10髪を触る

「それにしてもさぁ、環はよく動じないよね。犬が人間になったとか常識的に考えたらありえないのに」
「……まあ、そうだけど」


そもそも自分に常識が備わっているかすら怪しいので偉そうなことは言えないのだ。


「まーこの金髪は非常識だよね!! さっきからキラキラし過ぎて直視できねえもん!!」
「うっせぇな! 俺の唯一のオシャレゴコロだよ!」
「えぇこれが?!」


ぶはっとマドカが吹き出した。
……クソっ、そんなにダセぇかな、この金髪。

未だに笑いながらマドカが俺の髪を掻き撫でる。


「……お前の髪はカラーリングしたことなさそうだな。傷んでねェし、」


マドカの真っ黒な毛先を持ち上げてみる。
そもそも、1回は死んだ人間が前世? の見た目を継いでいるかは疑問だが。

その後、マドカを真似してわしわしと撫でてみる。


「触り方がなんか不器用だね、環」
「うるせェな……」
「あの幼馴染クンとは本当に何もなかったみたいだね」
「てめエなんで知って、!」


その瞬間、俺の腹がグウと間抜けに鳴った。


「ふはっ!」


マドカがまた吹き出す。


……クソっ、今日は本当についてねえ。




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