「三千円分のお買い上げですから、三回ですね。三回回してください。」
商店街での抽選会。買った分のレシートを渡してみるとどうやら三千円分の買い物をしたらしい。そんなに買ったのかな、なんて思いつつ、回転抽選器をガラガラと回した。
「白っ!はずれですねえ…。後二回ですよー!頑張ってくださいっ」
何を頑張るんだ。特賞は沖縄かー…当たると嬉しいな。無意識にそう考えてまた回転抽選器をガラガラと回す。コロリと穴から落ちてきた玉の色はオレンジ。……?
「…色はー…おお、オレンジ!」
玉を見た直後、すぐにカランカラン!と大きな音を鳴らす。そして声をあげた。
「特賞の沖縄旅行、3泊4日の旅!出ましたっー!!」
……なんつーか、私すげえ…。
「柊の金で来ましたー沖縄!いやっふー!!」
「うざい、月島。」
「それに沖縄に行けたのは私のおかげなんだぞ、感謝しやがれ!愚民ども!」
「私に言ってんの?」
「…ヤダナ、舞華サンニハ言ッテナイヨ。月島二言ッテルダケサ。ハハッ!」
「俺は愚民じゃねえ!市民だー!」
「うっせえええ!」
「お前もね。」
テンションマックスになってます。月島と私だけ。沖縄旅行3泊4日の旅は嬉しいことに私を入れて後二人誘えるらしい。両親達と行くよりも友達と行った方がぶっちゃけ楽しいので、月島と舞華サンを誘うことにしたのだ。誘った時は月島のテンションの高さについて行けなかったけど、今ならついていける気がする!だって、沖縄だぜ沖縄!青い海!白い砂浜!そして食い物ー!
「サーターアンダギー!」
「沖縄そばー!」
「「ゴーヤーチャンプルーは食べれませんん!」」
「あんたら煩い。それと半径20メートル離れて歩きなさいよ。」
「舞華サン、酷いっ!」
「あんた達と歩くのは一生の恥。」
「ひどい!」
まあ、そんなこともありつつ私達は最初、荷物を置きにホテルへ向かうことにした。
「沖縄のホテルってすごく広いらしいぜ?」
「マジで!?」
「……………くだらない。」
フロントから鍵をもらって、部屋があるところへと向かった。部屋を探して部屋の前へつくと月島がもっている鍵でガチャリとドアを開ける。中へと入るとそこは私達が泊まるホテルなんかとは違う部屋の広さに驚愕した。
「うお!部屋デカッ!」
なんという部屋の広さだ。ベッドもあるのに座敷まである!しかもキッチンまで!
「落ち着かないっ…。」
「…たしかに。」
落ち着かなくてなんかソワソワしちゃうんだけど。ソワソワしていると舞華サンは我が家の如く普通にポットを沸かしている。
「…舞華サン?」
「何か?」
「ソワソワしないの?」
「いや、別に。っていうかこの部屋はダサい…ごほん、少しダサい。私が前沖縄に来た時に泊まったホテルは広さもあって、まさに高級感が漂っていたのよ。」
「ダサいを言い直しているけど、少しダサいも変わんないよ。っていうか、舞華サン達が泊まったホテルはどんだけ高級のホテルだったのさ。」
「沖縄で一番か二番を争うホテル。」
「そこのホテルと比べるのは間違っていると思うぜ。」
「そうだそうだ。」
つか、いいな。沖縄で一番か二番を争うレベルのホテルとか…!全室オーシャンビューみたいなところだったりして。まあ、ここも全室オーシャンビューだから、海とか普通に見えるけどね!
「そうだ!海へ行こう!」
「ナイスな案だ!月島!」
「楽しみにするのはいいけど、荷物の片付けしてからよ。」
「えーやだ!」
「夜でいいじゃん!」
「何か言った?」
私に逆らうの?オーラを禍々しく漂わせた舞華サンに勝てる者はいない。
「「すぐにやりまーす!」」
荷物を片付けて、私達は海へ向かうことにした。
「近場の海に行くよりも人があまり居なくて綺麗な海がいいんじゃん?」
月島の案により、タクシーに乗って、ホテルの近くにある海とは離れたところの海へ行くことに。私はどっちでもいいんだけど、舞華サンが月島の案に賛同したので離れた海へ。タクシーの運転手に綺麗であまり人が少ない海はありますか?と聞けば沖縄特有のなまりであるよ、と答えてくれた。
「比嘉中のわらばーもその海にいるだろうから、その子達とも遊んであげてねえ。」
「あの、わらばーって…。」
「あい!あんた達はないちゃーだったね!忘れていたさ。わらばーは沖縄の方言で子供って意味やさ。」
「…な、ないちゃー?」
私達がないちゃー?なんだ、それ。
「本土の人ってことさあね。ないちゃーって言う人もいればやまとぅぐゎーって言う人もうりんどー。」
…ダメだ。この人が何を言っているのかよく分からない。外国語を聞いてるみたいで頭が破裂しそうだ。後から聞いたのだけれど、うりんどーって方言は居るよって言う意味を持つらしい。沖縄の方言は難しいから真似とか無理だな。
「はい、到着。ここの海は綺麗だから、沢山楽しんでね。」
「はい、おじさん有難う御座います。」
「お礼を言われるぐらいのことはしてないさぁね。」
にかっ!と優しい笑顔を私達に向けてくれるタクシーの運転手さん。優しいおじさんで良かった、なんて思いつつ代金を払い私達はタクシーから降りた。
「また会えるといいね!じゃまたね!」
私達とは違うイントネーションをバリバリ活用し、私達に手を振るとすぐに車を走らせた。
「なんつーか、沖縄に合った性格してるね。」
「地元の人だからね。」
私と舞華サンは悠長としながら、海へと向かうのだけれど月島は海を見てテンション上がって、走り出した。いつもはあんなに走り出すなんてことはないのだけれど、これも沖縄マジック!
