今日も遅刻ギリギリだった。
ここんとこ部活の朝練にギリギリ、もしくは遅刻してしまう俺。
やべぇ……。
副部長の鉄槌を食らうのが嫌なのもあるけど、そろそろ部長の堪忍袋の緒が切れそうで恐いってのが本音だ。

「何で起きれねーんだろ……」

朝練が終わり制服に着替えながら、理由を考える。
起きれない訳は分かってる。
寝るのが深夜というより、明け方に近いからだ。
しかし、ここで疑問が生まれる。
何故眠れないんだろう。
この頃は早く寝ようとゲームを我慢してるのに、だ。

「んん〜?」

「どうした赤也、さっきから一人で悩んでいるようだが。」

訳が分からず頭を抱えていると、心配してくれたのか(只単にデータが欲しいだけかもしんないけど)柳先輩がそう言う。

「いや、どうしたら早く寝れるか考えてたんスよ。」

本当に理由が思いつかない俺は、柳先輩に相談してみることにした。

「この頃の遅刻の原因を探して、と言ったところか。いつものようにゲームという訳ではなさそうだな。」

こういう時、本当にこの人はエスパーなんじゃないかと疑ってしまう。
だってそうだろ?
俺が一つ言えば、それが十以上で返ってくるんだから。
ま、柳先輩に言わせればデータでわかるんだそうだけど。

「そうなんっス。だから、俺も困ってて。」

眉間に皺が寄り、眉尻が下がるのを感じる。
絶対、今の俺情けない顔だ。

「自分じゃわからない原因…つまり、赤也自体には原因が無い。眠れていた時と最近何か違うことはないか?」

柳先輩は本当に凄い。
今の会話だけで、俺に原因が無い事に気づくなんて……。
俺、全然分かんなかったのに。

「眠れてた時って、一週間前ぐらいっスよ?そんな時のこと覚えてないっス。」

「一週間前……、それなら丁度、」

柳先輩が何か言おうとした時、ドカンとか大きな音をたてて部室のドアが開かれた。
ドカンっなんて音をたてる人はテニス部で只一人。

「やぁやぁ皆の衆、元気にしてたかな?」

マネの理流先輩だけだ。

「一週間ぶりだな朝倉。この時期にインフルエンザにかかるとは、興味深いな。あと、部室に入る時は先に声をかけろと言っているだろ。誰かが着替えていたらどうする。」

「大丈夫だよ、やなぎん。私は君らの裸には興味ないから。まぁ、偶然携帯のカメラに収めて販売しちゃうかもしんないけど。」

「お前の心配ではない。俺たちが迷惑なんだ。」

テンポよく進む会話に入れず、どうしようかと考えていると、

「赤也、原因はおそらくコレだ。」

と理流先輩の方に顔を向ける柳先輩。
原因って、理流先輩?

「何だい何だい?何の話をしてるの二人は。」

理流先輩は楽しそうな顔で、俺たちに聞いてくる。

「え、や何でもないっス!」

流石に原因かも知れない本人に、話せる訳ない。
そう思い否定すると理流先輩の顔に少し陰りが映る。
そんな顔させたくて、否定したんじゃないのに…。

「ただ、赤也の寝不足の原因を調査してただけだ。」

俺が何にも言わなかったからか、柳先輩が代わり返事する。
それを聞いた理流先輩の顔には、さっきの陰りは無い。

「ふーん、原因はわかったの?」

「ああ。本人は気づいてないがな。」

それはどういう意味だろう?
俺が気づいてないって。

「大丈夫よ、今日からは復活したこの私がついてるんだから。」

理流先輩の言葉で、この話は終わった。
結局、柳先輩の言う気づいてない事は分からなかったが。

その日俺は久々にぐっすりと眠ることが出来た。


睡眠不足=君不足。

あ、俺理流先輩が好きなんだ……






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