わからない。何が?って、全てだ。
ここは何処で何故私は此処にいて何故私の携帯を握る手は小さくなっているのか、など数え上げればきりがない程疑問は次々に浮かんでくる。

一旦自分を落ち着かせる為に、昨日の出来事を振り返った。
そしてあの怪しげなメールのことを思い出す。

「まさか……」

先程アラームを止める為に掴んだ携帯を操作し、親、知人へとかけていく。
しかし、繋がらない。

「はは、嘘、やろ…」

最後の望みをかけ、共にあのメールを返信した友人へと電話をする。
電子音が鳴り響く。
速く速くと焦る気持ちを抑え、じっと携帯を耳元に当て続けた。
些細な音も逃さぬように。
長い時間経ったような気がし、無理かと諦めかけたとき、断続的に続いた音が途切れた。

『…ん、はぃ、も…しもし』

それは確かに繋がった。

「もしもし…、刹那?」

私は彼女を決めた名前で呼ぶ。
彼女の反応を確かめるため。

『……は?うち、刹那なんて名ちゃう、よ……あれ?この声…』

その反応に、彼女は私の知っている人物なのだと確信し、安堵と共に現状を伝えなければと心を引き締めた。

「起きぬけでわからんかもやけど、うちは廣瀬煌であんたは雪城刹那。認めたくないけど、ここはうちたちがいた場所じゃない」

『え、え?何それ。………もしかして昨日の変なメール!?』

脳が覚醒しだしたのか、やっと彼女はそこに辿り着く。

「それ以外ないやろな、理由は。誘拐にしては拘束されてへんし、うちんちよりも金持ちそうやし、何よりうちのサイズが小さくなってるみたいやしさ。」

『……言われて見ればなんか使い慣れた携帯がうちの手に馴染まん、てか大きい。』

うっそーん、なんてボヤく声がスピーカー越しから聞こえる。
私だって出来れば認めたくない。
だが、認めなければ話が進まないのが現状だ。

「信じられんのもわかるけど、今考えるべきことは自分が置かれた状況の整理。他のことは後で幾らでも考えればいい。」

未だ理解出来ない、というより認めたくない彼女に私はそう話しかける。
彼女は一つ息を吐き出し、そうやねと返してきた。

「まず、今からあんたのことは刹那って呼ぶ。自分はうちのこと煌って呼び。」

『へ、何で?』

「バカ、ボロださん為に慣れやなあかんやろ。だから、これから一切本名は口にしたあかんよ。」

分かったのか、うんと返事が返ってきた。
友人は少し不器用だから、慣れさせないと絶対本名を言う。
もしそれが二人っきりならいい。
だが、誰かがいる場所で言ってしまったら?
厄介になることは、目に見えてる。
特に頭の回るキャラなんかに知られたら……
考えただけで、眉間に皺がよる。

「後は今の時期や年齢、特典が本当についてるかとかかな?ってことで家捜ししよか。」

『家捜しって…、まぁ、うん部屋とか調べてみるわ。』

「うん、じゃ調べ終わったらまた連絡ってことで!」

そう言い、通話を切る。
悩んだって仕方がない。
出来ることをする他ない、ってね。



02:突然物語は始まった。

(脇役という人生ーモノガタリー)




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