「好きです、付き合ってください!」
校舎裏に連れて行かれた時点でなんとなく気づいていた。黄瀬ほど多いわけではないが、自分だって何回か告白は受けている。まぁ、いつも断ってるわけだけど…
「わりぃ…おれ、今部活のことしか考えられねえんだわ」
この頃、使っている言い訳。初めと比べたら、大分成長したものだと自分でも思う。はじめは、あんた、だれ?知らないやつとは付き合えねぇわと答えて、なぜか誰に告白されて、どう返事したか知られているさつきによく怒られたものだ。
「友達からでもいいんです!」
「……なんで、そんな必死なんだ?」
必死に食いついてくる目の前の女につい本音がもれてしまった。今までの女はなんだかんださきほどの言葉で引き下がってくれたのだ。そっか、と少しだけつらそうに笑って…
「好きだからです!傍にいたいから…」
「傍にいたいから恋人になりたいのか?」
俺の口から出た言葉に目を開く女。え、俺そんな変なこと言った?
「だって、隣にいる権利がもらえるのは恋人だけなんですよ…?」
女の言葉に目の前がぐにゃぐにゃと歪む。この女はなんていっているんだ。隣にいる権利があるのは恋人だけ?
「はは…なんだよ、それ…」
思わず笑いが出る。それじゃあ、テツとさつきはなんだっていうんだ。俺の隣にいる相棒のテツと昔から隣にいる幼馴染のさつきは恋人でもいうのだろうか?そんなのありえねぇ。そんなものよりずっと大事だ。大切だ。誰にも渡せない。守りたいものだ。赤の他人が簡単に入れるもんじゃない。
「じゃあ、無理だ。恋人なんていらねぇ」
「え?」
「俺の隣はさつきとテツだけのもんだ」
こいつらさえいれば俺はもうなにもいらない。
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