かはっ、空気を吐き出す。
自分からだされた物なのに、不思議な程それが私にあった実感がない。
艶やかな色彩に慣れてしまった脳は、薄暗いこの色を拒絶する。
しかし、ココは平和なのだ。
もう、あの頃のように飽きる程あの色に、包まれることはない。
…それが私の望みだったはずなのに。

「イルミ、ヒソカ、クロロ、皆……平和は思っていたより詰まらなかったよ。」

狂いだした、いや元から狂ってしまっていた。
あの場所で、彼らと笑っている。
それだけが願いだった。
彼らと共にいる時、ゆっくりと壊れていたものが、一人になり急速に破壊スピードを上げる。
宛もなく歩く数に伴い、一歩また一歩狂っていく。
もう、何処にも君たちはいない。
いや、君たちからすれば、私が居なくなったのか。

見慣れない建築の住宅街。
通貨も違えば、言語も違う。
ましてや世界の陸地の形さえ違うのだ、ココは。
私がいるところは日本という島国。
あちらのジャポンに似た形をしている。
文字は絵本を読むことで覚えた。
今居るのは情報を探すには持って来いの場所、図書館。
こういう時、公共施設は便利だ。

「本当に、此処はドコなんだろうね。」

いや、ドコかは調べて分かった。
私が知りたいのは何故此処に居るのか、という事である。
館内にある私にとっての必須情報が載った資料は、粗方読み終えた。
さて、これから何処へ行こう。


街中をぶらぶらしていると、学校を見つけた。
私は其処に通ったことがない。
興味を惹かれ、中を散策していると、嗅ぎなれた臭いが鼻孔をつく。
硝煙と、極わずかな血の臭い。

「リッボーン!!死ぬ気でお前を倒す!!」

遠くからざわめく声がする。
微かに聞こえてくる声は幾人かの争うような声。
私はそこへと向かって行く。
だって其処には私が求めたものがあるのだ。
ああ、ああ…早く早く早く速く早く早く速くはやく、息を吸わなければ。

駆り立てられたように走りだす足を、私は止めるすべを知らない。
喧騒の中心に立っている人物に、気がつけばベンズナイフを振り下ろしていた。
ああ、この子死んだな。
と、自分が仕出かしたことをどこか遠くに感じていた。
しかし、予想は覆り男の子に刺さる筈だったナイフは、カキィンと高い音を鳴らして方向が変わる。
ナイフの刀身を見れば、横から何かが当たったらしい。
弾痕から読み取れる軌道に目を向ければ、片手にCz75 1stを持つ奇妙な赤ん坊。

「どこのファミリーだ、お前。」

赤ん坊は私を見ながらそういう。
姿に似つかわしくない殺気を込めながら。

「ファミリー?家族?それともマフィア?」

そういえばこの前ノストラードとか言うマフィアの娘を、クロロが調べてたっけ。
彼女の能力を奪うつもりなのだろう。
……また思い出してしまった、彼らとの時を。
世界は不条理で不明確で不自由で不平等だ。
神様とやらは何がしたいのだろう。
どうして私を此処に連れてきた、なんて。
まぁ、そんな偶像信じちゃいないが。
神とやらに頼むぐらいなら、自身で帰るすべを探す。
現に今、それを模索しているところだ。

「マフィアの方だぞ。」

ああ、そうだった。私は今、赤ん坊とお話し中だった。
赤ん坊は銃の角度を私の額に定め、こちらの言動を観察している。
ふはっ、本当に面白い赤ん坊だな。

「私はマフィアの人間じゃないよ?一般人でもないけどさ。攻撃したのはこの喧囂に混ざりたかったから。」

「ええーーーー?!!そんな理由で俺攻撃されたの!?ってか、やっぱり普通の人じゃなかったーーーー!」

叫んだのは私が攻撃を仕掛けた子供。
うるせぇ、と赤ん坊は言い、その子にドロップキックをする。

「十代目に何しやがんだ、てめぇ!!くらえ、二倍ボム!!」

そういって銀髪君は大量のダイナマイトを投げつけてきた。

「え、ちょ獄寺君ーー!?」

右手に持ったナイフで、即座に宙を切る。
すると、先程のダイナマイトは時間が経っても爆発しなかった。

「一瞬で導火線を一本残らず切ったか……。お前マフィアの者じゃないんだったな?」

まだ疑っているのか、先程のことを再確認される。

「えぇ、私はマフィア関係の人間じゃない。ただの盗賊さ。」

「と、盗賊ーー!!?今の時代に!?」

茶色の髪の男の子がまた叫んだ。
赤ん坊は考えこんでいたのか、今度は彼に攻撃しなかった。

「だったらお前、ボンゴレファミリーの暗殺部隊に入らねーか。お前の腕なら採用確実だぞ。」

なんて好都合なお誘いだろう。
私が求めて止まないそれが手に入るのだ。

「リボーン!!またお前は、勝手に誰かを巻き込むなって言ってるだ「別にいいよ。ただ、条件を呑んでくれたら。」……へ?」

少年の声と被さってしまったが、仕方ない。
私の返事を聞くと赤ん坊は、ニヤリと口角を上げる。

「その条件ってのは?」

「何、私は戸籍が無いから、それを作って欲しいんだ。」

簡単だろ?そう言いながら、私は笑った。


それから、私は赤ん坊と共にイタリアに赴き、9代目と呼ばれる人物に会うことになる。
この日に9代目から正式に暗殺部隊、ヴァリアーに入隊を許可された。

ヴァリアーでの初めての仕事の最中、私は自分が息を吸うのを確かに感じた。



ひさしい呼吸

久しぶりにしたソレは愛(かな)しい程私に満足感を与えた。


あとがき





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