そして俺は一度心を落ち着かせるために自室に戻った。

で、今である。

俺が手に持っているのは、あの日ユキがくれたチョコレートが入っていた箱。

何かプレゼントになりそうな物はないかと部屋を見渡すが、あるわけがない。

余計な物は部屋に置かない主義だ。

「…ちくしょう」

俺は呟き時計を見ると23:20の表示。
あと40分で今日が終わる。
つまり、ホワイトデーも終わる。

俺は、考えても仕方ないと思い、箱を机におくと、立ち上がる。


ユキの部屋に行こう。
そこで素直に全て話そう。

あの日がバレンタインだと知らなかった事。
今日がホワイトデーだと知らなかった事。
全てハンジに聞いた事。
何もお返しを用意していない事。

謝ったとして、許してもらえるだろうか…
いや、最悪別れを切り出されるかもしれない…
それだけは避けたいが…

今回は完全に俺が悪い。

俺は軽く走り、ユキの部屋へと向かう。



そして、ユキの部屋の前につくと、一息つき、ノックをする。

「…俺だ」

そう小さくいうと、しばらくして扉が少しあいた。

「……リヴァイ?」

雨華の声は少し掠れて、震えている。

ドアは完全に開いていない。
隙間があいた程度だったが、俺は口を開いた。

「…悪かった、ユキ。俺は…」

俺は謝ろうと口を開くと、雨華がそれを遮った。

「言わないで…わかってる、わかってるよ…」

ユキはわかっていたのか?俺が知らなかったということを。
俺は少しホッとする。
と、またユキは話しだした。

「やっぱり、そうだよね…わかってた、リヴァイは人類最強なんて言われて…凄い人で…私と釣り合わない事くらい…でもリヴァイは優しいから…私の告白を断れなくて…それで付き合ってくれたんでしよ…?」

…は?何をいっているんだこいつは。
なんの話しだ、俺はただ謝りにきただけなのに。

「……不安だったの、バレンタイン渡した時も、本当に喜んでくれてるのかなって…リヴァイ、あの時、よくわからないって顔してた…その時思ったの…リヴァイの事本気で好きなのは、私だけなんじゃないかって……」

待ってくれ、違う。
俺がよくわからないって顔してたのは、バレンタインを知らなかったからで、驚いただけだ…
いろいろ言いたい事が募りすぎて、言葉にならない。

「…だからね、今日、もしリヴァイがホワイトデーにお返しをくれたら、きっとリヴァイも私を好きでいてくれてるんだって、自信を持とうって思った……」

ユキの声がだんだん涙声になっていく。
だめだ、このままじゃ…
体が動かない。声も出ない。

「でも、結局リヴァイは今日、私の所に来なかった…やっと来てくれたけど…もう…今日が終わるよ…」

ユキは少し扉を開ける。
ユキが見えるくらい扉が開いた。
月明かりのみで照らされる雨華の顔。
部屋にランプはついていないようだった。
こいつは、真っ暗な部屋でただ、俺を待っていたのか…




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