08決意と、少しの後悔

長かった夏休みももうすぐ終わり、2学期が始まる。

今まで女遊びが酷かった幼馴染に本命ができた。そうなれば、俺との交流は必然的に少なくなって来るだろう。


寂しくない……と言えば嘘になる。
でも、それでも、この気持ちを知られたら幼馴染の負担になってしまうので、早く本心から逃れたかった。




『今日からオレは、環のイヌだよ』


さきほどのマドカの言葉をふと思い出した。『イヌ』という言葉が動物の『犬』を表していないことくらい、俺にだってわかる。

さて、どうしたものか――。


「……あ?」


そのとき、脳裏にひとつのことがよぎった。たらりと冷や汗が流れ、夏にも関わらず体温が急降下する。

――『天国で神様に魔法をかけられた』。マドカはたしかにそう言った。

『天国』――それはつまり、マドカがこの世のものではないことを意味している。
 

「まじかよ、」


俺はずいぶんやっかいなイヌを拾ってしまったらしい。

あとさきの見えない暗闇に、片足どころか全身浸かっている。
俺は、俺の安易さを酷く後悔した。



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