それはまるで尋常のように。
しかし、異常のように私の身に降りかかった。

「・・・ぃ。」

肩の辺りを何かが触れる。熱ヌクモリをおびたそれは私の体を揺らし、三半規管から脳へと伝達が行われた。

「ん...ぅ」

目を擦りながら呻くと上から声が降ってくる。

「ほら、起きなさい。学校に遅刻しちゃうわよ。」

その声に睡んでいた意識は急速に冴めていく。
勢いよく上半身を起こした私を見て、先程声を掛けてきたであろう女性は、溜息を吐いた。

「ほら、速く準備しないと遅れるわよ礼香ライガ

そういって女性はパタパタと速足に部屋を出て行った。
・・・今のは誰だろう。まず、私は何なのだろう。
ベッドから立ち上がり、勉強机の上に置かれている鏡に顔を覗き込ま――――。

いや、待て・・・ありえないだろ。
そう思い、"自分"のことを思い出してみる。
私の名は松葉紅成。女。今年の誕生日で22になるはずだ。
そう、そのはずなのだ。
なのに鏡に写っているのはどう見ても小学生。
10歳かそこらの子供。しかも男の子。

「――――――――っ」

私は声にすらならない"悲鳴コエ"を初めて出した。



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