その疑問は未だ解決しない。
ねぇ、赤ちん。この頃、全然眠れない。だって、寝たら寝た分だけ赤ちんを忘れちゃう。頭を撫でてくれた手も、細い腰も、あつしって優しく呼んでくれる声も。全部全部消えちゃう。
赤ちん、教えてよ。オレはどうしたらいいの?どうしたら、赤ちんを思い出せるの?もっと殺したらいいの?それとも……死んじゃったほうがいいかなあ?
「赤ちん…」
情けなく声がかすれる。こんな路地歩いているなんて、オレか野良犬ぐらいだ。聞いてるやつなんて誰もいない。いたとしたら、殺せばいい。周りに気配を配らせながら、オレはずるずると建物によりかかりながら座り込んだ。

「やめろ!僕に触るな!離せ!!」
遠くのほうから声がする。聞いたことがあるような声。どこで聞いたんだろう。オレに会ってるやつなんかみんな死んでるはずなのに…懐かしい…
その声は複数の足音とともにやってくる。オレは伏せていた顔をあげ、ゆっくりとそこに視線を移す。ここは薄暗い。目がよほどいいやつしか気づかれないだろう。その利点を活用し、オレは銃へと手をかけた。

「あ…」

しかし、薄暗いそこにいたのは、複数人の男と押し倒されている少年。さらさらと地面に流れているのは、赤い…


パンッ

パンッ

パンッ


思考する時間なんてなかった。ただ、本能に従うままに引き金をひいた。

「え…あっ…」
全て命中。少年以外、周りにいる薄汚い大人たちは倒れる。そのことに驚き、目を見開いている赤い髪の少年。やはり見間違いではない。
「赤ちん」
思わず笑顔が溢れ、ふらふらと近づいていく。赤ちんはオレが銃を使っていたことに驚いているのか、ただ呆然とオレを見るだけ。それもそうだ。赤ちんと一緒にいるときはそんな危ないもの持ったことがなかったもん。そりゃあ、ビックリするか。そんなことを思いながら、男たちからの返り血で服も真っ赤に濡れている体を包み込むように抱き締める。
「…やっと会えたね、赤ちん」
思い出せたよ。顔も声も温もりも…
もう離さないからね。たった1人だけの大切な人。

<中略>

「逃げ、なよ…赤ちん」
「いやだ、お前のいうことなんか聞かない」
「赤ちんは…いつもそうだなー…」
「…好きなんだ、敦。お前は僕に似ている人を重ね合わせてるだけかもしれないが、僕はお前を愛してる」
「へへ…そっかー…うれし、いなー…でも、やっぱり…赤ちんは、赤ちんだ、よ」
「あつし…」
「だから、さ…次は、ね…一緒に死のう?」
「え?」
「もう、おいて、いったり…しない。ずっと…ずっと…いっしょ、」
「あつし…ぼくは」
「あいしてるよ…赤ちん」



っていう感じの輪廻転生バッドエンド。
紫赤が幸せに生活→赤司の頭の良さから協会が魔女と烙印→魔女裁判→処刑→冒頭のお話→復讐鬼になるむっくん→協会の人間を次々と殺していく→しかし、時の流れとともに記憶が曖昧になるむっくん→中盤の話→助けてもらった恩から世話をする転生赤司(違いは赤司くんが帝光スタイル、転生赤司くんが洛山スタイル)→徐々に距離をつめていく紫赤→やはり昔とは違う転生赤司くんに戸惑い気味のむっくん→むっくんに愛されてる昔の赤司くんが羨ましい転生赤司くん→でも、幸せな紫赤→戦争始まる→戦火がすんでいる街まで被害を及ぼす→負傷むっくん→後半お話



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※会話文のみ


「あつし…」
「うん」
「見えないよ」
「知ってる」
「外してくれないか?」
「あと10分だけ」
「長いな。却下だ」
「お願い」
「…はぁ…理由を話せ。理由次第で考え直してやる」
「疲れた目には温かいタオルを10分間あてればいいって言ってたから…」
「で、敦の手がタオルの代わりってことか」
「うん…いや?」
「いやではないが…そうだな…少し怖い」
「こわい?」
「目を使うことに慣れすぎてしまったらしい。何も見えないことで状況が判断できないことに少し恐怖を感じている」
「…でも、オレがそばにいるよ?」
「ああ。だから、抱き締めてくれないか?」
「え?」
「見えなくても、お前の温もりや匂いを感じ取れたら、安心する気がするんだ」
「うん、そんなことならいつでもやってあげるよ、赤ちん」



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「赤ちんは変なところで意固地だねー」
敦はそう言いながら、僕の頭を軽く撫でる。それがなんだか大人に諌められている小さな子供のようで、僕はその手を払い落とす。
「意固地になっていない」
「意固地っていうか、自分の気持ちを言うのが下手っていうか…」
「…」
「会いたいなら会いたいって言いなよ。寂しいときもさ、ちゃんと傍にいたいって言っていいし。」
どういうことだ…それは。それではまるで、僕が本当に子供のようではないか。そんなことはありえない。だって、僕は由緒正しき赤司家の人間で、1人で家に過ごすなんてことは何度もあった。仮に寂しい、会いたいと思ったとしても、父も母も忙しい身だ。そんなワガママなど言っていられない。
「今まではどうか知らないけどさー、オレは赤ちんにそんなこと言われたって、全然苦に思わねえし。むしろ、嬉しいし。だからさ…」
敦はそういって、手を広げる。それも片膝をついて。
「つまんないプライドとか見栄とか今までのこととか全部放り投げて、オレのことが好きだっていう気持ちだけでぶつかって来なよ。オレの無駄に長い手はさ、赤ちんを抱き締めてもまだ余るから、そのめんどくさい気持ちも拾って一緒に抱え上げてやるよ」



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紫←赤


一度だけ、紫原が告白されている場面を見たことがある。中庭が見える渡り廊下。移動教室でたまたまその廊下を使ったときに中庭に紫原と誰かがいた。
そういう方面で疎いといわれているオレでさえ知っている告白場所として有名なそこにいたのだ。誰だって告白現場だと思うだろう。
オレはそれを一瞥し、すぐに立ち去った。告白現場を見るなんて野暮なことだし、その上女生徒に失礼だ。
…いや、違う。
オレは見たくなかったのだ。勇気を出して告白する女生徒を。それに対して何の興味も示さない紫原を。きっと彼は簡単に振るのだろう。「ふーん、そっかー。話はそれだけー?」などといつもと変わらない口調で、音色で、彼は残酷な言葉を吐くのだ。悪気のない純粋な言葉で殺しにかかるのだ。女生徒を。オレを…
いや、オレの場合は彼女以上に残酷な言葉を吐くかもしれない。だって、オレは彼の主将であり、友人であり、同じ性別同士なのだから。

この想いだけは気づかせてはいけない。



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※会話文


「ね、ちゅーしたい」
「風邪をひいているだろう?却下だ」
「マスク越しでいいから」
「…」
「お願い」
「しょうがない」

チュッ

「…もっと」
「ダメだ。寝ろ」
「あと一回だけ」
「…そうしたら、早く寝るか?」
「うん」


「…あ、ダメだ。止まんない」
「ちょっ…こら…!むらさ、んぅ…」
「バツは受けるよ。」
「そうい、う…もんだい、じゃ…んんっ」
「赤ちんに移っちゃったら看病してあげるし」
「はっ…ぁ…さわ、るな…やぁっ…」




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