11ご飯を作る


「ふっ……! しょーがないなぁ環は。俺がご飯作ってあげるよ」


未だ笑いながらマドカが言った。
確かに昼飯時ではあるが……作れるのか?


「今、俺の料理の腕を疑ったね?」


こいつは頭の中も読めるのか。

ちなみに俺は何も作れない。ホットケーキは辛うじて焼ける。
目玉焼き……は、焼くまではいいが、皿に移す段階で黄身を割ってしまう。

元々料理のセンスがないんだ。


「……お前、ほんとに作れるのか?」
「何食べたい? 環が言ったやつ作るよ」
「じゃあ……オムライス」


子どもっぽい食べものが口をついて出た。
またからかわれるか、と思ったが、マドカは「おけー」とだけ言ってキッチンへ向かう。


「卵、牛乳、ケチャップ、……ねぇ。この家、野菜がまったくないんだけど」
「食いたくねぇんだもん。」
「……まぁいいや」


後々のために野菜中心の生活にした方がいいのに……とぶつくさ言う。

後々のため?
健康的なことか?

頭にはてなを浮かべる俺とは対称的に、マドカはテキパキと調理を始めた。

 
まずフライパンにバターを厚めに引く。
そこに、冷凍してあった白飯を入れて強火でバターと絡ませるように炒める。

ツヤツヤと光沢を帯びて来たら皿に移し替え、さっきと同じフライパンに卵と少量の牛乳とマヨネーズを混ぜたものを低い位置から投入し、マドカは一気にかき混ぜた。


「マヨネーズも入れるのか」
「うん。俺のコダワリ」



いつもスーパーで買った惣菜を食べていた俺だったからそれら全てが新鮮だった。


最後にできあがった卵をバターライスの上に乗せ、軽く形を整える。


「はい、完成。ケチャップはお好きにどうぞ」
「お前……手際がなんかスゲーな!!」


なんの変哲もないオムライス。……だが、人に料理を作ってもらうのは久しぶりで、それだけで特別な物に見えた。


『いーい、環。ケチャップライスの中に野菜が入ってるけど、絶対に食べなさい。食べ物はその人を作るんだから』


また、母さんの言葉が頭をよぎる。



「……いただきます、」
「めしあがれ」



木のスプーンを、有り得ないくらいふわふわな卵に刺し入れる。

そのオムライスは記憶の中のオムライスと遜色ないくらいうまかった。





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