01幼馴染
「俺さぁ、やっと本気になれる彼女ができたんだよね」
その言葉を聞いて、俺は生まれて来なきゃ良かったと思ったんだ。
「そりゃあ……良かったじゃねェか」
「おう。今まで散々迷惑掛けて悪かったな」
曇天の中、ギイ、と錆びたブランコが鳴る。
昔は1人で漕ぐことさえ大変だったこのブランコは、今では乗っているだけで滑稽に見えるくらい、俺たちはデカくなってしまった。
震えそうになる声を無理矢理に押さえつけ、俺は笑って言った。
「そんなの別に謝ることじゃねェだろ。俺たちは“幼馴染”なんだから」
――オイ。世界で一番最初に「初恋は実らない」って言ったヤツ。
オメーの言ってることは殺してェくらい合ってるよ。
「じゃあな。急に呼び出して悪かったよ」
そう言われ、ひらひらと手を振りながら俺はソイツから背を向ける。
アイツは女を好きになるタチだし、俺がそういう目で見ていたこともまったく気づいていなかった。
元々勝算がないことなんてわかりきっていたはずだった。
――それなのに。
「おいおいマジかよ……」
ポロポロと女みてェに涙が溢れた。
一度タカが外れると、そのあとは何の滞りもなく、流れ続ける。
「クソっ……」
幸いなことにその瞬間、ポツポツと雨が降り始め、やがて大きな粒となって地面を濡らした。
そして、頬に流れた涙は雨粒に紛れた。汗だってともに流れ落ちる。……誰も見てねェんだ。泣くくらい許してくれ。
ぐす、と鼻をすする。こんなとき独り暮しで良かったと思うが、しかしなぜだか寂しいような気がした。
1人になりたいけど、1人になりたくない。
そんか矛盾した感情がチクチクと心臓を刺激する。
――そのとき、だった。
「ワン!」
――神はどうやら俺の心を読んだらしい。だから、道端で「ワン!」……と縋るように鳴く捨て犬が都合良くいたんだ。
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