09何歳?
自分の部屋に戻ると、マドカは俺の洗い替えのスウェットを着て、ソファに座っていた。
俺の存在に気づくと走って寄ってくる。
「環っ、おかえり! どこ行ってたの?」
「……大家サンのとこ」
こいつの人懐っこいところ、ほんとに犬みてぇだな。
にこにこ笑うマドカにさきほど浮かんだ質問をしようとするが、なぜか言葉にならない。
見つめたまま動かない俺を見かねてか、マドカが「環?」と俺の名前を呼んだ。はっとして、思わずべつの質問をぶつける。
「……マドカって、何歳?」
自分でもあきれるほど間抜けな質問だ。……でもまあいいか。『死んだことある?』なんて質問の方がよっぽど馬鹿に見える。
マドカはきょとんとしたのち、笑顔で答えた。
「うーん、生きてる頃のことはよく思い出せないんだよねえ」
その返答で、マドカがやはりこの世のものでないことがわかった。
「へ、へえ……」
なんで死んだんだ、とか聞きたいことはたくさんある。しかし生前のことは思い出せないと本人が言っているし、何よりぷらいばしぃに関係することなので、心の中だけで留めておく。
「でも、見た目的に俺と同い年くらいだよな」
「高校に通ってた記憶はぼんやりあるよお」
やっぱり高校生か。
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