花想3・花ある君と思ひけり

彼女に出会ってからというもの、自分は変わったと思う。

春は薄紅色の花よりも地べたに咲いている、彼女の名につく鮮やかな黄色の花に目が行くようになった。

彼女が自分の名につく花が好きだといえば、淡い紫色の群集が以前よりも美しく見えた。

彼女が自分の傍にいるとき、声を聞いたり顔を見ると幸せになるこの気持ちを、「愛しい」という感情だと知った。

彼女が自分の傍にいないとき、声を聞いたり顔を見たいと切なくなるこの気持ちを、「恋しい」という感情だと知った。

いつかの日、彼女は自分に問うた。

「藤吾さんて、いつもにこにこしてますよね?」

「そうですか?」

「はい。会ったときいつもそうですよ?」

「それはきっと日菜子さんにお逢いできて嬉しいからですよ。職場などでは普通ですし」

「えっ……」

彼女は頬をわずかに紅くさせた。

それがあまりにいじらしく、少し意地悪したくなった。

「日菜子さんも逢ったときいつもにこにこしてますよ? あと……お顔が赤くなりますね。今みたいに」

「そっ、それは……」

彼女の頬が熟れた林檎のようにますます紅くなる。

問ひたまうこそこひしけれ





〈了〉










オマージュネタは藤村の『初恋』です。


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