薄い茶色の髪と翠色の眼。
産まれてきた子は、愛する人の色を受け継いだ女の子だった。


由夏。そう名付けられた私の子供は、一般的な"普通"とは違っていた。
産声の時の涙が嘘かのように、それ以降一切泣かないから。
それどころか、由夏には感情がないかのようで。
呼びかけても反応せず、虚ろな目でただ空中を見ているだけ。
病気なのかと心配になったし、医者にも見せたけれど何もないと言われるばかり。
周りの人は由夏を、気味が悪いと言う。

それでも私がこの子を愛しているのは変わりなかった。
普通とは違っているかもしれない。
それでも大切で愛しい我が子。
――どうしたら、貴女は泣けるのかしら?
優しく腕の中にいる子を抱きしめた。



今日で由夏が生まれて一年になる。
未だあの子は泣いた事がない。

ベビーベッドの上で座っている由夏を見て、ため息を零す。
私は何て不甲斐ない母なんだろう。
あの子の気持ちも引き出してやれないなんて。
悲しい、私の方が泣きそう。
唇を噛み、悲しみを飲み込む。
今日は由夏の誕生日何だから、落ち込んだりしたらいけない。
そう思い直し、頼んでいた誕生日ケーキを買いに出掛けた。

ケーキを買って、家に帰宅し、ケーキの入った箱を冷蔵庫しまう。
冷蔵庫の扉を閉じ、由夏の方へ顔を向け、驚いた。
あの子が声もあげずに泣いているから。

「由夏。」

名前を呼びながら近づき、我が子を抱きしめた。
貴女は一人じゃないと、伝えたくて。
お母さんはいつでも見方だと、分かってほしくて。

「…ぅ、うあああぁあぁあぁぁ!!!!!!」

それが由夏の声だと、一瞬分からなかった。
ああ、この子はこんな声だったのか。
それを知れた事が嬉しくて、嬉しくて。
由夏が泣き止むまで、私は抱きしめ続けた。


一年目の生誕






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