「…テンションたか…。」
「確かに。…あ、ひゃっふー!って叫んだ。」
「どうでもいいわ。」
舞華サンは本当に興味がないよね。舞華サンを一瞥した後、鞄からビニールシートを取り出して砂浜にそのビニールシートを広げた。一応、日傘も持ってきておいたから、舞華サンに日傘を渡そうとすると光の速さの如く取られた。…怖いと思ったのは気のせいだ。私一人で準備をし終えて、漸くビニールシートの上に座ることが出来た。海に浸かりながら、一人でハシャぐ月島を見て半ば呆れながら、失笑。そんな時背中を触られたような気がして後ろを振り返ってみるとそこには身も知らない誰かがいた。
「…………え?」
驚きの声が無意識に出ちゃったんだけど。
「やー達、たーやが?」
…また方言?私達、あなた達の言葉で言うないちゃーというものなんですけど!だから方言は分かりませんのですが…と言いたいのだけれど、言えない。長々しい台詞は言えない。
「…舞華サン、この人なんて言ってるの?」
「さあ?」
私達の会話を理解出来たのか私達に声をかけてきやがった人は、ああ!と納得したような声を上げた。
「ないちゃーか?」
「ないちゃーです。」
「…やーのないちゃーって言い方、なまってるよ?」
沖縄の人じゃなくてないちゃーですからね。そりゃ、なまるって。
どうやら私達に話し掛けてくれた人は甲斐裕次郎と言うらしい。あまり名前とかに興味ないんだけど。
「ゆたしくうにげぇーさびら。」
「…ゆ、たゆたしく?」
「宜しくお願いしますーって意味さあ。」
難しいね、方言。つか、何?私が沖縄の人じゃないってことをわかっていながら方言使うの?可笑しいだろ、なんて思いながら、甲斐裕次郎と親睦を深めていくことに。
「やーの名前は?」
「錦柊。」
「で、やーは?」
「林道舞華。」
「で、海に浸りながらハシャいでいるあの馬鹿は月島一樹。」
「へえ。わーの仲間は、あっちにいる奴ら。」
仲間を紹介するらしい甲斐裕次郎は、私達のところから結構離れたところを指差した。そこにいたのは立海テニス部メンバーと並んでも劣らないんじゃないかって言うぐらい個性豊かな人物達。
「…テニス部だったりして。」
「あい!なんで分かる!?エスパー?」
…マジで?冗談で言っただけなのに当たるとか…!こわっ!
「やー、すげえな!しかまち、しかまち!(びっくり、びっくり)」
もう何を言っているのか 聞くのは面倒なので、聞いてない振りをした。甲斐裕次郎は、嬉しそうに顔を綻ばせてどこかに行ったかと思えば先ほど紹介してくれたみなさんをご丁寧にも全員連れてきてくれた。…ややこしいことになったな。
「…裕次郎、こいつらたーやが?」
「わーのどぅしやいびん!(俺の友達だ!)」
…………え?なんつってんの?つか、この人達が喋ってる言葉は日本語ですよね?方言になっているからと言っても…理解しがたい方言です。
「アナタ達は甲斐クンの友達なんですか?」
「先ほど知り合ったばっかりです。」
「…甲斐クン?」
「わーの中ではどぅしだばぁよ!」
「勝手に決めつけるのは良くないですよ、甲斐クン。」
友達でも親友でも知り合いでも…なんでもいいんじゃね?
甲斐裕次郎の仲間とも何故か親睦を深めることになった後、月島が充分に遊んで満足したらしく海から帰ってきた。
「…誰?」
そりゃそうだろうね。海から帰ってきたら誰か知らない人が沢山増えているんだから。
「友達になったらしい人達です。」
「なったらしいじゃなくてなった!」
「らしいです。」
益々意味が分からないと言いたげな顔を月島はしていたので、右から順に甲斐裕次郎とその仲間達を紹介していった。
「…覚えた?」
「覚えたって言うより、顔を覚えた。」
「名前は?」
「微妙。だから間違っていたらごめんな!」
「間違えたらゴーヤーどー!」
「マジかよ!?」
「しんけん!」
「…え?」
「しんけんはマジって言う意味を持ちますから適当に頷くといい。」
それでいいのかよ!しかも何、リーゼントの言うことを素直に信じているんだ、月島。
「…変な人達と出会ったわね。」
「それ言う?」
「今言わなくていつ言うのよ。」
「…すみません。」
「仲良くなったことだし!月島!わーとあしびなー!」
「おうよっ!行くぞ皆の衆!」
月島の掛け声で木手って名前の人以外の奴らは全員海へと走っていった。…なんか見てる私達は泳ぐ気力を奪われたような気がする。
「アナタ達は泳がないんですか?」
「…日焼けするからね。」
「そう言うのは日傘をしてから言っていただきたいんですけど。」
うるせええええ!
「せっかく友達になったんですから、私とメルアド交換しましょうか。ケータイを貸してください。」
「交換しなくていいです。」
「煩いです。早くケータイを出しなさい。」
あれ…これって横暴じゃね?小さく溜め息を吐いて、私は木手とメルアド交換をした。沖縄旅行の初日から疲れるとは思わなかったな、ったく。
宜しくお願いします。
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一萬打企画に便乗して書いてもらいました!
佐伯様宅の小説、傍観日記IF。
本当にありがとうございました^^
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